ドル円予想レンジ 101.00 - 102.85
「Trump pledges business `tax revolution'(トランプ氏の経済公約は"税の革命")」-。これは8/9の英経済紙見出しだ。過激な発言が報じられる米大統領選の共和党候補トランプ氏は2013/7/18に財政破綻を声明したデトロイト市で所得税の簡素化や法人減税などの経済政策演説に臨んでいる。
両候補者はドル安円高“おばけ"
政治の不確実性は"tail risk(テールリスク)"と見られていた英EU離脱ショックで学んでいる。そうなると米大統領選の行方は予断を許さない。トランプ氏の公約は財政規模や赤字幅が拡大する恐れがあり、その先にあるものはドル安、つまり2011年夏の米デフォルト(国債の元利払いが滞る債務不履行)懸念の再現に繋がるからだ。
一方、クリントン氏の公約に関して7/29の米紙社説は「Hope Without Change(変化なき希望)」と掲げた。「守れない約束はすべきではない」とした姿勢は、事実上「オバマ政権3期目」を意味する。
しかし注視すべきは、両候補ともに製造業・労働者層の歓心を買う為にTPPに反対している点である。クリントン氏の「選挙後も大統領になっても反対する」とした強調姿勢に変化は無い。そうなると次期政権はどちらの候補でも保護主義色を強めることが明確だ。国内製造業への打撃を回避するためにもドル安政策を進める可能性が高く、円には脅威となろう。
両候補に怯えるドルと円
8/8に財務省は24ヶ月連続の黒字を発表。両候補にしてみれば、"日本は輸出を有利にするために円安誘導している"と非難できる格好の材料だ。FRBも両候補に怯えて、今夏、9月利上げを示唆しないのではないか。そうした動きを先読みしたのが、1.6%台を越えられない米10年債の金利動向かもしれない。利上げ先送り感が低金利圧力となってドル円を圧迫しているとも読み取れる。
米政治のテールリスクは、本邦輸出企業の想定為替レートの下方修正や、国内機関投資家の為替ヘッジ比率の引き上げといった動きを促す可能性がある。但し、本邦勢がマイナス金利に困惑する中、米債や海外商品運用投資に伴うドル買い・円売りは、ドル投・円転と対峙すると見ている。
夏休み/お盆入り期のドル円上値焦点は日足一目均衡表雲の帯(102.354-104.827)、8/8-9-12高値圏102.55-65-85超が課題。下値焦点は8/10-11安値圏101.02-100.96、8/4-5安値圏100.86-85、8/2-3安値圏100.67-73、7/11安値100.55が意識されるだろう。
武部力也
岡三オンライン証券
投資情報部長兼シニアストラテジスト