若者,営業力,人材,営業現場
(写真=The 21 online)

7月中旬、東京・下北沢の書店『B&B』にて、ベストセラー『営業部はバカなのか』の著者・北澤孝太郎氏の最新作『 人材が育つ営業現場の共通点 』の刊行記念トークショーが行なわれた。

登壇者は、営業のプロフェッショナル・北澤氏、働き方評論家の常見陽平氏、新規事業インキュベータの石川明氏の3名。それぞれが考える「人材が育つ営業現場」について語り合った。

今、営業力が強い会社は、何をしているのか?

いつの時代も、生き残るのは営業力が強い会社だ。営業力とは、その会社の持つ「稼ぐ力」と言い換えても過言ではないからだ。では、「日本で、今、営業力の強い会社」と言えばどこを思い浮かべるだろうか。常見氏の問いかけからディスカッションは始まった。

石川氏 僕は日東電工さんを挙げたいと思います。もともと粘着テープの会社ですが、現在では液晶パネルに使われる偏光板やスマートフォンの部品などにも市場を広げ、連結売上高8,000億円程の大企業になっています。特徴は、顧客密着のソリューション営業。「買ってくださいと」プッシュするのではなく、顧客の課題を見つけ、その解決策を考え出して提案する営業スタイルです。じーっと現場を観察し、顧客の「不」の部分を見つけて、仮説を立てるのです。

常見氏 自社商品に結びつけた解決策を提案するソリューション営業の大切さは20年くらい前から声高に叫ばれていますね。僕が玩具業界で働いていたときも「モノからコトへ」という流れがあり、商品・サービスにもその要素が求められていました。営業も、いかにその玩具流通に儲けてもらうかということを意識して提案していました。売り場づくりや、イベントまで含めて提案するのですよね。

北澤氏 顧客が気づいていない課題という潜在的なニーズに対して、複数の解決策を提案するとなると、相当な営業の技量が必要ですよね。

石川氏 日東電工さんのスゴイところは、それができること。そして、ある課題の解決策が他の業界の課題の解決にも応用できるのではないかと勘を働かせられるのもスゴイ。応用できれば、顧客が2倍にも3倍にもなるわけです。

常見氏 市場を創造する力を含めて「営業力」ですよね。僕が挙げたいのは野村證券です。野村證券には「100件10億」という目標があるのです。新人に「新規獲得100件、取扱高10億円」というノルマが課せられる。それを達成した暁には、さらに高い数字が降ってくる(笑)。まさに「仕事の報酬は仕事」というわけです。そんなストロングスタイルの営業がまだ残っているんだな、と感動しました。北澤さんはどうですか?

北澤氏 私は、ここ10年で営業の仕方が変わってきていると感じていまます。ぜひ、新しいベンチャー企業の営業スタイルに注目していただきたいですね。営業ノウハウをシステム化した科学的なアプローチは、実に革新的です。たとえば、セールスフォースやSansanなどの新しい営業ツールを駆使した営業スタイルには目を見張るものがあります。

石川氏 確かに、システム化すれば、ある程度の水準までは誰でも成果を出しやすくなりますよね。しかし、その上に工夫をしなければ、それ以上は売れない。

北澤氏 実は、そこができるようになって来ているんです。システム化によって、詳細なデータを見ながら営業ノウハウを改善する力がついて来ています。今まで、苦労して経験することで体得した営業ノウハウが、思考する若者に簡単に負ける時代になって来たのです。これは驚異ですよ。

常見氏 むやみに若手の営業スタイルを批判するのも考え物なのですね。