「将来有望な人気の職業」として注目を集め始めているFinTechだが、理想と現実の差を痛烈に思い知らされる悲壮な訴えが、実際にシリコンバレーのスタートアップに勤務した従業員を含む一部の関係者からあがっている。

給料を支払わないどころか、複数の従業員から資金を集め、CEOが姿をくらましてしまったという「ブラック企業」への注意を呼びかける報道を増えている今、就職先選びには慎重に慎重を重ねる姿勢が、応募者側にも必須となりそうだ。

CEOが従業員から1億円を騙しとった事件も発生

最新の統計ではニューヨークにFinTech投資額No.1の座を奪われてしまったが、シリコンバレーに憧れるIT技術者はまだまだ後を絶たない。

2015年にシリコンバレーで活動していたスタートアップ数は、米国平均の3倍を上回る1万2000社から1万4000社。GDPも北米平均に1000億ドル(10兆3890億円)上乗せした、5350億ドル(55兆5811億円)だったという(米市場調査会社、Compass調査)。

しかし設立わずか数年で大成功をおさめるスタートアップは一握り。全体の9割が夢破れ、廃業に追いこまれているという厳しい現状だ。

FinTechが激戦区化すればするほど、大きな希望を抱いて意気揚々と入社してきた新社員が、手痛い被害をこうむる例も増えている。

最も最近では、CEOが自分の経歴から資本金までを詐称し、従業員から多額の借り入れを行っていたシリコンバレーのスタートアップ、WrkRiotが世間を騒がしている。

WrkRiotの例では、ニューヨークの名門ビジネス大学、レナード・スターン・スクールを卒業後、JPモルガン・チェースでアナリストとして勤務していたというアイザック・チョイCEOの虚言を信じ、15人の新社員がWrkRiot立ち上げメンバーとして集結した。

しかし数カ月を経過した頃から雲行きが怪しくなり、給与や約束されていたボーナスが滞りだす。

さらにそのうち2名は「税務局に資産を凍結された」というCEOの嘘に疑問を持たず、個人的に総額100万ドル(約1億389万円)以上を貸しだしていたという。

最終的にはマーケティング・ディレクターとして勤務していた女性社員の告発によって、世間の明るみにでたわけだが、これほどまでに大規模な被害でなくとも、「給与が支払われないままに倒産した」というケースは、スタートアップ企業の中でもそれほど珍しくなくなってきているそうだ。

米中小企業庁(SBA)の施策広報局のデータに基づいて算出すると、毎年平均3億社を上回るスタートアップが世界中で生まれているという。

その多くが露と消える運命であるとすれば、「FinTech」という看板に惹かれて手当たり次第に応募するのは避け、会社は勿論、CEOや設立者の背景や経営状況を事前に調査するなど、応募者側に十分な警戒心が必要となるだろう。( FinTech online編集部

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