2017年の春頃(4月の最終日曜日と5月最初の日曜日)に予定されているフランスの大統領選挙。

フランス政治は、社会党(左派)、共和党(中道右派)、国民戦線(右派)の三つどもえ。現大統領で社会党所属のフランソワ・オランド氏の国民・党内双方における人気低下により野党第一党の共和党の優勢が当初より予想されていたところまでは既に各国メディアが報道してきた。

ところが、共和党の最有力候補アラン・ジュペ氏の支持率がここに来て伸び悩む一方で、着実に支持者を再獲得しつつあった元大統領サルコジ氏が立候補を表明するに及んで、大統領選挙の動向は混迷してきている。

こうなるとマリーヌ・ル・ペン氏率いる国民戦線の地方一次選における躍進も侮れない。フランス政治は今後どのような展開を見せるのだろうか?

決選投票では誰が対立候補に?

現状では、第二次投票まで進めるのはおそらく共和党候補だろうと推測されている。それがジュペ氏になるかサルコジ氏になるかという点は未確定であるが、いずれにしてもこの二者の中の一人がル・ペン氏の対立候補となるとみられており、左派系候補はいずれの場合でも一次選を突破できない可能性が高い。

これはオランド氏個人の責任のみならず、オランド政権下において相次いだテロによって国民の間で安全保障に対する不安感が広がったことや経済政策における「右傾化」の結果として社会党に対する信用そのものが急速に低下したこと、および社会党系の候補の中で急速に支持率を高めていたエマニュエル・マクロン氏が社会党を脱党し新党を立ち上げてしまったことで社会党支持層内が分裂していることなどに起因する。

日本でも民主党政権の支持率は2009年の選挙前後に70%を超えピークに達したのを最後に低下し続け、2011年の再選挙時には20%代を下回るなど非常に低い支持率にとどまったが、背景が異なるとはいえ、左派政党の経済政策の失敗が右派を勢いづけたという点では同様の現象がフランスでも生じたと言えるだろう。

それだけではない。オランド政権下で経済大臣を勤めたマクロン氏が社会党を離脱し新たな新党En Marche!を立ち上げたが、マクロン氏がEn Marche!の候補として大統領選に立候補する場合、オランド氏や他の社会党候補者を上回る支持率を得ることが予想されていることからもわかる通り、フランスの社会党支持層は今守旧派とマクロン氏による変革を期待する革新派に分裂している。

これではマクロン氏が個人的に支持を集めることはあり得ても、マクロン氏を失った社会党が国民の支持を再び得ることは絶望的に困難であろう。