リベラル・左派層はどう動くのか?

現状で左派層にできる、サルコジ氏あるいはル・ペン氏に対する最も有効な抵抗は、ジュペ氏を大統領にすることだ。

もちろん、オランド氏の下に再び一致団結するか、あるいはマクロン氏支持層を拡大するという選択肢もあるが、オランド氏に対する左派層を含む国民の不信感は根強く、仮にオランド氏が決選投票に出る場合にはル・ペン氏に敗北する可能性さえあると言われている。

マクロン氏の場合は決選投票でル・ペン氏に敗北することは恐らく無いだろうが、そもそもマクロン氏が社会党ではなく新党En Marcheの候補として出馬する場合は社会党支持層の支持を十分に得られないので、その条件で共和党候補を上回る支持率を得られるかという点に疑問がある。

かといって、マクロン氏が今さら社会党に復帰し社会党候補として出馬するだろうか。あり得ないわけではないが、非常に可能性が低い。左派層に残された現実的選択肢は以下の3つとなるだろう。

ル・ペン氏に敗北するかもしれないという「リスク」を負ってまでオランド氏を支持するか、ここはむしろ「極右政党」の勝利という「最悪の事態」を避けるためにジュペ氏またはサルコジ氏支持に回るか、あるいは決選投票で棄権し選挙結果に反映されない自己の信念を敢えて貫くか。

従って「フランスは人権の母国である」という建前を守りたいのであれば、ジュペ氏を支持するのが最も現実的という結論になる。

保守層・共和党支持層にとっては何が最も大切か?

他方、右派層にとっては次期政権が右派中心になることまでは確実だとしても、実際に誰を大統領にすべきかという選択をしなければならない。

無論、国際的評価やバランスを重視するならジュペ氏を支持するのが自然だろう。
だが、ジュペ氏のようなバランス型では結局オランド氏と同じ失敗を繰り返すのではないか、変革すべき現状を変えられないのではないかという不安の声もある。特に安全保障という喫緊の課題に対してジュペ氏がどこまで切り込めるのかという点に関しては、それほど多くを期待しない人がほとんどだろう。

だからこそサルコジ氏はまさにその点を突いて攻勢に出ているのであり、ル・ペン氏は逆にこの絶好の機会を逃すまいとより広い支持を獲得するために党内変革を着々と断行してきたのだ。

ル・ペン氏は時に「フランスのトランプ氏」などと揶揄されることもあるが、それはマリーン氏の父ジャン・マリー・ル・ペン氏には当てはまるとしてもマリーヌ・ル・ペン氏には当てはまらない。彼女は実父を党内から追放してまで国民戦線の従来の「極右」方針を転換し、数年かけて支持率をここまで高めてきた堅実で現実的判断の出来る有能な政治家である。

サルコジ氏も大衆迎合的と批判されがちとはいえ、大統領経験があるというのは大きな武器だ。この二者のいずれかにジュペ氏にはできない改革を期待する声は、フランス国民の日常を脅かす治安悪化の中で強まりこそすれ弱まることはない。

また、安全保障面に眼を奪われて忘れられがちな経済政策という面では、ル・ペン氏の主張する救貧型政策を望む者も多い一方で、マクロン氏による新自由主義型の改革を望む声も決して小さくないという点も考慮すべき点だろう。

ともかく現状を維持するか、テロや移民・難民の横暴という現代ヨーロッパのタブーに本格的に取り組むか、はたまた経済の再生か。フランス国民はそのどれを選択するのだろうか。(ZUU online 編集部)

【編集部のオススメ記事】
「信用経済」という新たな尺度 あなたの信用力はどれくらい?(PR)
資産2億円超の億り人が明かす「伸びない投資家」の特徴とは?
会社で「食事」を手間なく、おいしく出す方法(PR)
年収で選ぶ「住まい」 気をつけたい5つのポイント
元野村證券「伝説の営業マン」が明かす 「富裕層開拓」3つの極意(PR)