北朝鮮ミサイル,保険適用
(写真=PIXTA)

9月9日午前、北朝鮮が今年に入って2回目となる核実験を行った。2006年から5回目で、もはや隣国の脅威どころでは済まない、アジア地域全体における危機と化している。

核の被害に合った事など、もちろん経験の無い筆者は、できる限りの想像をしてみた。家は、健康は、生活は、いったいどうなるのだろうか?

そんな疑問を今回は、保険の面から考えてみることにする。

大事な我が家が破壊された、火災保険でカバーできる?

まず家についてだが、火災保険の約款には『免責』条項がある。商法上、保険契約においての『免責』とは、『保険会社は保険金支払いの責任を負わない』というもの。

大手損害保険会社の約款中の文章をそのまま記載すると、保険金を支払わない場合、『戦争、外国の武力行使、革命、政権奪取、内乱、武装反乱その他これらに類似の事変または暴動』とある。

つまり、北朝鮮の核ミサイルは、明らかに外国の武力行使に該当するわけで、まず火災保険の対象にはならないことが分かった。

つぎにミサイルが打ち込まれなくても、核の影響で巨大な地震が起こったと想定しよう。その影響で津波も発生した場合、地震保険が頼りになる。さて補償されるのかどうか。

地震保険は単体では原則販売されておらず、火災保険のセットで特約として付加されている。地震特約での補償内容について、同じく約款を確認すると、保険金を支払わない場合の欄に、『外国の武力行使』とある。

結論、家を破壊されても、地震により津波で押し流されても、保険会社は補償する義務がないのだ。

核の被害で健康ダメージ、入院保険は使えるのか?

次に体への健康被害について考えてみよう。核の被害を具体的に語ることはできなくても、ひどい影響がある事ぐらいは察しがつく。
損保会社の傷害保険は、『急激かつ偶然な外来の事故により身体に障害を被り、その直接の結果お支払いする条項に該当した場合、保険金を支払う』とされている。

ミサイルも、地震も、『急激かつ偶然』のことなので、保険が使える!と思う方も多いだろうが、やはりここでも免責事項がモノをいう。お支払い対象外の欄にはきっちりと『外国の武力行使』や、『地震またはこれらによる津波』と、記載があるのだ。

生保会社の約款ではどうだろうか?生命保険、医療保険などの約款には、免責事項に『地震・噴火または津波』『戦争・その他の変乱』とある。やはり損保同様に、核やミサイルの攻撃、地震は保障の対象にはならないことがわかった。

くやしい!弁護士を雇って訴える場合の費用保険はおりるのか?

では、これだけ被った被害をどうにか加害者に賠償請求したい、と思い、自分の力だけではどうにもならないと分かっていれば、弁護士など第三者の力を借りて賠償請求をしよう、と考えるとしよう。
弁護士費用に対する保険が、一部の小額短期保険会社から販売されている。

この保険の約款を読んでみると、既存の大手生命保険会社などより、ずいぶん具体的な文章で免責事項が書かれていた。『核燃料物質、使用済核燃料もしくはそれらによって汚染された物の放射性、爆発性その他有害な特性の作用、またはその他核物質による同様の作用』によるトラブルは、免責となるとの事だ。

免責=保険金がおりないわけではない

ここまでお読みになればもうお分かりのとおり、保険契約による免責事項には、全て、『戦争』・『地震』・『変乱』・『海外の武力行使』の言葉が記載されており、保障の対象とはならないのだ。

なんとがっかりすることの連続だろうか。今回のコラムを読んで、何一つホッとすることが無かったかと思うが、実は『免責』=『保険金がおりない』ではない。

免責とは、前項にも記載のとおり『保険会社は保険金支払いの責任を負わない』もので、言い換えれば『責任は無いけど、請求があれば支払う事もある』である。

実際に1995年の阪神大震災や、2011年の東日本大震災の際、日本で営業を行っている国内外法人の各保険会社は、ほとんどの会社が保険金を支払っている。

先の大震災での保険金支払いをする事により、保険会社の財務状況よび運営に、相当な影響があると思われるかもしれないが、実はそのレベルには、あの大地震でさえ及ばないのだ。いかに保険会社が厳しいルールの下、金融庁からの免許を得て存続しているかが分かる。

ただこの70年の間、平和な事に、『外国の武力行使』を理由にした大規模な保険金請求を、我々は一度も経験が無い。ゆえに保険会社でさえ、規模や状況の深刻度合いを、末だ図りきれないのが実情ではあろう。

経験のない規模の保険金事故が発生した場合、保険会社は今後の存続に耐えられないほどの請求を受けることが出来ないため、このような『免責』という条項を作成して、健全な運営および、他の保険契約者に対する支払責任を守っているのだ。

何はともあれ、そんなことで保険の世話になるような状況になれば、もはや紙幣価値が下落し、保険金どころではなくなる。平和な生活が、近隣国の太った君主のマインドひとつで、急変することが無いように祈るばかりだ。

佐々木 愛子 ファイナンシャルプランナー(AFP)、証券外務員Ⅱ種、相続診断士
国内外の保険会社で8年以上営業を経験。リーマンショック後の超低金利時代、リテール営業を中心に500世帯以上と契約を結ぶ。FPとして独立し、販売から相談業務へ移行。10代のうちから金融、経済について学ぶ大切さを訴え活動中。 FP Café 登録FP

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