インターネットで雑誌の表紙を見たとき、なぜかグレーに塗りつぶされた人型を見たことがある人は多いだろう。ジャニーズ事務所所属のタレントはおしなべて塗りつぶされている。同事務所は所属タレントの肖像権の管理が厳しいと言われているが、その理由とは。
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厳しくタレントの画像を管理するジャニーズ事務所
ジャニーズ事務所は公式Webサイトにタレントのプロフィール写真を載せている。しかし、所属タレントが表紙となった雑誌は、Webでは表紙が掲載されていないか、画像だけ載せられておらず空白になっている。またはグレーでシルエットが塗りつぶされている。
またドラマの制作発表などでも会見の記事をネットに掲載するときにはジャニーズのタレントはカットされている。個人のブログでも違反があると、ファンが削除依頼メールを出して注意することがあるようだ。ジャニーズ事務所自身も無断で画像を使用している法人、個人のサイトやSNSを探し、削除依頼をする専門の会社を子会社としてもっているほどだ。
このようにネットにタレントの画像削除を要請する根拠は肖像権のひとつである「パブリシティ権」である。
肖像権とは パブリシティ権が侵害される場合?
人は自分の容姿を無断で撮影されたり、撮影された写真を無断で公表されるのは嫌であろう。このような精神的な苦痛を受けないための権利が肖像権である。
肖像権にはプライバシー権とパブリシティ権がある。プライバシー権は、本人の許可なく容姿を無断で撮影されたり、撮影した写真を公開されないように主張できる権利であり、一般人でも有名人でも皆等しく持っている。
一方、パブリシティ権は著名人に特に認められる権利で、その人の活動によって人気や名声を獲得することで、その氏名や肖像は顧客を引き付ける力があり、経済的価値を持つ。経済的価値のある著名人の氏名や肖像を排他的に支配できる権利のことだ。
最高裁でパブリシティ権が認められたのはピンクレディー事件(最判平成24年2月2日民集66巻2号89頁)であり、(1)肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用し、(2)商品等の差別化を図る目的で肖像等を商品等に付し、(3)肖像等を商品等の広告として使用するなど、専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合にパブリシティ権の侵害になるとしている。
なぜネット掲載を厳格に制限しているのか
法的にパブリシティ権の侵害を判断するには当該肖像の使用目的を個別に見ることになる。だが、ジャニーズ事務所の対応はドラマや映画の記者会見を報道する際も会見の写真をネットで使用することは認めていない。
ネットの場合には画像をコピーするのが容易で肖像権、パブリシティ権の保護が十分にできるとは限らないためだとされている。真に報道目的だけで使用され続けるならいいのだが、実際には第三者によるコピーが拡散し、タレントや所属事務所の預かり知らない形で肖像が使用される可能性が否定できない。
ネット上では本人の知らないところで写真が出回る危険性、肖像の経済的価値を棄損する行為が行われる可能性が高い。そのために取材を受けたとしても紙面とウェブサイトでは別の媒体として許諾するかどうかを判断しているようだ。
「他の芸能事務所の所属タレントはネットに肖像を載せているのになぜジャニーズだけ?」という意見もある。これに対しては、ネットを含めて一つでも多くの媒体に載ること、露出することがメリットと考えているからだろう。
厳しい肖像権管理の背景にあるジャニー喜多川氏の経験
タレントの肖像の管理に厳しいのはジャニー喜多川氏の体験が原点にあるようだ。というのも、氏はラジオ番組でその体験を語っている。
米国在住時に喜多川氏は、公演で日本からきた芸能人の通訳などの仕事をしていたという。当時の日本人のギャラは少なく、彼らの取り分を増やすため、芸能人の写真を撮ってもらって会場で売ったそうだ。写真は飛ぶように売れ、その売り上げは「あなたたちの肖像権で買った、売り上げたお金だ」といって彼らに渡していた。受け取るのを遠慮しても無理やり持ち帰らせたそうであるから、おそらくはこの体験が肖像の経済的価値を重視する事務所の姿勢につながっているのであろう。
出版社はなぜジャニーズ事務所の方針に従うのか
判例によって、パブリシティ権の侵害になる使用目的や使用の態様が判断されている以上、出版社としては権利侵害にならないよう対処することになる。
現にジャニーズ事務所所属タレントらがコンサートの写真を書籍に無断掲載されたとして東京の出版社を相手取った訴訟がある。
この裁判ではタレントらのパブリシティー権の侵害が認められ、約5400万円の賠償や出版禁止が命じられた(知財高判平成24年10月16日)。判決では、「写真が顧客を引き付ける商品として掲載されており、自分の写真を独占使用できる芸能人らの権利を侵害」しているとされたのだ。こうなると従わざるを得ないだろう。(ZUU online 編集部)
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