老後, お金, 貯め方, 保険, 年金
長尾さんに保険の相談をするDAILY ANDS編集部(写真=同編集部)

アラサーのDAILY ANDS編集部は現在、自称「保険マニア」のファイナンシャル・プランナー、長尾義弘さん(NEO企画代表)に保険の相談をしています。

相談をしているのは米ドル建ての個人年金保険。30年間、お金を積み立てておくと60歳になったときに130%になって戻ってくるといういかにも「オイシイ話」にむしろ怪しさを感じ、お話を伺ったところ、「実は僕も加入しているんですよ」と意外な回答が。

リスクも高そうな商品なのになぜ?…お話を聞いていると、保険の不思議なカラクリが見えてきたのでした。

参考: 「保険マニア」にとことん聞く!<前編> ドル建ての年金保険は本当におトク? 専門家に聞いてみた

長尾さんの保険にビックリ!

DAILY ANDS編集部(以下、DA編集部) 「長尾さんの保険はどうなっているんですか?」

長尾 「私のはもうこれ、円建てで予定利率が3.75%あるので返戻率は145%です。年金の受け取り方によっては200%を超えますね」

自称「保険マニア」の長尾さん(写真=DAILY ANDS編集部)
自称「保険マニア」の長尾さん(写真=DAILY ANDS編集部)

DA編集部 「えっ、2倍ですか!? 私の保険よりも高い! なぜ???」

長尾 「これはいわゆるお宝保険ってやつですね。加入したのが1995年、金利のよかった時代だからなんです」

DA編集部 「確かに、利率も高いし、為替リスクもありませんよね。悔しいなぁ。なんだか、それを見た後だと、自分の保険はすごく損をした気分になります…」

長尾 「ですよね。これくらいの利率があって、なおかつ為替リスクがないなら迷いなく加入できるとは思いますが、今の利率だとちょっと……という気はしますね」

年金の受け取り方はどう考えたら良い?

DA編集部 「ちなみに年金の受け取り方が、いろいろあって、これもよくわからないんです」

長尾 「『一括受け取り』は、60歳のときにドンと一括で受け取るという方法。『確定年金』というのは、年金を受け取る期間をたとえば5年間だけと決めて、分割して受け取るタイプのことです。

『保証期間付終身年金』というのは、生きている限りずーっと年金を受け取るということなんですが、もしかしたら、65歳とかで死んじゃうこともありますよね。でも、10年保証期間付きの場合、65歳で死んでも10年間は年金を受け取れますよ、というものです」

(写真=DAILY ANDS編集部)
(写真=DAILY ANDS編集部)

DA編集部 「『一括受け取り』よりも『確定年金』の方が、『確定年金』よりも『保証期間付き終身年金』の方が返戻率がいいのはなぜですか?」

長尾 「保険会社にしてみると、お金を運用できる期間が長くなるからです。また『保証期間付き終身年金』の場合、長生きすると得ですが、早死すると受け取る金額は少なくなります」

ストックとフロー、どっちを重視しますか?

長尾 「僕の場合、保障期間なしの終身年金にします。あえて確定年金にするんじゃなくて、僕は早死すると自分が損をすることにします。長生きに対して、得するようにしているというか」

DA編集部 「それはなぜですか?」

長尾 「これは人それぞれだと思いますけど、ストックとフローでいうとフローを重視しているからです。

こんな話、知っていますか。1億円ある人でも、老後を不安に思う人っているんですよ。なんでかっていうと、お金がどんどん減っちゃうから不安になっちゃう。

ところが、フローのキャッシュをつくると安心するんですよ。つまり、貯金がなくても、毎月入ってくるお金がある方が安心する、ということです」

(写真=DAILY ANDS編集部)
(写真=DAILY ANDS編集部)

DA編集部 「なるほど。それはなんとなく分かる気がします」

長尾 「もし、老後は10年間遊びまくって、その後は細く生きたいというのであれば、確定年金でボンとお金をもらったほうがいいです。

でも僕は、フローを重視する方なんで、死んだらしょうがないやと思っています。死んだら損をするけれど、それは運用の読みが悪かったということです」

DA編集部 「もし終身年金にした場合、受け取る年金の額が、それまでに積み立てた金額を下回るということもあり得ますよね?」

長尾 「早死したら下回りますね。でも僕はあえて、ずーっと一生涯生きている限りもらえる金額の方を手厚くしているんです」

DA編集部 「こういうことを考えるのって大事ですね。保険の営業の方を前にして『好きなの選んでいいよ』って言われてもわかんないじゃないですか」

長尾 「ちなみにですが、実は退職金や年金をどういう形で受け取るのが一番おトクかについては、税金がどうなるかを考えないといけないので実際にはもっと複雑です。一時金で受け取るときと、年金形式でちょっとずつ受け取るときとで、かかってくる税金が違ってくるからですね。僕も、そのときになったら税理士さんと相談して決めようと思っています」

DA編集部 「そこまで細かい計算になると……さすがに税理士さんがいないと無理ですね」

老後の資金、3000万円必要って言われたけれど…

DA編集部 「うーん、いろいろ考えると本当にこの保険は自分に必要かどうか悩んできました。

実は今回、保険の勧誘を受けるときに老後にいくら必要か計算してもらったんです。毎月の生活費を考えたときに、私の場合、ざっと3000万円くらいは65歳までに貯めておかないといけない計算になりました」

(写真=DAILY ANDS編集部)
(写真=DAILY ANDS編集部)

長尾 「もし老後のお金、つまり老後資金を得ようと思うんだったら、確定拠出年金でいいと思いますよ」

知らない方のためにご説明しますと、確定拠出年金(かくていきょしゅつねんきん)とは、老後のために月々一定額を積み立てておくと、所得税や住民税の金額が減らすことができ、結果としておトクになる仕組みのことです。(参考: #02 老後資金どうやって準備する? ほったらかしの確定拠出年金 見直すときの3つのポイント

節税効果が高いことなどから、ファイナンシャル・プランナーの多くの方が「老後の自分年金づくり」としておススメされています。企業で実施している場合もありますし、企業が実施していないときは個人で金融機関に申し込むこともできます。

長尾 「確定拠出年金をおススメする理由は節税効果がとても高いことです。また、確定拠出年金の中で米ドル建ての商品に投資をすることもできるので、同じもので運用するなら、節税メリットが得られる方がいいのではないかと考えています」

確定拠出年金を増額することもできます

DA編集部 「実は、確定拠出年金はすでにやっているんです」

長尾 「もうすでに確定拠出年金をされているのであれば、『企業型』の場合はマッチング拠出という増額制度を使えば良いですし、『個人型』の場合も増額することをおススメします。

あとは、確定拠出年金とこの保険の違いは死亡保障が付いているかどうか、というところですね。確定拠出年金だったら死亡保障はなくて、もし途中で亡くなった場合は積み立てたお金が戻ってくるだけなので、死亡保障がほしいなら、保険に加入するのもアリだとは思います」

確定拠出年金だけでは老後が不安です

DA編集部 「死亡保障は今の段階だと独身なので要らないかな…。

あと、不安なのは確定拠出年金は月々2万3000円積み立てているのですが、このままだと60歳までに1000万円にしかなりません。残りの2000万円はどうしたらいいんだろうって考えたときに、この保険の話になったんですよ」

長尾 「ぶっちゃけ、3000万円くらい、貯金できますよ」

DA編集部 「どういうことですか!?」

長尾 「考え方次第なんですけどね、これから先、30代、40代となったとき年収アップする可能性ありますよね。年収アップするともっと貯められる可能性があるわけです。僕だってガーンと貯めたのは後半ですからね」

(写真=DAILY ANDS編集部)
(写真=DAILY ANDS編集部)

DA編集部 「後半っていうと?」

長尾 「家を買って、ローンをなくしてからですね。僕の場合、40代前半に家を買って、5年でローンを返済しまして、そのあと、ローン返済に月々かけていたのと同じ金額をそのまま投資に回しました」

DA編集部 「そうだったんですね! じゃあ、今から焦らなくてもいいのかな?」

20、30代のうちは無理して保険に入らない方がいい?

長尾 「編集部さんの場合、これから子育てや住宅購入など、お金がかかるライフイベントで何があるかわかりません。あんまり無理して固定的に貯めるのもどうかなと思いますよ。

僕は、20代、30代の女性たちは、あんまり無理して保険に加入しないほうがいいんじゃないかなと思っています。少し余裕があるんだったら、確定拠出年金をやればいいんです。確定拠出年金の場合、お金が足りなくなったら月々の積立額を減らせばいいですから。あとは、投資ですね。個別株やETFをやるほうが良いのではないかと思います。保険は解約すると、損をする可能性もありますからね」

(写真=DAILY ANDS編集部)
(写真=DAILY ANDS編集部)

DA編集部 「確かに、今回の保険は45歳までの間に解約をすると、損をしてしまいます」

長尾 「でしたら、あまり無理しない方がいいかなと思いますね。その分、違うところで頑張りましょう。つまり自己投資です。そのほうが、将来収入が増えて絶対にいいでしょ。

収入が増えるのが一番投資に向くというか、貯蓄に向きますよね。収入が変わらないとき貯蓄を増やそうとすると、どこで削るかという問題になりますが、そうじゃなくてそもそも収入を大きくすればいくらでもお金は回せるのではないかと思います」

DA編集部 「なるほど、そういう考え方もあるんですね」

長尾 「不安な気持ちはすごくわかります。ただ、20代、30代のうちは自分に投資した方が将来の年収増えるのではないでしょうか。30年後、何があるかなんて分かりませんからね」

DA編集部 「すごく勉強になりました!ありがとうございます!」

長尾さんのお話を聞いていると、将来のために今お金を貯めることだけでなく、子育て・住宅購入などに備えて家計に余裕を持っておくことや、収入を増やすために自己投資していくこともかなり重要なのではないか、と思えてきました。

お金を貯めるよりも、未来のためにきちんとお金を使っていく、つまりは投資していく方法をもっと考えたい、と思ったのでした。(「保険マニア」にとことん聞く!、おわり)

著書を持つ長尾さん(写真=DAILY ANDS編集部)
著書を持つ長尾さん(写真=DAILY ANDS編集部)

『保険はこの5つから選びなさい』

『保険はこの5つから選びなさい』 (河出書房新社)。「保険って入りすぎているケースが本当に多いです。リスクに対する備えとして考えてもらうのが一番いいんです。この本は、保険選びの参考にしていただけたらと思います」(長尾さん)

くすい ともこ
DAILY ANDS編集長。北陸の地方紙で5年間記者として勤務後、Web編集者に。「無理のない範囲でコツコツ」をモットーにインデックス投資を始めるも、含み損がコツコツたまっている。

(提供: DAILY ANDS

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