来年3月までに正式なEU離脱交渉が開始されることが明らかになった英国から、続々とスタートアップや銀行がベルリンへの移転を発表し始めた。

KPMGはBrexit交渉開始を機に、最終的には在英企業の75%が単一市場へのアクセスを求め、ベルリン、フランクフルト、パリなど、EUの主要都市に拠点を移すと見こんでいる。中でもロンドンのスタートアップ誘引に熱心なベルリンが最有力候補地とされているが、金融都市として欧州を担っていくだけの力量が備わっているかという点では、今後の経過次第かと思われる。

シンガポールの大型デジタルバンク 200件の雇用口を英から独へ移動

英国とEUの決別を決定づけた6月の国民投票から3カ月あまり。国民の間から「もしかすると離脱はないのでは」という声が聞こえ始めていた中、「BrexitはBrexitだ」と宣言していた自らの言葉通り、テリーザ・メイ首相は10月2日、バーミンガムで開催された与党保守党大会で、来年3月までに正式な離脱交渉を開始する意思を表明した。

交渉完了には2年が予定されている。その間は在英企業の最大の懸念である単一市場へのアクセスは維持されているうえに、交渉の行方を見ながら残留・移動を決めるという構えの企業が多い。それと同時に「待った」のない企業も目につき始めている。

現時点ではシンガポールのデジタルバンク、WB21、スイス銀行、オンライン金融マーケットプレース、BrickVestを筆頭に40社以上が、先行きの不透明な英国とリスクを共有することなく、EU圏に移動することで単一市場へのアクセスを確保する道を選択している。

WB21のマイケル・ガスタウアーCEOは、「Brexitによって英国に生じた不透明性は軽視できない」とコメント。EUで円滑に事業展開するうえで、単一市場へのアクセスを最優先させる決定をくだした。

この決断によって、200の雇用口がロンドンからベルリンに移行する。昨年の設立以来、取引金額が52億ポンド(約6815億2663万円)という急成長を遂げたWB21を始め、勢いのあるスタートアップを失うことは、英国産業にとって手痛い打撃であることは疑念の余地がない。

しかし何よりも基盤の形成が重要なスタートアップが、土台のゆるんだ英国に見切りをつけるのは仕方のないことだろう。資本力を含めあらゆる点で観察期間を設ける余裕のある大手企業は、あえて早急な決断を避けている感が強い。

果たしてベルリンやパリで、ロンドンにひけをとらない規模の金融パイプラインを築くことが可能なのか。決断の結果が目に見える段階に達するまでには、まだまだ時間を要するはずだ。(ZUU online 編集部)

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