税制改正によって、これまで相続税と無縁だった層も課税対象になってしまうケースが増えた。そこで今回は、相続税の申告を初めて行う方でも分かるよう、具体的な方法や注意点についてまとめた。

目次

  1. 相続税の申告が必要な場合
  2. 相続税の申告方法
  3. 相続税の申告期限、過ぎてしまった場合の対処
  4. 相続税の申告に必要な書類
  5. 相続税申告手続きにおける3つの注意点
  6. 多くの人が税理士に申告を依頼する理由

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(写真=PIXTA)

相続税の申告が必要な場合

平成27年の税制改正により、相続税の基礎控除額が大幅に減額された。改正内容は以下の通りだ。

改正前:5,000万円+1,000万円×法定相続人の数

改正後:3,000万円+600万円×法定相続人の数

ここでいう法定相続人とは、配偶者、子(また子の直系卑属)、直系尊属(父母や祖父母)、兄弟姉妹などが当てはまる。このうちすべてが相続人として含まれるわけではなく、それぞれのケースに応じて法定相続人の数は変動することになる。

仮に妻、子供1人の3人家族であった場合、夫から見た法定相続人の数は配偶者と子の2人となり、改正前は7,000万円の控除を受けることができた。これが、改正後は4,200万円の控除となってしまったことで、相続税の課税対象枠が拡大されることとなったわけである。逆に言えば、この基礎控除内で収まる相続に関しては課税対象ではない。

相続税には基礎控除のほかにも「小規模宅地等の特例」や「相続税の配偶者控除」といった控除制度が存在し、基礎控除内で収まらなかった場合でもこれらの制度を利用することで相続税がゼロになる可能性がある。ただしこういった制度を利用して相続税がゼロになった場合は、通常通り課税される場合と同様に申告の必要があるため気をつけていただきたい。

相続税の申告方法

相続税を申告する際には、まず申告書を作成しなければいけない。相続税の申告書には第1表から第15表までの添付書類が存在し、その中から必要な表へ情報を記入することになる。作成した申告書と必要書類を合わせ税務署へ提出することで、相続税の申告は完了である。

申告書の書式については税務署のホームページからダウンロードすることが可能だが、被相続人が税務署の方で相続税課税対象としてチェックされている場合は直接送付されることもあり、どちらを使用しても問題はない。注意すべきは、申告の必要がある被相続人が亡くなったからといって必ずしも申告書が送付されるわけではないということ。課税対象となる相続財産の調査も一定の時間がかかるため、相続が生じた際には申告書の有無などに関わらず申告のために行動を始めるべきだろう。

相続税の申告期限、過ぎてしまった場合の対処

相続税の申告は、被相続人が死亡した日の翌日から10か月以内。納税期限も同様で、いずれにせよこの期限内に相続を済ませる必要がある。期限内に申告することができなかった場合でも、期限後申告書(書式は期限内申告書と同様)を提出することで相続税の申告は可能だ。ただしこちらの場合、遅れた期間に応じて追加で罰金を納めなければいけない。

罰金のうち、無申告加算税には「自主的に申告した場合」と「税務調査により発覚した場合」で税率に違いがあるため、申告忘れに気付いた際は迅速に申告の用意をすべきだ。また、相続の放棄や新たな法定相続人の出生など相続側でなんらかの問題が発生した場合は、その理由如何で申告期限の延長申請することが可能だ。申告期限が間近に迫っているのに遺産分割が捗らないときなど、一考の余地があるだろう。

相続税の申告に必要な書類

相続税の申告には申告書の作成が必要だが、提出に際してはほかにも各種書類を用意しなければいけない。被相続人の戸籍謄本、相続人の戸籍謄本、遺言の写し、相続人全員の印鑑証明書、などを始めとして、場合によってはおよそ20種を超える資料を提出することになる。

この必要書類に関しては提出する税務署によっても異なる場合があるため、再度税務署へ赴くことを前提に最低限の書類を用意することができた時点で申告してしまっても良いかもしれない。いずれにせよ、自分で申告をする際には何度か税務署へ出向くことを覚悟しておくべきだ。

相続税申告手続きにおける3つの注意点

ここまで紹介した内容から、相続税申告に関して注意点をまとめるならば以下の3点に要約される。

1.税制改正による課税対象枠の拡大

2.基礎以外の控除を受ける相続は申告の必要がある

3.申告期限、及び納税期限の存在(被相続者の死亡した翌日から10か月以内)

基礎控除やそのほかの控除に関しては能動的に利用することになるためさほど意識する必要はないが、もっとも注意すべきは納税期限の存在である。

相続人が複数いる場合や相続財産の多くが不動産などといった固定財産であった場合、相続税支払いのためにこれを売却する必要が生じる。しかし不動産の売却には煩雑な手続きが必要であり、かかる時間を考えると10か月というのはけして十分な期間とは言い難い。もし自身が被相続人の立場であり今後行われる相続について検討しているのであれば、その辺りのケアも視野に入れられると良いだろう。

多くの人が税理士に申告を依頼する理由

相続税に限らず、税に関する申告には非常に手間も時間もかかる。申告書の作成や添付資料の用意は自分たちで行うことも十分可能な作業ではあるが、それによって申告期限に間に合わなくなってしまうのでは元も子もない。多少のコストには目をつむり、素直に専門家を頼るというのもひとつの手だ。

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