贈与税とは財産の贈与に際して課税される税金のことだが、現金贈与と土地の贈与、つまり不動産贈与では評価基準が違うということをご存知だろうか。そして、不動産贈与における評価基準は、現金贈与に比べてメリットが大きく、数字から見ても2~3割程度の差が生まれる。
現金をそのまま贈与するよりも、土地や住宅などの固定資産へ変換した上で贈与した方が得をするというわけだ。このようなことがどうして起こるのか、詳しく見ていこう。
贈与とみなされる基準
贈与とは、個人から財産をもらったときにかかる税金である。会社などの法人から財産をもらった場合には贈与税はかからず、代わりに所得税が発生する。ここでいう財産とは「経済的価値のある財産」であり、現金や不動産、あるいは株などといった有価証券がこれに含まれる。こういった財産を無償で譲り受けた場合、すべて贈与とみなされ贈与税の課税対象となるわけだ。
このほかに、対価を支払っていたとしても贈与とみなされるケースがある。親族から無利子で借金をした場合や、時価(実勢価格)と乖離した価格で財産を取引した場合などがこれに当てはまる。税務上これらの契約は形式的な売買でしかなく、実質的に贈与とみなされる。特にこちらのケースは、贈与税の課税対象として認識していない人が多いので、申告を忘れることがないよう注意しなければいけない。
贈与税には暦年課税や相続時精算課税などの各種控除が認められているほか、居住用不動産購入ならば贈与税の配偶者控除の特例なども利用することができる。抜け道を探すよりも、こういった制度や特例を活用する方法を模索する方がよほど建設的である。
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不動産の贈与税の計算法
現金贈与における贈与税の計算に比べ、不動産贈与における贈与税の計算法は複雑である。現金の場合は、譲り受けた金額がそのまま評価額となり、相応の税率をかけることで簡単に支払税額が求められる。
これに対して不動産の場合、まず土地と家屋に分けて考える必要があり、さらに土地の値段にもいくつかの種類があることを知る必要がある。家屋の税評価額は固定資産税の評価額と同様なので分かりやすいが、土地は「路線価」によって計算される。
路線価とは道路(路線)に面した土地に対して国税庁が例年7月に公表するもので、相続や贈与にかかわる財産を評価する場合に適用されることになっている。この路線価は通常、実勢価格(実際に取引がなされた金額及びなされるだろう金額)の70~80%程度に設定されており、これが現金贈与よりも不動産贈与の方が得であると言われる要因である。
仮に2,000万円の財産を贈与しようとするとき、現金のまま行えば税評価額はそのまま2,000万円になるが、不動産贈与ならば1,400~1,600万円程度に抑えられることになる。数十万円程度の財産贈与ではそもそも贈与税の基礎控除で非課税となるため無意味だが、この差は贈与する財産が大きくなればなるほど顕著になるため、相続税の節約を考えている方は参考にされると良いだろう。
安易に名義変更してはいけない
「財産を無償で譲り受けた場合」は贈与にみなされるとしたが、これは名義変更に関しても同様である。不動産の名義変更は当人同士が親類など身内であると特に気軽に済ませがちだが、名義変更はれっきとした契約であり、相応の対価が支払われていなければ、贈与に当てはまることになってしまう。これを避ける方法は2つある。
ひとつは、暦年課税制度(一般贈与)の利用だ。贈与税には年間当り110万円の基礎控除が認められており、この範囲内であれば贈与税はかからない。贈与税の申告も不要なため利用しやすい制度だが、贈与する不動産の金額によっては何十年もかかることになり、その都度登記を申請する手間と費用がかかる。
もうひとつは相続時精算課税制度の利用だ。60歳以上の親(または祖父母)から20歳以上の子(または孫)への贈与に限り利用できる制度だが、こちらの場合は2,500万円の控除を受けることができる。ただし、一度選択すると以降暦年課税制度(年間基礎控除110万円)を利用することができなくなるため、活用するタイミングが重要だ。
土地、不動産贈与の注意点
ここまで現金贈与に比べ不動産贈与の方が得であるとして紹介したが、これはあくまでも税評価額の一点についてであり、不動産取得に際してかかる取得税や登記費用については考慮に含んでいない。実際にはさらに司法書士への手数料なども発生するため、それら費用が節税額に対して見合うものであるかきちんと比較する必要がある。
また、不動産贈与特有の問題点が発生する可能性も留意しておいていただきたい。それは、贈与税が発生した際に支払い可能な資金があるかどうかということである。
現金贈与ならば、これを超える課税がなされることはあり得ないためそもそも問題にならないが、不動産贈与の場合は支払い能力の有無が重要になる。受贈者次第では単純に現金贈与の方が良い場合があるのだ。(ZUU online 編集部)
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