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(写真=PIXTA)

従業員が企業を選ぶ上で重要な要素となる「社宅」と「住宅手当」。労働環境の改良や人材の確保のため、福利厚生の一環として導入する企業もあり、経団連(日本経済団体連合会)の報告では、2014年度の住宅関連福利厚生費は0.4%増と、わずかながら前年より上がっています。コスト削減のために福利厚生費全体を縮小する動きも多い中で、住宅手当などの福利厚生は重要視されているようです。

住宅手当と社宅

社宅を住宅手当と比較する上で外せないのが「経費」の扱いです。注目したいのは「社宅制度を活用する場合の経費計上」です。

結論から述べると、「社宅は企業(経営者)にとって財務的メリットが大きい」と言えます。

まず社宅についてですが、従業員にとってもメリットがあります。住宅手当の場合、他の手当てと同じく給料に合算されます。社会保険料の算出対象となり、従業員が負担を強いられます。

一方、社宅では手当てとしての金銭収入は発生せず、負担は増えません。ただし社宅の保有・契約方式や、従業員への社宅提供費用の無償・有償によって会計上の取り扱いは変わってくるため、注意が必要です。

住宅手当は前述したとおり社会保険料の算出対象となり、個人・法人にとっては社会保険料コストが(社宅に比べて)増えるというデメリットがあります。その反面、従業員にとっては「自身で自由に住む場所を選べる」というメリットがあります。

法人側のメリットとしては、社宅契約のように「寮・社宅の管理コスト」を負担する必要性がないため、社会保険料に対するコスト増を抑えられることです。法人契約を行い社宅として提供する場合、個別に賃貸契約の管理を行うなどの業務も発生しますが、住宅手当として支給するだけであれば不要です。

自社物件か借り上げ型か

社宅や寮となる物件が自社保有なのかどうかで、経理上の取り扱いは異なります。物件を自社保有する場合、「減価償却費」という項目により、「帳簿上の」経費を大きく出すことが可能となります。

減価償却を簡単に言うと、「年々古くなり、減価する分を経費として算出する」という項目です。当然減価する分を経費として算出するため、現金での支出は一切ありません。これが「帳簿上の」数字だけの経費を出せる理由です。

減価償却の算出には、物件の立地および築年数・構造などに依存する部分も大きいですが、一般的には築年数が経過している物件ほど、単年で算出できる減価償却費は多くなります。ただし、物件により減価償却期が計上できる年度も、「法定耐用年数」という形で決まります。その場合減価償却費を計上できる年数は短くなり、この部分については綿密な計画立案が必要です。

「借り上げ型」の場合ですが、これは従業員が選んできた物件を法人により借り上げ(法人契約)を行う方法です。近年では法人保有社宅数は減っている一方で社宅入居自体は増えており、法人借り上げが一般化し主流となりつつあることがわかります。

この場合、自社保有ではないので減価償却は発生しない代わりに、物件の維持費などを負担する必要がなくなります。従業員が自分の住みたい立地・間取りの物件を選べるため、満足度も高まります。従業員が一定の家賃を支払っている場合、経費計上を行う事ができます。一定の家賃額については後述します。

「無償」で貸すのか「有償」か

注意したいのが「社宅が無償か有償か」です。無償で貸し出す、または一定の請求額に達しない場合、会計上の取り扱いとして社宅は「福利厚生」ではなく「賃金」であるととらえられ、従業員の給与所得から課税されてしまうケースがあります。

福利厚生ではなく賃金と判断されてしまうと、「コスト」面では法人にとってメリットはなく、従業員側にとっても「福利厚生と言いつつ、課税されてしまうため意味がない」ということになります。

なお社宅を「賃金」ではなく「福利厚生」として扱うには以下の要件を満たす必要があります。社員から1ヵ月当たり、一定額の家賃(賃貸料相当額。1〜3の合計額)以上を受け取っていれば、給与として課税されません。

1. (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%
2. 12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/3.3(平方メートル))
3. (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%

固定資産税の算出は土地評価額をベースに行われるため、毎年変わります。そのため賃貸料相当額も一定ではなく、毎年変動します。

経営者目線から見ると、現在の税制では「社宅方式にして、一定の家賃を徴収する」という形が、もっとも財務的メリットがあると考えられます。(提供: フクリ!

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