アメリカで働く人の3割は非ネイティブ

「ネイティブに通じる英語を話したい」を目標に英語を学習している人はとても多く、筆者はこれを「ネイティブ神話」と呼んでいる。実はこれも、これからグローバルで仕事をしたい人の多くには必要のないものだ。なぜなら、これからのビジネスの現場はアジアが中心であり、日本人を含むアジア人のほとんどにとって英語は「第二言語」だからだ。

そもそも私たちが信じている「ネイティブ」の多くはすでに「ネイティブ」ではないことをご存知だろうか。ネイティブの定義は「英語を母語として話す人」であるが、アメリカに住む5歳以上人口の21%は英語以外の言語を家庭で話している(2011年米国国勢調査)。また、アメリカで働く労働者の16.1%はアメリカ国外で生まれた非ネイティブで構成されている(2012年米国労働統計局)。これらはアメリカで働く人たちの3割以上がすでに、ネイティブではないという証拠に他ならない。

筆者にも経験があるが、英語を母語とするネイティブの中には「流暢に美しい英語」を話さないと理解できない人もいる。しかし、彼らがこれからアジアやその他の国で活躍したいなら、流暢ではない英語を理解できないと働くのは難しくなる。そのため、グローバルに働いている多くの「ネイティブ」も、さまざまな訛りのある英語に許容できるようになっているのである。

発音や流暢さは二の次でもいい、そう知るだけで英語は「話せる」ようになる。

「日本語と同じように英語を話す」必要などない

「英語が話せない」と悩むビジネスパーソンに共通しているのは、「主語が抜けている」こと。彼らの多くは「日本語と同じように英語が話せない」ことに苦しんでいるのだが、考えてみれば、それは当たり前のことである。なぜなら、ほとんどの人は日本語より、英語を使ってきた時間のほうが圧倒的に少ないはずだからである。

そもそも、日本語と全く同じだけの英語力が必要なのだろうか。答えは否である。「仕事の場面」に限定した日本語は、あなたが日々使っている日本語の約2割かそれ以下ではないだろうか。英語もそれと同じこと。日本語と同じように話せるようになろうとするから大変なのである。まずは「使う場面」を限定することで、英語は必ず「話せる」ようになる。

第1回目は「3つの思い込み」を外すことで、世界一忙しいビジネスパーソンでもわずか1カ月で「仕事の英語」を習得できるようになることを紹介した。次回は具体的にどうやって「話す英語力」を伸ばすのかについて、お話ししたい。

新条正恵(しんじょう・まさえ)コンサルタント/語学講師
ニューヨークメロン銀行ヴァイス・プレジデント職を経て、その後独立。グローバルリーダーとして働いた自身の経験を活かし、海外進出を目指す企業向けにコンサルティングを行う。また、2016リオ五輪には通訳ボランティアとして参加、2020東京五輪で活躍したい人向けに講演活動を行っている。著書に『マルチリンガル式30日で使いこなせる仕事の英語』(かんき出版)などがある。(『 The 21 online 』2016年09月30日 公開)

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