大麻関連ビジネス,イノベーティブ・インダストリアル・プロパティーズ
(写真=PIXTA ※画像はイメージです)

日本では、2016年も芸能人やスポーツ選手の麻薬での逮捕が相次いだ。ところが米国では、ニューヨーク証券取引所(NYSE)に初の「大麻」関連企業が上場して話題になっている。合法大麻は、急成長しているビジネスであり金融業界も無視できない存在になってきたためだとの見方が強い。米大麻産業の現状を追ってみよう

12月1日にNYSEで初の大麻施設REITが上場

12月1日にNYSEでIPOをしたのは、医療大麻関連施設の不動産投資信託(REIT)を手がける「イノベーティブ・インダストリアル・プロパティーズ(Innovative Industrial Properties、ティッカーIIPR)だ。NYSEでの大麻関連企業の上場は初めて。

初値は20.25ドルと公募価格20ドルに対して若干のプラスで始まったものの、当日の引け値は19.15ドルと公募価格を割り込んだ。そもそもイノベーティブ社は11月最終週に上場予定だったが、資金調達が順調にいかずIPOは一週間ほどずれ込み12月1日になった。

今回の上場では、1株20ドルで875万株、計1億7500万ドル(約200億円)の資金調達を見込んでいたが、REITの市場環境があまりよくなかったこともあって、株数は460万株、計9200万ドル(約100億円)に減額されている。それほど人気のIPOとは言えない。

ただ、大麻業界関係者がイノベーティブ社に掛ける期待は大きい。米国では医療用大麻の上場会社がないわけではないが、NASDAQ、NYSEといったメイン市場では承認されていなかった。イノベーティブ社はカリフォルニア州サンディエゴに本社を置く、医療用大麻関連施設のREITだ。大麻関連のREITの上場は史上初となる。イノベーティブ社は調達した資金を大麻関連施設に再投資し、運用資産を拡大していく予定だ。今まで資金調達が制約されていた大麻関連業界にとって新たな成長の可能性が拡がった。

急成長を続ける大麻市場

米国では連邦レベルではまだ大麻は非合法だが、州レベルでは合法化が進みはじめている。23の州が既に医療大麻を解禁しており、そのうちの4州とワシントンDCが成人の嗜好目的の使用を合法化している。また10以上の州が来年中の大麻法改正に向けて議論している。大半の州において、2016年は全面禁止もしくは何らかの形での解禁に向かう見込みだ。

州レベルで合法化が進んでいるのは、麻薬産業が税収を生むからだ。初めて大麻を解禁したコロラド州では2014年の大麻からの税収が、初めてアルコールからの収入を超えたことが話題になった。2015年には大麻関連の収入は77%増の1億3500万ドルになっている。嗜好目的の大麻を解禁したワシントン州では、2015年の大麻関連の税収は初年度で7000万ドルに達した。

大麻は明らかに最も急速に成長している米国産業のひとつだ。大麻業界のリサーチ会社であるアークビュー・マーケット・リサーチ社の調べでは、2015年の米合法大麻市場は54億ドル(約6100億円)と14年の46億ドル(約5200億円)から17%増となった。特に嗜好用大麻は9億9800万ドル(約1100億円)と前年の3億5100万ドルから(約400億円)から2.8倍になっている。アークビュー社は、2014年〜20年の医療用・嗜好用大麻の売上の年間平均成長率を30%と高い伸びを見込んでいる。

ナスダックでは今年10月、大麻情報のSNSのMassRoots社が上場申請をしたが、IPOは却下された。そんな状況下で、NYSEが大麻関連企業の上場を認めた。NYSEが上場承認に踏み切ったのは、大麻業界が今後の金融市場関係者にとって無視できない規模に成長してきたからに他ならない。

イノベーティブ社の上場は、大麻業界にとって大きな第一歩だ。これまでは資金調達の難しさが成長を阻害する要因だった。それだけはない。大麻関連企業は大手銀行に口座を開設することも出来ず、ビザやマスターカード等の大手クレジットカードも大麻関連の決済には対応していない。NYSEで上場承認された効果は大きく、そういった慣行は今後徐々に変わって行くに違いない。

イノベーティブ社の今後にも注目

イノベーティブ社はREITとしてのみならず、バイオメディカル分野で多大な業績をあげており、今後は医療大麻の発展に大きく寄与していく可能性が高そうだ。

ただ、IPOが人気化しなかったのは、大麻に前向きな立場をとるヒラリー・クリントンでなくドナルド・トランプが次期大統領に決まったためかもしれない。

トランプは反大麻的なスタンスで知られている。トランポノミクスでトランプが力を入れていく産業の株価が上がった。インフラ関連などが代表だ。今後、トランプにより大麻行政が一時代昔に逆行するとすれば同社の株価も当面さえない動きになるかもしれない。今後も株価の動きと、つづく大麻関連企業の上場には注目しておこう。

平田和生(ひらた かずお)
慶應義塾大学卒業後、証券会社の国際部で日本株の小型株アナリスト、デリバティブトレーダーとして活躍。ロンドン駐在後、外資系証券に転籍。国内外機関投資家、ヘッジファンドなどへ、日本株トップセールストレーダーとして、市場分析、銘柄推奨などの運用アドバイスをおこなう。現在は、主に個人向けに資産運用をアドバイスしている。

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