年金だけで生活ができるかどうかは「人による」という答えが正しいだろう。「人による」理由は、生活の収支が人それぞれであるためである。個人によって加入している年金の種類や加入期間、保険料が異なるため、年金の受給金額は一律ではない。それに加え、「どのようなレベルの生活がしたいのか」によって生活コストは人それぞれであるからだ。
今回は、年金だけで生活することは可能であるかをテーマに、総務省「家計調査」から老後にかかる費用と、年金受給金額について紹介する。
老後の生活費は年金でまかなえるのか
結論から言うと、公的年金のみで老後に夫婦でゆとりある生活を送るのは、残念ながら難しそうだ。総務省の「家計調査」によると、2016年の二人以上の高齢夫婦(世帯主が60歳以上の無職世帯)の消費支出は、月 23万7691円である。一方、厚生労働省年金局「平成27年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によれば、現時点で老齢年金の受給権を持つ人の平均年金月額は、国民年金が5万5157円、厚生年金が14万5305円であり、消費支出を下回っている。
つまり、年金だけでは赤字なのだ。赤字分は、貯蓄や仕送り、財産所得により賄うこととなる。
また、内閣府「平成23年度 高齢者の経済生活に関する意識調査」によると、60歳以上の男女で、「家計にゆとりがあり、まったく心配なく暮らしている」という人は、18.0%である。ここからも、高齢者の多くは老後の生活において、収入面で何かしらの不安があることがうかがえる。
もちろん、年金だけでも満足できるという方もいるだろう。しかし、「老後を楽しむ」には十分な金額とは言えない。年金だけでは「贅沢な暮らし」はできないというのが現実である。
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お金はいくら必要?生活費を見直そう
住居費
まず、支出の中で大きいものに住居費がある。「家計調査」によると高齢夫婦の住居費は月平均1万4700円である。持ち家の場合、住宅ローンを完済してからも、修繕費などの費用がかかる可能性がある。老後の生活資金についてシミュレーションする際には、持ち家の場合でも、住居費を0円と設定してはいけない。なお、住宅ローンを年金で返済するのは負担が大きいため、避けた方がよいだろう。
賃貸に住み続ける場合には、生涯、家賃を支払い続けることになる。その住居費の負担は、持ち家の方に比べれば大きくなるだろう。持ち家にも賃貸にも、メリット・デメリットがあるが、その選択は、老後の生活にかかわってくるので、慎重に行いたい。
食費
食費は、現役時代に比べて食べる量が減ることに加え、自宅で夫婦揃って自炊するのを中心にすれば、節約が可能である。しかし、時間に余裕ができたからと、外食が中心になれば、エンゲル係数は高くなってしまう。
住居費や食費以外にも、現役のうちに生活水準を見直しておくべき項目はいくつかある。生活レベルを下げることは難しいと言われているが、日頃から節約を心がけている人であれば、老後も無理なく生活を送れるだろう。
しかし、老後には思いもよらぬ部分で費用がかかる。それが、「保健医療費」である。年齢を重ねるごとに病気や怪我のリスクは高まっていく。総務省「家計調査」によると、40歳未満の世帯では月平均保健医療費が9347円なのに対し、高齢夫婦では1万5044 円である。高齢夫婦では40歳未満よりも、1年間で約7万円多くの保健医療費が掛かっているのである。
年金の受給額を確認
まずは、自身がどの年金にどれくらいの期間加入をしているかを確認してほしい。国民年金であれば、25年以上(2017年9月からは10年以上に短縮)保険料を納めることが必須要件である。納めることができなかった保険料は、2015年10月から2018年8月までの期間限定で、過去5年分まで納めることが可能なので、年金事務所に相談をしてほしい。
年金の受給額は、生年月日や報酬金額によって人それぞれなので、詳しくは、ねんきん定期便やねんきんネットでご確認いただきたい。
年金以外で老後準備する方法
「家計調査」によると、高齢夫婦の収入は21万2835円、そのうち年金などの社会保障給付費が19万3051 円となっている。つまり、およそ月2万円を他の収入源から得ているということだ。その内訳は、勤め先収入が5068円、事業・内職収入が4202円、仕送り金が827円、その他である。
収入を公的年金だけに頼るのではなく、定年後に働いたり、資産運用したりすることによって収入を増やすことはできる。公的年金に上乗せされる個人年金保険やiDecoなどを、老後の備えとして検討するのも選択肢の一つである。
誰しもの憧れ
ゆたかな年金生活は、誰しもの憧れである。今回の記事を読み、公的年金のみでは実現が難しいと落胆した方もいるだろう。収入の要となる年金を受給するためには、年金の受給資格を満たさなくてはならない。まずは、しっかり保険料を納めて、年金受給の要件を満たすことを最優先に考えて行動しよう。
それに加え、何らかの収入源を確保しておくことが、老後により豊かに暮らすための備えとなるだろう。準備は早いに越したことはない。今できることを検討し、豊かな老後に備えてもらいたい。
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