大型M&A
(写真=Thinkstock/Getty Images)

2016年も業界再編を睨んだグローバルでの大きなM&A案件が目立った。ドイツの医薬・農薬大手のバイエルは、 米国のバイオメーカーで遺伝子組み換え種子で世界最大手のモンサントを660億ドル(約7.5兆円)で買収した。

農業部門の世界業界再編において、2015年に経営統合したダウ・ケミカルとデュポン軍団に対抗する。日本企業が絡んだM&Aでは、ソフトバンク <9984> が英半導体設計大手のアーム・ホールディングスを3.2兆円で買収した。グローバルでIoT革命がこれから本格化するにあたり半導体がキーデバイスになるとみて半導体業界に参入する。今年の日本の大型M&Aディールと業界再編を振り返ってみよう。

医療機器業界
――東芝メディカルとキヤノンの経営統合 約6665億円

東芝メディカル(未上場)とキヤノン <7751> が経営統合。東芝 <6502> は不正会計問題で直面した経営危機から再建するために、医療機器では日本で1位の優良子会社である東芝メディカルの全株式をキヤノンに6655億円で売却した。同社の入札には、医療機器をすでに手掛けている富士フイルム <4901> 、コニカミノルタ <4902> などが応札したが、医療機器分野を次世代の柱のひとつとして掲げているキャノンが勝利。

東芝メディカルのレントゲンシステム、MRIシステムなど、高シェアの画像装置関連を一気に手に入れることになった。日本だけでなく、中国など世界的に高齢化社会は進む、医療費抑制の動きは世界的な流れだ、医療機器はITと組み合わさることで大きな可能性を秘めており、ますます世界的な再編が続く可能性が高いだろう。

石油業界
――東燃ゼネラルとJXホールディングの統合 約6463億円

東燃ゼネラル <5012> とJXホールディングス <5020> の統合は、6463億円のディールだった。2017年4月に両社は統合し、JXTGホールディングスとして生まれ変わる。東燃ゼネラルの株式1株に対してJXホールディングの普通株が2.55株を割り当てられる。

石油元売りの再編は待ったなしだ。人口減少、エコカーの普及で原油需要は頭打ち、そこに原油安が追い打ちを掛けた。2015年に2017年4月に統合することで合意した昭和シェル <5002> と出光興産 <5016> の経営統合は、出光興産の創業家の反対でまだ延期されている状態だ。高度成長期に15社程度あった石油元売りは、JXTG、昭和シェル・出光、コスモ石油の3グループに集約されていく。

電子機器業界
――シャープと鴻海精密工業のディール 約3888億円

シャープ <6753> と台湾の鴻海精密工業(FOXCONN)とのディールも話題になった。シャープは液晶への大型投資が裏目にでて経営難に落ち込み、台湾の鴻海精密の傘下で再建することになった。鴻海は3888億円の出資金を払って、シャープの株式の66%を保有する筆頭株主となった。日本の大手電機メーカーが外資の傘下に入るのは初めて。

鴻海は、スマホや液晶テレビなどの電子機器の電子受託生産(EMS)の世界大手。世界の主力電子機器生産のサプライチェーンのキーとなる企業であり、アップルのiPhoneの生産も請け負っている。その鴻海がシャープの液晶を手に入れた。世界の電子機器の業界地図が大きく変わる可能性がある。シャープは鴻海のリストラ策で今期3年ぶりに営業黒字になる見込み。

今までシャープは、韓国のサムスンに液晶パネルを提供しており、サムスンは最大の顧客だった。しかし、鴻海にとってサムスンはライバルだ。鴻海は、サムスンへの液晶パネルの供給を停止し、中国にシャープの大型液晶工場の建設することを発表した。大きな戦略の転換だ。世界のサプライチェーンの流れが変わる。

建機業界
――建機コマツの米企業買収 約3845億円

コマツ <6301> の米販売子会社コマツアメリカが米鉱山機械のジョイ・グローバル社を3845億円で買収した。コマツのターゲットはすでに日本でなく、中国やアメリカなど世界だ。日本市場はすでに伸びが見込めないからだ。

米建機大手のキャタピラ社との競争で確固たる地位を作るためにも、米国で中長期的な成長セクターである鉱山機械のジョイ社を買収した。ジョイ社は主要な資源メジャーを含む堅固な顧客基盤をもっている。キャタピラ社は2010年にジョイ社のライバルビュサイラス社を買収している。コマツは、資源価格が下がってから買収をしたので、キャタピラに比べてずいぶん安い値段で買えた。

自動車と自動車部品業界
――トヨタ自動車がダイハツを完全子会社化、スズキと資本提携

トヨタ <7203> は3719億円でこれまで51.2%出資していたダイハツ(上場廃止)を完全子会社した。ダイハツの1株の株主に対してトヨタ株0.26株を割り当て上場廃止にした。トヨタはさらに、スズキ <7269> とも資本提携。スズキは独フォルクスワーゲンと2015年に資本提携を解消、新たに組んだのがトヨタだった。ダイハツは軽自動車国内首位、スズキも軽自動車大手で新興国で強い。この両社をグループに取り込む事でトヨタのハイブリッドを「ガラパゴス化」しないよう世界標準へ持って行きたい考えだ。

一方、日産は燃費不正問題で窮地に陥った三菱自動車 <7211> を2370億円の出資で発行済み株式の34%を手に入れて筆頭株主になった。

これで日本の自動車メーカーは、トヨタ、日産、ホンダの3系列となった。自動車は、次世代の自動運転ではグーグルやアップルと言ったITジャイアントが参入を虎視眈々と狙っている、自動車のEV化、環境対策などで開発費用も拡大してきており、グローバルな競争に勝つためにはグループ拡大路線を選ばざるを得ない。

自動車部品業界もさらに厳しい生き残りをかけた再編に突入した。今までは、部品メーカーは完成車メーカーの系列に分かれていた。ただ自動車もPCがたどったと同じように共通プラットフォームになり、部品は高性能で安いものをアジアで調達、アセンブリーもアジアのEMSで行い、メーカーはソフトだけを作る時代が来るかもしれない。部品メーカーを系列にこだわっている時代ではないのだ。

日産は、系列の主力部品メーカーのカルソニックカンセイ <7248> の41%を保有する筆頭株主であったが、その持ち株すべてを、米投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)に約1900億円で売却することを決めた。この資金を、三菱自動車の買収費用に充てる見込みだ。これをきっかけに、部品メーカー業界が劇的に変化していくかもしれない。

清涼飲料とアルコール業界
――コカ・コーライースト、ウエストの統合が決定 約3116億円

コカコーラのボトリングと販売を担当するコカ・コーライーストジャパン <2580> とコカ・コーラウエスト <2579> は2017年春をめどに統合することになった。3116億円のディールだ。清涼飲料市場は、日本では人口減から成熟市場となっており、パイを取り合い身を削る戦いが続いている。コカコーラ販売大手2社が合併することでシェアの拡大およびコストカットを狙っている。

さらに、コカコーラ2社は統合後に、キリンホールディングスと資本・業務提携することを発表した。コカコーラとキリンビバレッジとはもともとは競合ライバルである。そのライバル関係が提携しなければならないほど、清涼飲料業界の再編はコストカットのためには重要なのだ。

――アサヒグループHD、東欧のビール事業買収 約8883億円

清涼飲料だけでない、アルコールも日本市場は成熟している。成長は、海外に求めざるを得ない。サントリーが2014年にバーボンウィスキーのジムビームで有名な米蒸留酒最大手ビーム社を1.6兆円で買収したことは話題になった。今年はアサヒグループホールディングス <2502> は2月に、英SABミラー社が保有する「ペローニ」「グローシュ」など欧州ビール4事業をベルギーのアンハイザー・ブッシュ・インベブ社から買収した。さらに、12月には、同社から、東欧5カ国のビール事業を約8883億円で買収することを発表した。

日本は、人口が減り始め、GDPの伸びも低い、国内市場で企業が成長して行くには厳しい環境だ。海外に成長を求めた場合、今までのような日本内のガラパゴスで戦っていた状況からグローバルでスタンダードでの競争にさらされることになる。来年も大きな業界再編をともなうM&Aが話題になりそうだ。

平田和生(ひらた かずお)
慶應義塾大学卒業後、証券会社の国際部で日本株の小型株アナリスト、デリバティブトレーダーとして活躍。ロンドン駐在後、外資系証券に転籍。国内外機関投資家、ヘッジファンドなどへ、日本株トップセールストレーダーとして、市場分析、銘柄推奨などの運用アドバイスをおこなう。現在は、主に個人向けに資産運用をアドバイスしている。

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