住民税の節税を検討するときや、住民税の額を計算したいときなど、「いつから」なのかが分かりにくい部分がある。納税(徴収)時期であったり、所得控除の適用時期であったりとさまざまだ。この記事では、住民税に関する時期について、住民税の仕組みを解説しながら、いくつかの状況をモデルケースとして紹介する。

一般的に住民税といった場合、道府県民税(東京都は都民税)と市町村民税(東京都23区内は特別区民税)という2つの税金を指す。住民税には、「個人住民税」と「法人住民税」という分類もあるが、今回は個人住民税について解説する。

個人住民税は、所得に応じて課せられる「所得割」、住民すべてに均一に課せられる「均等割」、利子所得に課せられる「利子割」、特定配当等に課せられる「配当割」、上場株式などの譲渡所得に課せられる「株式等譲渡所得割」という5つの課税額からなるが、このうち利子割、配当割、株式等譲渡所得割については特に言及しない。これら3つの個人住民税は、対象となる所得(配当)が支払われる際に、金融機関や証券業者が徴収(特別徴収)する形態だからだ。

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住民税の課税時期と対象とする課税所得の関係

所得割と均等割は、毎年1月1日時点で居住している区市町村において賦課がなされ、その年の6月より順次納付することになる。そのため、年の途中で転居したとしても、その年の住民税の納付は転居前の区市町村へ行わなければいけない。逆にこの場合、その年においては転居先の区市町村に対する住民税の納税義務は発生しない。

所得割の計算の基礎となる所得とは、「前年の課税所得金額」である。例えば、2020年6月から納付する住民税の所得割は、19年1月1日から12月31日までの課税所得を基に計算されている。納付時期が6月以降になるため、分かりにくい部分ではあるが、課税時期が1月1日時点だと認識していれば、難解でもないはずだ。

なお均等割は所得にかかわらず一定の額が課税されるものだが、非課税要件として参考にする所得は、やはり前年の合計所得金額である。

住民税のうち、所得割と均等割は「1月1日時点」に課税されるものであり、参考とする所得は「前年の所得」である。この2つの要件を理解していれば、おおよそ住民税にまつわる時期に関して迷うことはないだろう。

続けて、いくつかの具体的なケースに分けて、以下を確認してみよう。

住民税いつから ケース1:特別徴収(給与天引き)の開始時期

前述のとおり、住民税は前年の所得に対して課せられるので、会社員の場合、住民税の特別徴収は「入社2年目」の6月から始まる。ただし、入社1年目時点での前年の所得が非課税限度額以下だった場合に限る。

転職などで特別徴収先(給与支払者)が変わった、あるいは今まで普通徴収によって納めていた住民税を特別徴収へ切り替えた場合などは、やや複雑になる。この場合、間を置かずに再就職したならば、再就職先(申請した雇用先)で速やかに特別徴収を始めることができるが、普通徴収による納付時期が過ぎたものは切り替えることができない。

6月1日から12月31日までに退職・転職した場合、その年分の住民税を前雇用先において一括で特別徴収してもらうことも可能なので、臨機応変に対応するとよいだろう。

住民税いつから ケース2:普通徴収(自分で納付)の開始時期

会社員や契約社員のように、無期限あるいは長期の一定期間にわたって会社に直接雇用される人は先ほど解説した「特別徴収」で住民税を納められる。一方、多くの派遣社員や複数の勤務先をかけもちするアルバイトやパート、自営業者は自分で住民税を納付しなくてはならない。これを「普通徴収」という。

住民税は本来納税者本人が自ら納めるべきものなので、こちらが「普通」で、会社が納税者の給与から天引きして本人の代わりに納付している会社員の場合が「特別」となる。特別徴収の項目で少し触れたが、年の途中で退職した人や転職者の一部も普通徴収で納付することになる。

普通徴収で税金を納めるケースでは、毎年5月末から6月くらいに納税者本人の住所に直接「住民税決定通知書」が届く。一方、特別徴収では、通知書は勤務先に届く。

納税の開始時期は特別徴収と同じだが、通常、6月・8月・10月・翌年1月の4回に分けて納付することになる。うっかり忘れたり無視したりすると延滞金というペナルティも納付しなくてはならない。最悪の場合、自分の財産が差し押さえられることもあるので期限内にきちんと納めるようにしよう。

住民税いつから ケース3:住宅ローン控除の控除時期

住宅ローン控除(住宅借入金等特別税額控除)とは、所得税において認められる税額控除(所得控除とは異なる)で、所得税より引き切れなかった分の控除額については住民税の所得割額からの控除が認められることになっている。

このケースにおいては、所得税が確定するタイミングと住民税の課税時期を考えればよい。所得税が確定するのは原則として、給与所得者ならば年末調整に関連する事務がすべて完了する1月31日(給与支払者の各種法定調書の提出期限)、確定申告義務者ならば原則3月15日(所得税の確定申告期限)であり、いずれも住民税の課税時期である1月1日よりも遅い。

つまり、年末調整か確定申告で所得税から控除した住宅ローン控除は、直後の6月から支払う住民税から控除されるというわけだ。

住民税いつから ケース4:配偶者控除、扶養控除などの控除時期

ケース2とほぼ同じで、年の途中で結婚・出産により扶養親族の人数などが変わったとしても、その控除が適用されるのは翌年の住民税からとなる。人的控除に限らず、住民税におけるあらゆる所得控除が同様だ。

住民税いつから ケース5:退職した後の住民税の納付時期

「会社を辞めるとその後の住民税が大変になる」とよくいわれている。退職した後、収入がない中でかつての所得にかかる住民税を納めなくてはならないからだ。

ケース1で伝えたように、いったん会社を辞めてもすぐに転職し、新たな職場で住民税の特別徴収の手続きをすれば金銭的な負担はあまり感じない。しかし、会社を退職したまま次の6月を迎えると、「無収入なのに重い住民税を払う」ことになる。

例えば、年の途中の10月で会社を辞め、そのまま転職しなかったとする。このようなときは2つの住民税を自分で納めなくてはならない。

1つ目は会社を辞めた直後に納付する住民税だ。これは会社を辞める年の前年分の所得に課税される住民税の一部であり、10月末までと翌年1月末までの2期分を自分で納めることになる。

2つ目は退職した年の翌年6月以降1年間に納付する住民税だ。これは退職した年分、つまり退職した年の1月1日から10月までの退職日までの所得に課税される分になる。この住民税は4回に分けて自ら納付する。

退職所得、つまり退職金にかかる住民税は「退職所得申告書」を提出する。会社が所得税とともに退職金から天引きして払ってくれるので、退職者本人の負担にはならない。しかし、辞める日までに稼いだ給料や賞与にかかる住民税は退職後、辞めた人本人が自分で納付しなくてはならない。納税資金の準備を欠かさないようにしたいところだ。

税金の「いつから」は課税時期と課税対象に注意

住民税に限らず、各種税金にまつわる「いつから」を考えるときは支払時期ではなく、その税金がいつ、何を対象として課税されるものであるかを考えると分かりやすい。税金を試算するうえで、この記事で紹介した内容を参考にしていただければ幸いだ。

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