一般的に、住民税は申告が不要だと思っている方は多いだろう。実際、住民税はほとんどの場合自動的に決定されるため、別途申告義務が生じる人はそう多くない。今回は確定申告と住民税の関係について解説すると共に、住民税申告が必要なケースと不要なケースとを紹介する。住民税の申告が不要な人であっても、別途これを申告することで得をするという場合もあるため、ぜひ確認していただきたい。

確定申告と住民税の申告の関係

確定申告とは、1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得などに対して課せられる「所得税」に関する申告だ。サラリーマンなどの給与所得者が行う年末調整は、確定申告における所得税の確定や還付などといった業務を給与支払者が代行する手続きであるため、確定申告と年末調整とに手続き上の大きな差はない(適用できる所得控除の範囲が異なるなどの差はある)。

所得税が「国税」であるのに対し、住民税は「地方税」であり、本来これらの税金に手続き上の関連性はない。しかし、所得税が年末調整や確定申告によって決定されると、税務署より各区市町村へ税額やその計算の基礎となった各種情報が通達されるため、区市町村は別途申告を受けることなく住民税を決定・賦課することができるのである。

確定申告と住民税申告とはこういった関係にあるため、一般的に年末調整や確定申告によって住民税も決定していると見られることが多く、また実質的にそのような理解でも特に問題がない。

ではどのようなケースにおいて問題が発生するのかというと、それは確定申告が不要であっても住民税申告が必要であるという場合だ。

住民税の申告が必要な場合

住民税の申告が必要な人は、1月1日時点(賦課期日)に当該区市町村へ居住している人のうち、次のような所得があった場合である。

  • 年末調整を受けている人のうち、勤務先(給与支払者)より給与支払報告書の提出がない場合
  • 年末調整を受けている人のうち、給与所得以外にも所得があった場合
  • 地代、家賃、配当、農業、年金などの所得があった場合

なお、公的年金については「確定申告不要制度」の適用が認められる場合であっても、公的年金以外の所得がある場合には住民税申告が必要になる。

また、1月1日時点で居住していない人でも、その区市町村へ所属する固定資産(家屋や事業所などの不動産)を所有している場合は住民税申告の必要があるため注意していただきたい。

住民税の申告が不要な場合

住民税の申告が不要な人は、次のような場合である。

  • 確定申告を行っている場合
  • 年末調整を受けた人のうち、勤務先より給与支払報告書が提出されている場合
  • 1年間の所得がなかった場合、あるいは所得が一定額以下の場合

ここでいう一定額とは、住民税の「非課税限度額」のことを指している。なお住民税には「所得割」や「均等割」などの種類があり、それぞれ非課税限度額として定められている額は異なる。

所得割の非課税限度額

控除対象配偶者や扶養親族がいる場合

35万円×(本人・控除対象配偶者・扶養親族の合計人数)+32万円

控除対象配偶者や扶養親族がいない場合

35万円

均等割の非課税限度額(東京都23区内の場合)

控除対象配偶者や扶養親族がいる場合

35万円×(本人・控除対象配偶者・扶養親族の合計人数)+21万円

控除対象配偶者や扶養親族がいない場合

35万円

このほか、生活保護を受給している場合などは所得割、均等割共に非課税となる。

非課税でも住民税の申告をした方が良い場合

住民税非課税の要件を満たしている人のうち、次のケースにあてはまる場合は別途住民税の申告を行った方が得をする、メリットが大きいと言える。

  • 国民健康保険料の減免を受ける場合
  • 臨時福祉給付金の受給を受ける場合
  • 各区市町村の定める優遇措置を受ける場合

各区市町村の定める優遇措置とは、健康診断料の割引や介護サービス料の割引など、区市町村の条例によってさまざまに設けられているものだ。多くの場合、住民税非課税適用には別途住民税の申告が必要となるため、こうした特例・優遇措置を活用するならば住民税を申告した方が良いだろう。

所得税が非課税でも住民税申告が必要な場合もある

住民税の申告について考える上ではもうひとつ、「所得税が非課税でも住民税が課税される場合」を想定しておかなければならない。所得税と住民税は共に所得を対象として課税される税金であり、どちらもほぼ同様の条件で所得控除の適用が認められる。しかし、所得税に比べ住民税に認められている所得控除はいずれも若干の減額がなされており、たとえ所得税が非課税であっても住民税は課税されるというケースが生じうる。

また、前述の通り住民税には所得割と均等割という別の課税方式があり、所得割の非課税限度額は満たしていても均等割の非課税限度額は満たしていないというケースも起こりうる。この場合、住民税非課税対象者に認められている各種優遇措置は適用されないため、注意が必要だ。