中国,日本人,駐在員,日中関係
(写真=PIXTA)

中国の経済サイト「経済観察網」は、「日本人がやって来た」(日本人来了!)というシンプルな見出しの記事を掲載した。日本人留学生の物語を交えながら、ここ数年の日中経済に触れ近未来の展望をしている。タイトル通り本当に日本人はやって来るのだろうか。

日本人留学生Sの失恋

日本人留学生Sは、今も数年前の夜を思い出す。携帯に突然、中国人男性からの着信があり、いきなりどなり声が耳に飛び込んで来た。

「よく聞け、おれの娘にもう近付くな。殺されないよう気を付けろ」

中国人ガールフレンドの父親からの電話だった。彼はなぜそこまで怒ったのか。

「それはあなたが日本人だから。親戚全員があなたとのとの交際に反対しているの」

これはガールフレンドからの最期の言葉だった。

留学生宿舎のテレビではちょうどそのころ反日デモを放送していた。怒りの波が街道を埋め尽くしていた。Sは交換留学生として北海道の実家と湖南省の大学の間を行き来する生活を続けていた。失恋の痛手は留学期間中には癒えなかった。このころ中国人は日本人を嫌い、日本人の中国人への反感は高まる一方だった。

減少する日本人と事業意欲

日本人は減少した。某メディアの調査では中国で生活する日本人は20%も減少している。日本企業は中国から逃げ腰気味である。日本貿易振興機構(JETRO)の調査によれば、2013〜14年、中国での事業を拡大するという企業は10%以上減少し52.3%となった。2015年にはさらに38.1%まで下がっている。

また日本内閣府の調査では日本人の80%以上が中国に好感を持っていないと答え、ここ15年で最高を記録した。対中国感情の悪化にともない、日中間の国際結婚数も2010年以降減少に転じている。

2015年卒業したSは、中国に留まって就職するのか、それとも帰国すべきか逡巡した。日中関係は緊張し、中国経済は減速していた。Sは帰国し飲食店チェーンに就職した。睡眠時間は2時間程度だった。学歴社会の日本では中国語が話せたところで出世のプラスになるかどうかわからない。

1年後Sは日本の仕事を辞め、広東省・広州へ行き、人材仲介会社に職を得た。やはりチャンスは中国のほうが多いと実感しているという。

日本製造業の“中国回帰”

JETROの2016年12月21日調査では、アジア太平洋地区の20国家に進出した4642社の日系企業にアンケートしている。その中で中国大陸の業務拡大意欲ありと答えたのは40.1%と前年より2ポイント上昇した。

さらに中国の人件費上昇は一段落し、日本製造業の“中国回帰”の後押しとなっている。2015年〜2016年の中国の人件費は6.1%の上昇で、これは上記20か国中の9位である。さらに2017年の上昇は5.7%以下に収まる見通しだ。服装紡績業などは、中国産原材料の価格競争力が評価され、すでに中国生産の再拡大が実現している。

別方面からの中国需要も強い。それは日本の高齢化加速による企業の継承問題だ。帝国データバンクの調査によると、3分の2の企業は後継者問題で悩み、売上1億円以下の小企業では80%が悩んでいる。売上5億円、主要顧客はトヨタという優良自動車部品メーカーですら後継者がいない。今後こうした日本企業から中国企業への株式移転、経営権の取得は進む。多くの日本人と日本企業にとって2016年はターニングポイントとなるだろう。

中国駐在者の増える理由はなさそう

以上のように記事は、2012年9月の反日暴動から現在までの5年間の日中経済関係をコンパクトにまとめている。

この間、中国の日本製品買い、日本への投資はともに増加、それ以前の交易構造とは変化した。また日用品などの軽工業では中国自身もすでに東南アジアから調達する時代である。この状況で中国市場向け以外の日系工場が繁栄するとは考えにくい。

さらにコミュニケーションツールの発達は目覚ましく、日系各社はテレビ会議を連発している。いまさらフェイストゥーフェイスの時代でもなく、日本人技術者もバイヤーも、中国に駐在する必要性はこの方面からも減少した。2012年以前の状況にもどることはもうないだろう。

またSのような若者にはチャイナ・ドリームは訪れるのだろうか。中国政府は現在、駐在外国人のクラス分類を進めている。ABCの3ランクに分け、役に立たないCランクの外国人はいつでも追い出せる体制作りを目指す。あまり夢を追うに適した場所でもなさそうだ。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)

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