日本株投資戦略,決算発表本格化,上方修正,株価上昇,期待銘柄
(写真=create jobs 51/Shutterstock.com)

東京株式市場が落ち着きを取り戻してきました。日経平均株価は大発会の1/4(水)に479円79銭高した後、翌日には一時19,615円まで上昇しましたが、その後は下落に転じ1/18(水)には18,650円の安値を付けました。トランプ氏の保護主義的な貿易政策等が改めて警戒され、米長期金利が低下し、円高・ドル安傾向となったことが主因です。

短期的には英国のEU離脱問題が改めて、世界経済の不安定要因として意識される場面もありました。しかし、イエレンFRB(米連邦準備制度理事会)議長が、「19年末まで政策金利は年2~3回のペースで引き上げる」という見通しを示し、米国経済の強さが改めて認識されたことから、再び円安・ドル高となり、1/19(木)に日経平均株価は1万9千円台を回復しました。

今後も「トランプ大統領」の経済対策をどう評価するかは、市場の重要なテーマとなりそうです。イエレン議長が好調さを認めた米国経済は、トランプ政権による減税、規制緩和、社会インフラ投資等でさらに成長が進み、インフレの加速が予想されます。一方保護主義的な貿易政策が気になるところですが、それについても実現されればインフレ率上昇につながると予想されます。イエレン議長が予想したように、米国の利上げは当面継続するとみられ、その分ドルが上昇しやすくなり、日本経済や東京株式市場の上昇につながると考えられます。

こうした中、ホギメディカル <3593> が第3四半期決算を発表(1/16)し、東京市場における3月期決算企業の決算発表シーズン幕開けを告げました。企業の予想に反して円安・ドル高が進んだため、輸出企業を中心に、収益が予想以上となり通期業績予想を上方修正する企業も増えてきそうです。業績予想上方修正を契機に、株価が大きく上昇する銘柄も出てきそうです。

そこで今回の「日本株投資戦略」では、3月期決算企業の第3四半期決算発表シーズンを迎え、業績予想の上方修正・株価上昇が期待できそうな銘柄をスクリーニングから抽出し、ご紹介することとしました。

上方修正・株価上昇が期待される銘柄はコレ!?

それでは早速、「業績予想の上方修正・株価上昇が期待できそうな銘柄」を抽出すべく、スクリーニングを行ってみたいと思います。スクリーニング条件は以下の通りです。

(1)東証に上場する時価総額1千億円以上の銘柄(金融は除く)であること
(2)3月期決算銘柄であること
(3)業績予想を行っているアナリストが2人以上いること
(4)17/3期の営業利益について、市場予想が会社予想を10%超上回っていること
(5)直近4週間で市場予想EPSが1%超上昇していること
(6)市場予想営業利益が17/3期から18/3期に10%超の増益見通しであること
(7)予想PER(市場予想ベース)が33倍(日経平均の予想PERの2倍)未満であること

これらの全条件を満たした銘柄を「決算発表予定日」順に並べたものが表1となっています。なおここでの「市場予想」とはそれが市場コンセンサス(Bloombergが集計)であることを示しています。

上記のスクリーニング条件の中で(4)は重要な項目であると思われます。複数のアナリストが企業を調査・分析し、業績予想を行いその平均が会社予想を上回っているのであれば、会社の業績予想が上方修正される可能性は相対的に大きいと考えられるためです。そしてさらに(5)の条件を満たしていることで、すなわちアナリストの業績予想数値が過去約1ヵ月で上昇していることで、業績予想の鮮度が高いものも含まれていることを示していると考えられます。

なお、17/3期の予想営業利益が増益か否かはスクリーニング条件にしませんでした。一時に比べドル・円相場が円安・ドル高方向に動いたことは確かですが、第3四半期までの累計(2016/4~12期)ではいまだ、ドルの対円相場が前年同期比で12%ほど安いためです。17/3期の輸出企業の多くは前期比減益にとどまるとみられるため、この期に増益予想であることを条件にしてしまうと、輸出企業の多くを除外してしまうことになると考えられます。

ただ、17/3期の為替相場が減益要因となりやすい分、18/3期は輸出企業を中心に増益率が高まると期待されます。また、仮に17/3期の営業利益予想が上方修正されても、4月以降に始まる18/3期に成長が見込めない銘柄の場合は、株価上昇が限定的になってしまう可能性が大きくなると考えられます。これらから(6)にある通り、18/3期は高めの増益率をスクリーニング条件にすることが妥当であると考えられます。

業績予想上方修正も期待される主力銘柄

為替が逆風から追い風に転じた企業に投資チャンスか?

前項でご紹介した表1には複数の自動車メーカーが含まれています。多くの自動車メーカーは円安が利益の上積み要因になるためです。例えば我が国を代表する企業の1社であるトヨタ自動車 <7203> は17/3期、1ドル103円という前提で1兆7,000億円の営業利益を計画していますが、このままいけば会社が想定していた水準以上の円安・ドル高になる見通しであり、営業利益は上方修正される可能性が大きいと考えられます。

ちなみに、企業業績をチェックする際に目安となる「期中平均為替レート」ですが、2016/4~6月期が1ドル107円98銭、7~9月期が102円37銭、10~12月期が109円62銭(以上Bloombergデータ・図1参照)です。仮に2017/1~3期が1ドル113円で推移した場合、2016/10~2017/3期(今年度下期)は平均で1ドル111円31銭、2017/3期(通期)では108円24銭と計算されます。トヨタ自動車の場合は通期で計画よりも1ドル5円程度、円安・ドル高に振れる計算です。ちなみに、富士重工業  <7270> の通期前提為替レートは1ドル104円で、こちらも想定より円安・ドル高になっています。

この他、通期の前提為替レートを1ドル100円としているローム <6963> 、任天堂 <7974> 、アルプス電気 <6770> なども利益が上振れしやすくなると考えられます。なお、一般的に輸出企業と言われている企業以外でも味の素 <2802> など、円高が響いて業績予想を下方修正した会社には出直るチャンスがありそうです。為替以外の業績変動要因にも要注意ですが、パナソニック <6752> 、富士フイルム <4901> 、川崎重工業 <7012> など「円高で下方修正」となっていた企業にもチャンスはありそうです。

なお、ここでの注意は、図1にもあるように、2016/10~12期のドル・円レートは前四半期よりは円安・ドル高になった反面、前年同期では円高・ドル安にとどまるという点です。2016/3期(通期)の平均為替レートは1ドル120円ですので、上記したように仮に今期の平均為替レートが1ドル108円になっても、減益要因としては残る計算です。

図1 図2 為替

決算発表スケジュールと注目点

図3は決算発表スケジュールです。1/23(月)には安川電機 <6506> の決算発表が予定されていますが、同社が市場コンセンサスとの比較や業績予想の修正等でどのような反応を示すかは、今後の決算発表シーズンにおけるムードを左右する可能性があり、注意が必要です。

1/24(火)には日本電産 <6594> の決算発表が予定されていますが、「名経営者」とされる永守社長の事業環境見通しなどには注目したい所です。1/26(木)にはファナック <6954> 、1/31(火)は村田製作所 <6981> の発表があり、スマホ業界やアップルの動向、中国のスマホ事情等の現状説明や見通しには注目したい所です。

なお、発表社数ベースでは2/10(金)がピークになりそうです。また、2/6(月)にトヨタ自動車 <7203> 、2/8(水)にソフトバンクG <9984> の発表があり、質的な面ではこの辺がピークになると考えられます。メガバンクについては、1/27(金)に三井住友FG <8316> 、1/31(火)にみずほFG <8411> 、2/3(金)に三菱UFJFG <8306> が決算発表を予定しています。

決算発表予定社数

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

鈴木英之
SBI証券 投資調査部

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