東京株式市場はやや波乱含みの展開となっています。11月の米大統領選挙でトランプ氏が勝利して以降、「トランプ・ラリー」と呼ばれる上昇相場が続き、日経平均株価は1/4(水)に昨年来高値を更新しましたが、その後はそれ以下の株価水準での推移を余儀なくされています。

ただ、株価上昇の勢いが衰えたことは、長期スタンスの投資家や、市場参加に乗り遅れたと感じる新規の投資家にとってはチャンスと言えるかもしれません。すなわち、配当や株主優待などの権利を享受しつつ、長期スタンスでの投資を考えている投資家にとっては、株価が安くなることは投資チャンスと映るかもしれません。

そこで、今回の「日本株投資戦略」では「2月株主優待銘柄」にスポットを当ててみました。これらの銘柄は原則2/23(木)に権利付最終日を迎えるため、今後「駆け込み」的な買い需要の増加で株価が上昇しやすくなってきます。ただ、マーケット環境が軟調になっている分、株価の上値が抑えられているとみられ、投資チャンスともいえる訳です。

「2月株主優待銘柄」はその多くが小売・外食企業であり、その優待内容も生活に密着したものが多いようです。株主優待銘柄数は134銘柄と、3月優待銘柄(735銘柄)に比べれば少ないですが、魅力的な株主優待内容を持つ銘柄が多いのが特徴です。それではさっそく、おもな「2月優待銘柄」をご紹介したいと思います。

投資家の関心が深い「2月優待銘柄」上位をご紹介?

それではさっそく、おもな「2月株主優待銘柄」をご紹介したいと思います。当社Webサイトから「株主優待検索」のページに入り、「優待権利確定月」の中から「2月」を選択します。対象銘柄は134銘柄です。表示された銘柄を「閲覧回数順」で並べ、その上位15銘柄を閲覧回数順に掲載したものが表1となります(2/2時点)。

ただし、最低投資金額では株主優待の権利を得られない銘柄は除きました。さらに、経営不安の要素がある「継続企業の前提」に付いて疑義が生じている銘柄も除きました。冒頭で触れたように、小売・外食企業が多く、生活に密着した株主優待が多いのが特徴です。また、配当政策についても「一株当たり配当」、「配当利回り」ともにご紹介しました。

株式投資の醍醐味は値上がり益を追求できることであり、銘柄選択や投資タイミングに注意することで大きな投資パフォーマンスをあげることが可能です。しかし、そうした狙いに反して思わぬ損失を被ってしまうことも少なくないのが株式投資の難しい所です。ですが、配当や株主優待の権利を確保し、値上がり益以外の何%かの収益も付加することで、投資パフォーマンスをさらに上げることが可能になると思います。

一般的に株主優待の権利を取りに行く投資は初心者向けと言われますが、中・上級の投資家にとっても、再考すべき投資戦略であると考えられます。

投資家が数多く閲覧している「2月株主優待銘柄」

※Bloombergデータ、会社公表データをもとにSBI証券が作成。予想配当利回りは、上期と下期の一株当たり配当を株価で割って求めた数値。一株当たり配当で斜体で表示された数字は予想。表1の銘柄はそのほとんどが2月決算のため、上期配当は実績、下期は予想となっていますが、8月決算銘柄では上期・下期ともに予想となっています。株主優待の内容は、最低投資金額で得られる権利の概要を示したもので、詳細や最低投資金額を超えた投資金額での優待内容等については、各社公式サイトでご確認ください。なお、表の作成に際して参考にした閲覧回数順や予想配当、株主優待内容は2/2(木)時点のデータに基づいていますので、今後変動する可能性があります。なお、壱番屋は決算期変更の影響で優待金額が通常の半分になっています。またビックカメラの8月末付株主優待は1,000円相当の買物優待券です。

配当と株主優待、総合して魅力の大きい銘柄は?

図1:コメダホールディングス(3543)・日足
図1:コメダホールディングス(3543)・日足

株主優待の権利を取ることを前提に、株式投資を検討する時に重要なのは無論、株主優待の内容です。多くの小売・外食店で使える金券をもらうのか、よく行く小売・外食店で使える優待券や割引券をもらうのか、それらと優待金額や投資金額を天秤にかけながら投資対象を決めることになります。

しかし、せっかく株主優待の権利を取りに行くのであれば、同じタイミングで権利が確定する配当についても考慮すべきではないでしょうか。配当と株主優待、総合して魅力の大きい銘柄は有力な投資対象になるでしょう。そもそも、安定して配当を出せる銘柄は業績にも一定の自信があるケースが多く、その分長期投資の対象に適していると考えられます。

図2:イオン(8267)・日足
図2:イオン(8267)・日足

コメダホールディングス <3543> と柿安本店 <2294> は予想配当利回りが2%を大きく超え、それだけでも魅力が大きめであるのに加え、株主優待も楽しめる銘柄であると考えられます。

なお、表1の「予想配当利回り」について注意すべき点は、その数字が、上期と下期の配当を両方とも受け取った場合の利回りであるという点です。従って、現在保有していない投資家が半期の配当を得ただけではその利回りにはならないことになります。その意味では、上記の柿安本店は中間配当がない分、これから投資する投資家にとっての配当面での魅力は大きいと言えるでしょう。

なお、東証一部の予想配当利回りは平均で1.69%(2/2現在)となっています。イオンモール <8905> やクリエイト・レストラン・ホールディングス <3387> 、吉野家ホールディングス <9861> などはその意味で、配当面の魅力は平均的かそれ以下であると考えられるものの、優待金額が大きめであるため、総合すれば魅力は大きいと考えられます。

図3:トレジャー・ファクトリー(3093)・日足
図3:トレジャー・ファクトリー(3093)・日足

「株主優待」ファンの投資家に安定した人気を誇っているのが小売大手のイオン <8267> です。新たに株主となった投資家には案内書が送付され、カードが発行され、半期100万円を限度とする買物金額に対し、保有株数に応じた割合で返金されるという仕組みになっています。最低投資金額での返金率は3%です。限度額100万円いっぱい使えば30,000円、50万円ならば15,000円返金される計算ですので、投資金額(2/2現在では16万円強)との比較で魅力が大きくなる可能性があります。

無論、あまりイオンの店舗を使わない投資家であれば魅力は低下することになります。また、半期で100万円使うというのも実際にはレアケースであると考えられます。イオンの株主優待の魅力は投資家により大きく異なってきそうです。

非常に個性的な株主優待を実施しているのがトレジャー・ファクトリー <3093> です。表1では「トレジャーチケット」としか表現できていませんが、要は3つの優待内容からなっています。

(1)オリジナルクオカード1,000円分
(2)プレゼント抽選券「トレジャーロト」
(3)買取金額アップクーポン券

このうち、(2)の「トレジャーロト」は

1等(抽選で5名) JCBギフトカード3万円分
2等(抽選で20名) 食事券ジェルグルメカード1万円分
3等(抽選で100名) クオカード2,000円分

と、運が良ければ抽選により一層大きな金額相当分の株主優待を受けられるのが特徴です。もともと、予想配当利回りも東証一部の平均以上が期待できますので、配当と総合した魅力は大きめであると考えられます。

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

鈴木英之
SBI証券 投資調査部

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