東京株式市場はやや軟調な展開が続いています。トランプ大統領が日本の金融政策を為替操作に当たると批判したことや、米雇用統計(1月)における賃金の伸び悩み等を背景に円高・ドル安となったことが大きな要因です。
こうした中で東京株式市場は、今後の外為相場や日米関係等に大きな影響を与えるとみられる日米首脳会談(2/10~2/11)や決算発表ピーク(社数ベースでは2/10)等の重要日程が通過となります。いずれにせよトランプ大統領の出現により、日米の経済的関係は激動期を迎え、株式市場が波乱となる場面も出てくると思われます。
ただ、そうした中でも、あまり政治的な動きに左右されることなく、着実に好業績を期待できる銘柄も存在しているようです。特に決算発表がピークアウトした2/13(月)以降は、好業績を期待できる「実力派企業」が見直されてくるタイミングになると考えられます。
そこで今回の「日本株投資戦略」では、足元の業績が市場予想(アナリスト・コンセンサス)を上回って推移している上、来期も好業績が予想される銘柄をスクリーニングにより抽出してみました。
3月決算企業の第3四半期決算発表が終わり、今期(17/3期)の業績についておおよその見当が付いてきた現在、市場の関心は次第に来期(18/3期)業績に移ってくると考えられます。今このタイミングで来期の好業績期待銘柄をチェックしておくことは、銘柄選別上、重要であると考えられます。仮に株価が波乱となった場合も、これらの銘柄については逆に買い場になる可能性もありそうです。
足元の業績が予想以上で来期も好業績が期待できる10銘柄をご紹介?
それでは早速、足元の業績が市場予想(アナリスト・コンセンサス)を上回って推移している上、来期も好業績が予想される銘柄をスクリーニングにより抽出してみたいと思います。スクリーニング条件は以下の通りです。
(1)2017/2/8までに第3四半期決算発表を終えた3月決算企業であること
(2)時価総額が1千億円以上(ただし銀行、証券、保険等の金融株を除外)の銘柄であること
(3)アナリストが2人以上業績予想を行っていること
(4)第3四半期累計(2016/4~12月期)の営業利益が市場予想を上回っていること
(5)通期(17/3期)の会社予想営業利益が市場予想を上回っていること
(6)来期(18/3期)の市場予想営業利益が10%超の増益見通しとなっていること
(7)17/3期の最終損益が黒字予想であること
(8)今期予想EPS(市場予想)が過去4週間で上昇していること
(9)来期予想PERが25倍未満であること
表1はこれらすべての条件を満たす企業を(6)における増益率の高い順に10銘柄掲載したものです。
(4)および(5)の条件により「足元の業績が市場予想(アナリスト・コンセンサス)を上回って推移している」銘柄を抽出することができます。さらに(6)の条件により「来期も好業績が予想される銘柄」を抽出することができます。なお(8)の条件が加わることで、選ばれた銘柄のアナリスト評価が総じて上昇していることがわかり、(9)の条件を加えることで割高な銘柄(すでに好業績を株価に織り込んでいる銘柄)を除外することができます。
好業績銘柄の投資ポイント
日銀短観(2016/12調査)によると、2016年度下半期の企業の前提為替レート(ドル・円)は1ドル103円36銭となっています。上場企業の多くも同下半期の為替レートについては1ドル100円または105円を前提とする企業が多かくなっています。
こうした中、トランプ氏が米大統領選挙当選後に円安・ドル高が進んだことを受け、2016/10~12月の平均ドル・円相場は1ドル109円台半ばとなり、企業の予想を超えた円安・ドル高となりました。これを受け、輸送用機器や電気機器、機械などの輸出産業の多くについて、同四半期の利益が計画を上回り、通期業績予想の上方修正も目立ちました。
電子部品各社も例外ではなく、主要大手6社のうち5社が業績予想を上方修正しました。太陽誘電 <6976> もその1社となってなり、足元の利益が予想を上回るペースとなっている上、18/3期も大幅増益が見込まれています。
電子部品と言えば「スマホ次第」という印象がありますが、ここにきてIoT向け市場が顕在化してきたことは追い風になると考えられます。TDK <6762> やアルプス電気 <6770> にも追い風は吹いていると考えられます。
「電線3社」と称される各社も、17/3期の業績予想の上方修正にとどまらず、18/3期も業績拡大が見込まれています。このうち、住友電気工業 <5802> は自動車関連事業が好調です。株価は図2にもあるように保ち合い放れの様相を呈していますが、自動運転分野でも注目できるだけに、中長期的にも目が離せない存在になりそうです。
また、古河電工 <5801> では光ファイバー子会社の業績回復が目立っています。巨額買収の後、業績不振で苦しんできた分野で利益が増えてきたことは朗報と言えそうです。なお、同社にとっても自動車の電装化は追い風とみられます。
人手不足が続く日本に加え、中国などでも製造現場の自動化ニーズが高まっており、産業用ロボット市場が好調です。日本ロボット工業会が1/26に発表した見通しでは、我が国の産業用ロボット出荷額は2016年の7,000億円(前年比3%増)から、2017年は7,500億円(同7%増)と成長する見通しです。
こうした中、安川電機 <6506> の業績が好調ですが、ファナック <6954> や不二越 <6474> にも活躍の余地はありそうです。なお、オムロン <6645> についても、中国で進む省人化などを背景に主力の制御機器の利益率が改善し、17/3期の営業利益が減益予想から増益予想に上方修正されています。なお、同社は最先端AIを搭載した車載センサーを開発するなど、AI分野でも活躍が期待されています。
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
鈴木英之
SBI証券
投資調査部
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