英単語,覚える,頑張らない
(写真=The 21 online)

英単語を「深める」覚え方とは?

英単語は、闇雲に丸暗記をしようとしてもなかなか覚えられるものではないし、覚えたところで「使える」ようにはならない。イングリッシュ・ドクターの西澤ロイ氏によれば、実は中学英語程度の基礎的な単語で、日常会話の8割はカバーできるという。にもかかわらず英語ができないのは、知っているはずの単語を真に理解し、使いこなしていないから。英単語を「深める」覚え方とはどういうことか。

学校で教わった学習法を一度手放そう

「私は単語力がないから英語が話せない」――そう考えて、まずボキャブラリーを増やそうと考える人は多いと思います。しかし、実は中学英語で習う1,000語程度で、日常会話の八割をカバーすることができます。

なぜなら、英語の基本的な単語は日本語よりも意味が広いからです。たとえば、「身につける」動作に対して、日本語だったら「服を着る」「帽子をかぶる」「ズボンをはく」などとたくさんの動詞が使われますが、英語ではすべて「put on」で表現できてしまいます。

つまり、ボキャブラリーを「増やす」必要がある人はそれほど多くはないのです。それよりも、既に知っている単語への理解を深め、使いこなせるようになれば短期間で英語が話せるようになります。

単語についての理解を「深める」には英語の感覚をつかむことです。そのためにはまずは学校で教わった学習法を手放すことが必要なのです。

英単語は「覚える」よりも「感じる」べきだ

学校英語では常に日本語に訳して理解することが求められてきました。要するに日本語のフィルターを持ったまま英語を見るということです。そうすると覚えることがどんどん増えていきます。覚えることが多すぎると、挫折の原因になります。

たとえば、leaveという動詞には「去る、出発する、残す、(置き)忘れる」などの意味があります。このように1つの単語につき、たくさんの日本語訳を覚えなければならないのが従来の学習法でした。

また「訳す=理解する」だと勘違いしている人も少なくありません。英語を見ると日本語に訳すクセがついてしまっているのです。

日本語で考えると、いろんな意味がありすぎてわけがわからなくなってしまいますので、これを日本語訳ではなく「感覚」でとらえなおす訓練をしましょう。

leaveは、「ある場所から離れる」という動作を表わします。どこかから離れることは、そこに残すことにもなる。だから「残す」とか「置き忘れる」ことも表すのです。このように感覚でとらえると、英語はすごくシンプルなものなのだとわかるでしょう。

「深める」べき単語は、品詞でいうと基本的な動詞と前置詞。前述したように幅広い意味がありますので、数十単語を理解するだけで、英語の世界が大きく開けます。基礎的な英単語は「覚える」のではなく、本来「感じる」べきものなのです。

脳は「短いカタマリ」なら苦もなく覚えられる

新たな英単語を「増やす」よりも、まずは知っているつもりで使いこなせていない基本的な単語を「深める」ことが重要だと、わかっていただけたと思います。そのうえで、よりいろいろなことを書いたり話したりするためには、語彙を「増やす」ことも必要になってきます。

実は、脳は3~5桁の数字や、3~5文字くらいの短い情報なら、苦もなく記憶できます。逆にいうと、なかなか覚えられないのは情報が長すぎてオーバーフロー(処理能力を超えてあふれること)してしまっているから。

たとえば、「271」という数字はすぐに覚えられますよね。では、「192967231487」はどうでしょうか。すぐには頭に入らないかもしれません。しかし、これを「1929-6723-1487」と区切ってみるとどうでしょう。かなり覚えやすくなったのではないですか。

これと同様に、長い単語は短く区切って覚える方法が有効です。たとえば、Wednesday(水曜日)なら、「Wed-nes-day」と区切ってみるだけで、つづりがずっと頭に入りやすくなります。

また、語幹や接頭辞、接尾辞などの語源を活用すると、単語の意味が分かりやすくなります。例えば、transfer(転勤する)という動詞の語源が「trans(越えて)+fer(運ぶ)」だと分かれば、ラクに覚えられませんか? また、語源つながりで芋づる式に別の単語を覚えていくこともできます。

さて、「覚える」ことよりも大事なのは記憶を定着させ「忘れない」ようにすることです。新しい単語は一度覚えたら、1、2時間以内に復習します。これを1日のうちに何度か繰り返します。この繰り返しが楽にできるようになったら、1日置いてから同じことをやってみる。1日空けても問題なく思い出せたら、2、3日空ける。このように繰り返せば記憶は効率的に定着させられます。

好きな分野を入り口に一点突破で学ぶ

語彙を「増やす」ために、多くの人が市販の単語集を買ってきて覚えようとすると思います。ですが、そのような単語集は誰かが覚えるべき単語を選んで作ったもの。そこには知らない単語や興味を持ちづらい単語も数多く載っていることでしょう。そうなると、覚えることが苦行となってしまいます。

私がお勧めするのは、覚えたい単語を自分で見つけてきて自分なりの単語帳を作ること。大変に思えるかもしれませんが、記憶効率は圧倒的に良いと思いますので、ぜひ楽しんでやってみてください。

脳は自分にとって大事な情報を記憶に残すようにできています。大事な情報とは「登場する頻度」や「興味や関心の度合い」が高いもの。つまり、あなたが興味や関心を持っている物事を脳は「自分にとって大事だ」と判断して記憶に残そうとします。

たとえば、プロレスが好きな人だったら、プロレスに関する単語を覚えれば良いのです。「それでは知識が偏るのではないか」と思うかもしれませんが心配いりません。

プロレスのことを語ろうとすれば文法や発音が必要になり、自然に学ぶようになります。プロレス好きの仲間ができれば、プロレスの話題はもちろんのこと、それ以外のことも話したくなるものです。そうなれば、結果的にバランスよく英語を学ぶことになります。

最初から「TOEICのために単語を覚えよう」などというところから入ってしまうよりも、「好きな分野」を入り口にした方が、上達は速いのです。

『頑張らない英単語記憶法』
西澤ロイ著/あさ出版

『頑張らない英単語記憶法』

脳の仕組みに合った覚え方さえできれば、天才的な記憶力を発揮したり、英語であれば楽々単語を覚えたりすることが誰でも可能なのです。TOEIC満点の著者が初公開。英単語を身につける、自由に使いこなす。

西澤ロイ(にしざわ・ろい)イングリッシュ・ドクター
1977年、北海道生まれ。TOEIC満点(990点)、英検4級。獨協大学英語学科で学んだ言語学に、脳科学や心理学も取り入れ、英語流の「発想」や「考え方」を研究、実践することで、大人だからこそ上達する独自のメソッドを確立する。研修・講座・独自教材等を通じ、5,000人に英語のノウハウを伝授。(取材・構成:石井綾子)(『 The 21 online 』2017年2月号より)

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