アスクル <2678> は2017年3月7日、2月に発生した埼玉県三芳町の物流倉庫火災について近隣住民向け説明会を開いた。岩田彰一郎社長らが登壇し、住民へ陳謝を行った。現状説明に留まる内容も多く、原因究明や火災の与える影響が分かるのはまだ先となる。
医師による検診や環境汚染について説明
2017年2月16日に発生した火災は同月28日の正式な鎮火公表まで10日以上掛かる大規模火災となった。近隣住民向け説明会では、医師による検診の実施の他、倉庫から3~4キロ地点の大気汚染調査は環境基準内であると説明された。敷地内の大気汚染調査や下水汚染調査の結果、火災原因については調査中となっている。今後も近隣住民に対して、丁寧な説明を継続して行っていく必要がある。
火災のあった「ASKUL Logi PARK 首都圏」は2013年に稼働を開始した。敷地面積約5万5000平方メートルの大型物流倉庫であり、2016年に稼働した「ASKUL Logi PARK 横浜」と並び、首都圏エリアの配送拠点であった。法人向け事業の他、個人向け事業の配送拠点でもあり、約7万種類の商品を保管していた。火災発生後は商品を横浜へ集中させる等の対応を行っているが、現在でも一部地域で配送日数が通常より掛かる等の影響が残る。
また、「ASKUL Logi PARK 首都圏」の雇用は守ると公表しており、従業員は同社の別の物流倉庫へバスで勤務する事が検討されている。
業績への影響も調査中
業績への影響についても、現在調査中となっている。2017年3月16日に予定されていた2017年5月期第3四半期決算(12~2月)は発表日未定へと変更された。アスクルはヤフー <4689> の連結子会社となっているが、ヤフーも連結決算への影響は未定であるとリリースしている。
アスクルのリリースによると、「ASKUL Logi PARK 首都圏」の帳簿資産額は約121億円となっている。一方で火災保険や運送保険の支払限度額は約46億円となっており、保険金が満額支払われたとしても、約75億円の損失となる。同社の2016年5月期の連結営業利益は約85億円であり、年間の営業利益相当額の損失が発生する可能性が高い。
また、首都圏配送を今後「ASKUL Logi PARK 横浜」のみで続ける事は厳しく、「ASKUL Logi PARK 首都圏」は建て替えか移転が必要であると同社は話している。今後はその費用負担も発生すると見られ、現在の設備投資計画が変更となる可能性もある。さらに建て替えの際は近隣住民からの反対が起こる事も予想され、説得や土地探しに時間が掛かる可能性もある。
アスクルの業績は火災前までは非常に好調であった。連結売上高はここ数年前年比10%程度の上昇を続け、連結営業利益も順調に伸ばしていた。設備投資にも積極的であり、全国で大型物流倉庫を次々と稼働させ、自動化を図る為の先端設備も導入している。今回の火災によって業績は一時的に揺らぐが、問題を早く鎮火させ、再び上昇軌道へ戻る事が望まれる。(ZUU online編集部)
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