全国に事業所を持っている会社であれば、転勤を伴う異動の頻度も多いでしょう。2017年の独立行政法人労働政策研究・研修機構「企業における転勤の実態に関する調査」によれば、国内転勤での年間一人当たりの転勤コストは「100~150 万円未満」が19.7%で最も高い割合となっています。

具体的にどのような費用が発生するのでしょうか。転勤に伴う費用について解説します。

転勤に伴う費用

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(写真=Room's Studio/Shutterstock.com)

なかでも大きいのは、新居への入居費用です。たとえば家賃が12万円、敷金・礼金が1ヵ月、前家賃が2ヵ月と考えた場合、50万円ほどのまとまったお金が必要です。

運送会社に依頼する際にかかる引っ越し費用は、荷物の数や距離によって大きく変わります。一人暮らしで2万円ほど、家族があり荷物が多ければ20万円ほどになることもあります。また、引っ越しに伴って新しい家具や家電を購入する必要も出てきます。

単身赴任であれば引っ越し作業はそう難しいものではありませんが、家族と本人で二重に住居費がかかります。また、家族のところに帰る際には交通費もかかります。

住宅補助制度がある企業ならば、手当てが新たに発生する可能性もあります。

実例にはどんなものがある?

・ 国家公務員の場合
転勤費用の実例として、転勤族といわれる国家公務員の手当についてみていきます。住居手当としての家賃補助は月額最高2万7,000円。単身赴任の場合は3万~10万円、家族が住む家との距離に応じて変わります。

地域手当は、赴任先地域の平均賃金に合わせて一定の割合を加えて支給するものです。最も高いのは東京23区で、二割が加算されます。民間との公平感を重要視する公務員ならではの制度といえ、一般企業で取り入れるとかえって地方勤務者から反発を招くかもしれません。他に地域性に関するものとしては、離島のような不便な地域の特地勤務手当、寒い地域に向けた寒冷地手当があります。

・ 民間企業の場合
2005年に発表された財団法人労務行政研究所の「国内転勤をめぐる最新実態」に、上場企業とそれに匹敵する企業の調査結果が記載されています。
回答があった企業のうち、84.7%が単身赴任手当(別居手当ともいいます)を支給しており、平均は4万円前後となっています。半数以上の企業が月に1回以上一時帰省のための交通費を支給しています。

前述の「企業における転勤の実態に関する調査」によると、引っ越し代金を含む支度料、交通費、社宅提供または家賃補助、帰省旅費は半分以上の企業が負担しています。

珍しいところでは、持ち家の借り上げ、子どもの転校費用、海外勤務者の家族の生活費を支給する留守宅手当といったものもあります。

企業は引っ越し費用を負担するべきか

労働基準法には、給与や休日出勤などの諸手当に関する基本的なルールが定められていますが、転勤費用に関する定めはありません。就業規則によって企業が定めたルールや労働契約によって企業と従業員が合意した内容が適用されます。

女性の活躍や多様な働き方がある現代では、転勤に関しても企業としての配慮が求められています。費用に限ったことではありませんが、育児・介護休業法では、労働者の介護や教育に関して配慮する義務を企業に課しています。

転勤に対する配慮はもちろん必要ですが、企業にとってどうしても転勤が必要な事態が出てくることもあります。そのような時にせめて費用面で助けることができれば、従業員からの信頼を強めることができるはずです。

企業の実態に合わせた家賃補助が必要

転勤に伴う費用には、交通費、引っ越し費用、単身赴任先の家賃などさまざまなものがあります。企業が全てを負担しなくてはならないわけではありませんが、引っ越し費用や交通費などは半数以上の企業が負担しています。多様な働き方が認められつつある現代、費用を含めた転勤制度を考えることが求められています。(提供: フクリ!

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