社宅は従業員にとって利益となるものですから、給与に近い性格を持っています。そう考えると、社会保険料や税金などに関係してくるのか気になるところです。社会保険、労働保険における社宅の取り扱いについて解説します。

社宅の提供を受けた場合、社会保険の計算では報酬に含まれる

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(写真=Photographee.eu/Shutterstock.com)

健康保険、厚生年金保険などを算定する際に必要な社会保険上の取り扱いについて説明します。会社から社宅を借りていると、現物給与として標準報酬月額に加算されます。

現物給与には住宅や食事、定期券などがあります。食事の場合は2/3以上の金額を従業員が負担していれば現物給与として取り扱われることはありません。社宅の場合はそのようなルールはなく、基本的に報酬として計算する必要があります。

次に、金額の計算方法について解説します。「 全国現物給与価額一覧表 」(以下、一覧表と呼びます)の金額に、居住部分の面積を掛けた数字を報酬に加算します。一覧表は「食事と住宅の社会保険上の現物給与として計算すべき金額」を、厚生労働大臣が都道府県ごとに定めたもので毎年改定されます。

この場合の「都道府県」とは勤務地を指します。例えば、県境に近いところに住んでいたとします。営業所が大阪府で社宅が兵庫県にある場合、大阪府の金額を一覧表から読み取り計算します。面積は居住部分のみが対象になります。

具体的には、寝室、書斎、居間、ダイニングなどは含まれますが、トイレや廊下、台所、玄関などは含まれません。一覧表には一畳あたりの金額が記載されており、一畳は1.65平方メートルに換算します。

計算の具体例(東京都の場合)

2017年4月以降に適用の一覧表を使って計算してみます。

・ 具体例
勤務先:東京都
借り上げ社宅:埼玉県
専用面積:30平方メートル(内訳:寝室などの居住部分が20平方メートル、トイレなどその他の部分が10平方メートル)

・ 一覧表の「住宅で支払われる報酬等」より、1畳あたり2,590円
・ 面積は居住部分20平方メートル÷1.65=12.121212……畳
・ 2,590円×12.1212……=31,393.9393……≒3万1,393円(1円未満は切り捨て)

このように、3万1,393円が標準報酬月額に加えられることになります。

自己負担分を給与天引きすると社会保険料を節約できそうですが、このように増額する部分もあるので注意が必要です。

労働保険は均衡手当を支給しているかどうかで決まる

労働保険(労災保険料と雇用保険料)における現物給与の取り扱いは、社会保険と異なります。厚生労働省によると、現物給与の具体的算定方法として次のように定められています。

【住居の利益が現物給与とされる場合】
・ 社宅等の住居施設が供与される場合
(住居施設が供与されない者に対して、均衡を失しない均衡手当が一律に支給されない場合は、現物給与として取り扱わない)

つまり、労働保険では原則として社宅は現物給与として取り扱われません。ただし、不公平感を払拭するために、社宅を利用しない社員にそれに代わる手当を支給している場合は、現物給与となります。現物給与となる場合は、社会保険と同様に厚生労働大臣が定める都道府県ごとの一覧表で計算します。

所得税についても抑えておく

所得税の取り扱いも異なります。固定資産税の課税標準額と建物の総面積から計算する「賃貸料相当額」以上を自己負担していれば、給与としての所得税課税はありません。社宅における社会保険、労働保険と所得税の扱いはそれぞれ異なるため注意が必要です。

社宅は給与計算の際に注意が必要

社会保険料の算定に必要な標準報酬月額を計算する際には、社宅を考慮しなければなりません。計算方法は特殊であり、借り上げ社宅の賃料や保有社宅の費用などではなく、厚生労働大臣が定めた金額と居住部分の床面積から算出します。

自己負担分を給与天引きにしたからといって、必ずしも社会保険料が軽減されるわけではありません。労働保険、所得税とはそれぞれ取り扱いが異なることにも注意が必要です。(提供: フクリ!

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