社宅に関する消費税の取り扱いは少し複雑です。基本的に住宅の賃料は非課税となりますが、付随する駐車場や修繕費、従業員の自己負担分はどのように取り扱えばいいのでしょうか。非課税となる理由についても解説します。

住宅は非課税、事業用は課税。だから社宅は非課税

Tax Exempt
(写真=KUMOHD/Shutterstock.com)

社宅の賃料を大家に支払った場合、消費税区分は非課税仕入として処理します。基本的に、事業者が国内で行う取引には消費税が課税されます。

しかし、消費税法上、法の趣旨になじまないもの、教育や福祉など社会政策的な配慮が必要とされているものは非課税とされています。そのうちのひとつに、「住宅の貸付け」があります。アパートを探すときに、賃料に消費税が加えられる物件を見たことがある人はあまりいないでしょう。

一方、事務所のように事業用の建物は課税対象となります。社宅は事務所ではなく、あくまでも人が住むための物件であることから非課税となります。

社宅か事務所のどちらにあたるかは、賃貸契約書の内容で判断します。マンションの一室を事務所として借りる場合でも、契約書に事業用と記載してあれば、課税仕入となります。最初に社宅として利用しており、事務所に変更する場合には、用途変更したことを契約書に明記しておきます。変更日以降は課税扱いになります。

事務所としての使用を認めない大家もいますので、事前に相談しましょう。契約書上は事務所として課税で処理していても、実態が住居となっていれば税務調査で指摘される可能性があります。現況の用途に合わせて変更することをおすすめします。

大家から借りた住居を会社が従業員に貸し付ける転貸の場合も同様に非課税仕入となります。一方で、入居期間が1ヵ月未満の場合は、課税で処理できます。長出張などでウィークリーマンションや旅館などを利用する場合には1ヵ月以上であっても課税扱いです。

主に借り上げ社宅の賃料について述べましたが、自社物件として建物を購入した場合には課税仕入となります。個別対応方式を採用している場合、従業員の自己負担がある場合は非課税売上に対する仕入となるので、仕入税額控除の対象にはなりません。

共益費、駐車場などはどうなるか

共益費は消費税の取り扱い上、家賃に含まれるため非課税となります。敷金・保証金、礼金も同様です。駐車場は基本的には課税扱いですが、自動車のある無しにかかわらず一戸につき一台分以上割り当てられており、家賃と別に請求されていない場合は非課税となります。

温泉やフィットネスなどの施設は、家賃と別に請求されておらず、入居者だけが利用できる場合に非課税となります。電気・水道・ガス代などは家賃と別に支払う場合、課税扱いです。
社員寮のように食事が用意されるというようなサービスが提供される場合、サービス部分は課税、部屋代部分は非課税になります。

原状回復に伴う修繕費や備品の購入費などは課税として処理します。管理人の給料や固定資産税など、もともと非課税または課税対象外となるものを除きます。個別対応方式では、従業員の自己負担がある場合は非課税売上に対する仕入となります。

従業員の自己負担分を処理するときには注意が必要

従業員の自己負担分は、消費税の計算上は売上として処理します。仕入のマイナスではありません。かかった費用の一部を立て替えるような経理処理には、総額主義と純額主義の2つがあります。前者は支払った費用と受け取った費用をそれぞれ計上する両立ての方法で、後者は差し引きの金額のみ計上する方法です。消費税は総額主義を採用しています。

これは、課税売上割合が変わることによります。消費税の納付額は売上から仕入を控除することで計算しますが、仕入の額を決める要素のひとつは、課税売上と非課税売上の比率である課税売上割合なのです。

社宅であっても住宅であることには変わらない

借り上げ社宅の賃料は、消費税非課税として処理しますが、用途が契約書に明記されている必要があります。駐車場や共有施設、電気代などは、家賃と区分されていれば課税扱いにできます。自己負担分を処理する時には、売上として処理するように注意が必要です。(提供: フクリ!

【オススメ記事 フクリ!】
ちゃんと答えられる?いまさら聞けない福利厚生と手当の違い
税金も保険料もお得に!現物給与のススメ
そもそも論!福利厚生って何であるの?
企業も社員もいいことだらけ!社宅のメリット6つ
知らなきゃ損する!社員寮の隠れたメリット