空き家の増加が社会問題化している昨今、これからマイホーム購入を考える人にとっては、「値下がりリスク」が心配のタネ。どうせ買うなら、資産価値が下がらない家を選びたいものです。

資産価値を維持できるのは、どんな家なのでしょうか。「住宅選びのプロ」の見方を紹介します。

空き家は800万戸超、さらに増加中!

マイホーム購入,資産価値
(写真=PIXTA)

空き家の増加が社会問題化しています。総務省統計局が5年ごとに発表している 最新の調査結果(平成25 年) によると全国の空き家数は820万戸で、5年前に比べ63万戸増加し、その総住宅数に占める割合(空き家率)は13.5%と過去最高を記録しました。

さらに2033年には、それぞれ2170万戸、30.4%になるという予測もあります( 野村総合研究所 )。

このような状況でマイホーム購入を検討するとき心配なのが、せっかく買った家が大きく値下がりしてしまうこと。住み替えの予定や賃貸に出す可能性がある場合はもちろん、たとえなくても、大金を払った家の価値が大きく下がったりしたらとてもガッカリしてしまいます。

いまの時代、値下がりしにくい家などあるのでしょうか。あるとすれば、どんな特徴を持っているのでしょうか。

雑誌『週刊住宅情報』の元編集長であり、webサイト「 マンション評価ナビ 」を運営する住宅選びのプロ、大久保恭子さんは、著書 『住宅選びのプロが教える 資産になる「いい家」の見つけ方・買い方』 の中で「家の資産価値を決める要因」を「立地」「建物」「売買のタイミング」の3つとしたうえで、「資産になる家」の見分け方を解説しています。そのポイントを紹介しましょう。

「生活のしやすさ」で見分ける

家という資産は「建物」と「土地」から成り立っています。また土地は、それがどんな場所にあるかという「立地」によって、価値が大きく変わります。

そこで質問です。「立地」と「建物」どちらが資産として重みがあるでしょうか。

答えは「立地」です。

建物には、どんなに丈夫につくったとしても必ず寿命があります。老朽化して住むことができなくなった家は、資産価値としてはゼロです。一方で土地は永久に利用できます。

ただし、通勤、通学や買い物に不便な土地に人は住みたがりませんから、そのような土地の価値は当然低くなります。反対に、日々の生活に便利な土地には人がどんどん集まって、そこに建つ家の資産価値は高くなります。

そんな「資産になる立地」は次のような視点で見分けます。

1.交通の利便性
複数の沿線・駅が利用できて通勤・通学などに便利。都心までの所要時間が短いところ

2.暮らしの選択肢の豊富さ
日常生活に欠かせないスーパーや銀行などの生活施設だけでなく、高度医療の病院、高水準の教育機関、劇場、美術館、人気レストランなど、より生活を豊かにする遊び・学び・健康・芸術機能が充実しているところ

3.閑静な住環境の維持
住宅地としての閑静さや街並み・景観の美しさが時を経ても保たれているところ

4.暮らしの安全・安心
地震や水害などの自然災害や公害、犯罪などが少なく、地域住民のコミュニティが良好な安全・安心に暮らせるところ

(『資産になる「いい家」の見つけ方・買い方』24~25ページより)

また、不動産市場では、駅からの徒歩時間を指す「狭域立地」よりも沿線、駅、街を指す「広域立地」が重視されます。最寄りの駅から少々遠くても、人気のある街の家のほうが資産価値を維持しやすいのです。

建物の「性能」を見分ける

家の資産価値は立地にもっとも影響されることがわかりましたが、建物を無視していいわけではありません。

建物には「性能」の違いがあります。「性能」とは建物の品質を示すもので、国が2000年に始めた住宅性能表示制度によって一般に知られるようになってきました。この制度は、建物を耐久性や省エネ性、維持・管理のしやすさなど10の項目で評価するものです。

大久保さんはそのなかでも、とりわけ 「寿命」と「可変性」に関わる性能が資産価値と結びついている 、と指摘しています。

建物の寿命は耐久性、耐震性で決まります。住宅性能表示制度の開始以降に建てられたマンションは、「コンクリートの劣化対策等級レベル」で最高ランクを獲得している物件が7割を超えています。その寿命は90年程度とされていますが、きちんとメンテナンスをして大事に使えば150年(!)くらいは持つそうです。それだけの長期間に渡って人が住める建物なら、資産価値が高いのもうなずけますね。

家選びの際には、その家の住宅性能表示が参考になります。ただし評価書の取得は任意なので、どの家にも住宅性能表示があるわけではないことに留意しましょう。評価書を取得できるのは、設計後と建築後の2回検査を受けた家で、2000年以降に建てられた家に限ります。

また、「可変性」が高い家は、時代や家族構成の変化に応じて間取りや設備を変えることができるので、資産価値が維持されやすいといえます。一般的に、リフォームやリノベーションの自由度は木造住宅のほうが高くなりますが、鉄筋コンクリート造の一戸建てやマンションでも、「スケルトン・インフィル(SI)住宅」であれば十分に対応可能です。

SI住宅とは構造躯体部分(S)と内装部分(I)が分離された構造を持つ住宅のことです。室内に構造壁がなく電気配線や給排水管の入れ替えもしやすくなっていて、家を、マッチ箱の内側だけを入れ替えるようにリノベーションできます。

SI分離のしくみ(185ページより)
SI分離のしくみ(185ページより)

ちなみに、2009年から認定が始まった「長期優良住宅」は、SI住宅の高い可変性を含む最高水準の性能を持つ建物です。ただし建築コストも高くつくため、普及率は一戸建てで6%、マンションでは1%にとどまっているのが現状です。

「買いどき・売りどき」を見極める

家の資産価値を、ときに立地や建物の性能以上に左右してしまうものがあります。それは、買うとき、売るときのタイミングです。

そこで質問です。家の買いどきは、景気の「良いとき」「悪いとき」のどちらでしょうか?

答えは「景気の悪いとき」です。

家の価格は、景気動向に応じて上下します。景気が悪いときに値下がりしている家を買って、景気が良く価格が上がっているときに売れば資産は拡大します。売買のタイミングは、家によって資産形成を考える場合にはとても重要なのです。

しかし、注意しなければならない点もあります。

まず、この原則が現在あてはまるのは、主に6大都市の中心部と周辺部、とりわけ東京都区部の家です。その他の地方は、景気変動よりも需要減の影響のほうが大きく、なかなか値上がりが期待しにくい傾向があるからです。

また、「売りどき」に売った直後には次の家を買うのは控えるべきでしょう。次に買う家も値段が高い時期なので、せっかく得た売却益が吹き飛んでしまうからです。景気の循環によって次に不景気になるまでの期間は賃貸住宅に住んで、購入を待ったほうが賢明です。

ただ、結婚や出産などのライフサイクルも考慮しなればなりませんし、景気予測の難しさは、大久保さんも「買いどき売りどきのタイミングを的確に予想することは、正直、現実的には難しいと思っています」と指摘する通りです。

とはいえ、ある程度の見込みを立てることはできます。大久保さんは本書で、自身の判断基準として3つの指標とその読み方をあげています。それは次のような式であらわされます。

買いどき=景気動向×価格動向×住宅の契約率

それぞれの指標は以下を参照します。

景気動向: 内閣府発表の景気動向指数
価格動向: 「不動産ジャパン」発表の相場取引動向
住宅の契約率: 「不動産経済研究所」発表の住宅契約率

たとえば、契約率は70%を目安に好不調が分かれるので、次のような見方をします。

「住宅価格はまだ下がっているけれど、景気は上向きに転じ、これまで売行き不調だった契約率が70%を上回るようになったら、住宅価格もそのうち上がるので、売りどきが到来」

といったように判断するのです。
(215ページ)

住宅需要が減っていくいまの時代でも、値上がりする家や、値下がり率の低い家を探すことはできます。プロの視点を参考にしていろいろな物件を見ていけば、「資産になるいい家」を見分ける目を養えることでしょう。(提供: 日本実業出版社 )

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