ドル円予想レンジ 112.00- - 115.20

「Fed sees economic slowdown as temporary (FRBは景気減速を一時的なものと見ている)」-。これは5/4の英紙一面だ。5/3のFOMCでは、景気に関して「1-3月期の景気減速は一時的な可能性が高く、金融政策の運営スタンスを緩やかに調整・・」との見通しを示した。

米第1四半期GDP速報値は前期比から減速し、3年ぶりの低い伸びで判明しているが、こうしたデータはあくまでも一時的なもので基調的な拡大傾向は変わらない、との姿勢である。5/11にはボストン連銀総裁(非FOMC委)から“年内あと3回の利上げ”、とした超タカ派シグナルも発せられた。

米利上げの先にあるものは何か

6/14のFOMCでは昨年12月、そして3月に続き、利上げ是非を巡る議論が予想される。シカゴFEDウオッチでの利上げ確率は83.1%(5/12時点)だ。では、利上げ期待を以て一本調子でドル高は進むのか。

筆者が疑問を覚えるのは1点。不透明なトランプ施策を睨みつつ成長の持続性、景気悪化の際の回避余地も見込んだ利上げ志向をイエレン議長が示せるのかどうかだ。イエレン議長の任期(2018年2月迄)を考えれば、ドル高・金利高、そして金融規制にも批判的なトランプ政権の意向を“忖度(そんたく)”する可能性も否定できない。

先日、FBI長官の解任問題が生じたが、こうした強権人事への萎縮、トランプ政権との衝突を避けるための自制がFRBにも働く、との見方である。また、仮に6月利上げ、となっても「その先に何があるのか」、とした懸念、米議会運営の難度や米通商代表部による対日強硬姿勢も想起すると、強気なドル買い円売りも躊躇せざるを得ないのではないか。

5/15週ドル円見通し

4月の対外対内証券投資データでは外国人投資家による日本株式投資は4カ月ぶりに買い越し、国内投資家による海外株式投資は2カ月ぶりに買いが上回った。外国人投資家からは日本株投資に伴うヘッジの円売り、国内投資家からは外貨転・円投の需給に繋がった筈だ。国内輸出企業群の為替予約が夏季以降へと峠を越している中では5/15週も前出の株式動向に伴う円需給が注視されそうだ。

上値焦点は5/9、10、11高値圏114.33-38、3/15高値114.90。期待値は3/10、14高値圏115.20-52。但し115円台到達には米10年債金利が2.5%意識の展開が不可欠とも推考。下値焦点は5/11安値113.44、5/9安値113.12。割れた場合は日足一目均衡表雲上限112.80-00を意識。4/17安値108.12から5/11高値114.38上昇後の38.2%戻し111.98留意。

為替見通し5-12

武部力也
岡三オンライン証券 投資情報部長兼シニアストラテジスト