オーナー社長と雇われ社長の大きな違いのひとつにコストに対するシビアさに違いがある。私は雇われ社長もオーナー社長も経験しているのでこの感覚に間違いはない。

トランプ氏は一見派手で金に糸目をつけないゴージャスなイメージだが、オーナー社長であるため意外にコストにシビアな面がある。

自分の会社であるオーナー社長の場合、かかるコストが高いか、安いか、妥当か、いつも目を光らせている。実際にあった話だが、自社ビルのトイレの蛇口修繕費に目くじらをたてていたオーナー社長を私はみたことがある。

しかし、これは当然のことなのだ。売上を上げるより、コストを抑えるほうが早く簡単で効果的だからだ。

オーナー社長は会社と自分のお財布は同じように感じているが、雇われ社長は自分の財布と会社の財布は別だと考えがちなのだ。

私の嫌いな言葉のひとつに、「経費になりますよ」という言葉がある。節税を理由にお金を生まない経費を計上しても、キャッシュアウトするだけの損金でしかない。

節税できても、お財布からお金が出て行って帰ってこなければ、経営者として失格だが、それがわからない人も多い。

このようにオーナー社長は自分の会社の経費に敏感になる。トランプ氏もオーナー社長なので、コストを抑えることに真剣なのだ。

実際、トランプ氏は下請け業者の請求額が高いと思うといちいち電話でクレームを入れていたそうである。(Bill Zanker, Donald J. Trump (著)The Art of the Dealより)

「リーズナブルコスト」 妥当なコストの見分け方

不動産投資
(写真=Thinkstock/Getty Images)

人任せではなく、自らコストをはじいていなければこのような交渉は出来ないのだ。しかし、トランプ氏は闇雲に工事費を値切っていたのではない。ここでトランプ氏がリーズナブルコストという言葉を使っている点に注目したい。

妥当なコストでなければ現実的でないと彼はいっている。とりあえず、ダメモトで値切ってみるという人もいるが、トランプ氏はそういうタイプではなさそうである。

では、妥当なコストをいったいどうやって見分ければいいのか? 実は慣れてくると、部材費や工事箇所がわかれば、工事日程と人件費の計算である程度工事費用の相場をはじくことができる。

この相場観を持っていれば、はじめての工事でも見積りや請求書を一見しただけでリーズナブルであるかどうかおおよそわかってしまうのだ。

しかし、実際には下請けや孫請け等のヒーラルキーが多く入ってくれば、それぞれの利益が加算されコストが膨れ上がる。こまめなコストのチェックを怠れば、利益を多く抜かれるのは世の常である。

筆者の例に 170万円の請求が19万円ちょっとに