世界中で実用化が着々と進む自動運転車だが、「自動運転車で自動車保険は値上がりするのか?」という議論が持ち上がっている。

ハイテク部品の修繕費用が高くつく点や、運転手とシステムに対する二重の保険が必要になるなど、「事故が減るから保険料も低くなる」という消費者の期待は、少なくとも当面、泡と消えそうだ。

エアバッグの取り換えだけでも45万円?

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(写真=Thinkstock/Getty Images)

自動運転車をめぐり、国際自動車メーカーやテクノロジー企業が入り乱れての開発合戦が繰り広げられている近年。

「自動車事故の9割が人為的エラー」というデータに基づき、「安全性の向上」が自動運転車のメリットのひとつとして挙げられることが多い。自動運転車によって事故のリスクが軽減するのであれば、理論上、保険料が値下がりしてもおかしくはない。

しかし現実はそう甘くはないようだ。エアバッグやセンサー、LKAS(レーン・キープ・アシスト・システム)といったハイテク装備な自動運転車が事故を起こした場合、その修繕費用は非常に高くつく。エアバッグひとつをとっても、1000ドルから4000ドル(約11万円から45万円)が相場だ。

つまり自動運転車でなくとも、「ハイテク装備な車=修繕費が高い」という図式から、保険料が跳ね上がる可能性は十分に考えられる。

例えばBSM(ブラインド・スポット・モニタリング)などを搭載したトヨタの新型カムリのテクノロジー・システムは、総額3750ドル(約42万円、nydailynews.comデータ )。これを補償するとなれば、格安保険では限界があるだろう。

バフェット氏「自動運転車は保険会社の脅威」

KPMGは最新のレポートの中で、2025年までに自動運転車が一般家庭に普及すると推測してしており、それにともない修繕費が現在の1万4000ドル(約159万円)から、2040年には3万5000ドル(約396万円)に達すると見こんでいる。

しかし調査に協力した保険会社の84%が「事故件数が減る」、71%が「一件当たり保険料は低くなる」と回答したが、68%が「保険引受受益に変化はない」と楽観的に構えている。
前述したような修繕コストの変動を考慮にいれて考えると、若干楽観的過ぎる印象は拭えない。

またウォーレン・バフェット氏 は、「自動運転車は保険市場の脅威となりかねない」と、CNBCのTV番組で発言している。「事故件数が減れば保険の必要性が低くなり、結果的には保険料金を引き下げざると得ない」との見解だ。

運転手とシステム、2種類の保険が必要?

以前から焦点の当たっている、「自動運転車の責任範囲」はどうなるのだろう。英運輸省 などは「自動運転モード中に起きた事故は、保険会社の責任範囲」と定義し、「運転手と自動運転システムの両方に対する補償を、保険会社はカバーする必要がある」と発表した。

つまり運転手が自ら運転中に起きた事故では運転手を、自動運転システムのエラーが原因で起きた事故では自動運転車を補償するというものだ。保険会社は二重保険を提供することになり、必然的に保険料が引き上がることになる。

早期から自動運転車をめぐる保険問題を議論していた英国保険協会(ABI)は、「長期的には保険料が低くなる」との期待を示すとともに、「将来的に自動車保険会社は、現在とは違った形で自動車の未来を担う役割を果たすことになる」と、自動運転車の登場をポジティブな機会として大いに歓迎している。(アレン琴子、英国在住フリーランスライター)

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