京都市の歴史的な街並みを象徴する京町家の解体が相次いでいる。市が市内を調査したところ、過去7年間で5600軒以上が失われたことが明らかになった。実に1日当たりざっと2.2軒のペースで消えている計算になる。

京町家の保全、活用を目指す有識者会議(会長・高田光雄京都美術工芸大教授)は町家の改修費補助増額や所有者の税負担軽減を求める答申を門川大作京都市長に提出した。市はこれを受け、条例案を策定し、早ければ9月議会で提案したい考えだ。

過去7年間で5600軒以上が取り壊し

町家,京都,地方創生
京都情緒を漂わせ、観光客に喜ばれている京都市東山区新橋通の京町家。市全体で京町家は過去7年間に5600軒以上が失われた(写真=筆者)

市まち再生・創造推進室によると、調査は2016年9月から2017年3月にかけて実施された。2008、2009年度の前回調査では、1950年以前に木造の伝統軸組構法で建築された京町家を4万7735軒確認していたが、その残存状況を外観調査するとともに、居住者らを対象にアンケート調査した。

調査場所は戦前に市街化された上京、中京、東山、下京4区のほぼ全域と北、左京区の一部、伏見区の旧市街に、若狭、西国、伏見、鳥羽などの街道沿いを加えている。

その結果、残存していたのは4万146軒で、建て替えや取り壊しで失われた京町家が5602軒あった。ほかに、路地奥などにあって調査できなかった京町家が1987軒出た。年平均の減少率は1.7%。前回調査の際に過去の調査と比較した減少率が年1.6%で、ほぼ同じようなペースで京町家が失われていることが分かった。

現存する京町家を電気メーターの動きや表札の有無などから推計した空き家は5834軒で、全体の14.5%を占めた。前回調査時点の空き家率10.5%から4ポイント増え、2013年時点の市全体の空き家率14%に近い数字が出ている。

市まち再生・創造推進室は「このまま減少が続けば、京都ならではの風情が脅かされる事態になりかねない。調査結果を詳細に分析し、京町家の保全、継承を進めたい」と危機感を口にした。

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