「株式投資で儲けている人は、どんな人ですか?」この疑問に対して、なんとなくイメージしたことはあっても、具体的に理由をしっかりと考えた方は少ないと思います。株式市場では、長期投資と短期投資では投資方法がまるで別物ですから、まずは短期投資について考えてみましょう。

(本記事は、堀哲也氏著『日本株独学で60万円を7年で3億円にした実践投資法』日本実業出版社(2016/12/27)の中から一部を抜粋・編集しています)

短期投資は世界中の投資家と相手の富を奪い合う戦場

株式投資,お金を増やす
(写真=PIXTA)

短期投資で成功している投資家というと、株価が上がる前に仕込んで、何か材料が出て株価が上がった時に売ることができる人というのが、ぱっと思いつくイメージではないでしょうか。

では、その株価が上がる材料を事前に誰もが知っていたらどうでしょう。

当然、材料が出る前にみんな買いますよね。逆に、材料が出た後に株を買う人はほとんどいないはずです。そして、現実問題として、株式投資というものは、株式を買いたい時は誰か売ってくれる人がいないと買うことができませんし、売りたい時は誰かに買ってもらわないことには売ることができません。

逆に言うと、株式投資で儲けるためには、安値で売ってくれる人と高値で買ってくれる人がそれぞれ必要だということになります。ですので、材料を事前に誰もが知っていれば、株を高値で買ってくれる人なんていませんので、その材料で儲けることはできないことになります。

結局のところ、株式投資で全員が同じように儲けることは不可能だということです。

こう言うと、当然のことながら、長期投資であれば、全員が配当で儲けることができるのではないかという反論があると思います。

大きな資金があり、その大部分を配当のための株式購入に充当するような長期投資であれば、確かに真実ではあります。ただ、本書の趣旨として、数年程度の短期間で億単位の資産を形成することを念頭に書いていますので、そのレベルの長期投資は別物と考えてください。そのような長期投資を除外すれば、株式投資で全員が儲けることはできないということです。

つまり、短期投資で儲けるためには誰かに株を安く売らせて仕込み、誰かにババ(高値の株)を買わせなければならないわけです。どれだけの人が、それを実行できるのでしょうか。過半数の人ができることはあり得ません。過半数の人が同じ意見を持ってしまえば、株価はその意見に収斂(しゅうれん)し、市場評価と本当の評価の歪みなどなくなってしまうからです。ですので、周りと同じ意見を持っている人は市場の歪みを見つけることができず、儲けることができないのです。

そうです。株式投資の世界で、そして短期投資の世界で勝ち残るには、他の投資家が買いたくなる株を先んじて買い、そして、いずれ誰かに高値で買ってもらわなければなりません。株式投資の世界というのは、中でも短期投資の世界は、世界中の投資家が相手の富を奪い合おうと争っている戦場なのです。

あなたが株式投資で儲けるためには、その戦場の中で勝ち残らなければなりません。このことをしっかりと認識したうえで、株式投資に臨んでください。

『日本株 独学で60万円を7年で3億円にした実践投資法』日本実業出版社(2016/12/27)画像をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします
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市場の歪みが認識されるきっかけが出た時に株価が上がる

「株価は、どういう時に上がるのでしょうか?」

株というものは、どう考えても高すぎるのに上がり続ける株もあれば、割安でも全然上がらない株があります。では、株価はどういう時に上がるのでしょうか。まずは、株の取引そのものの簡単なしくみについて考えてみましょう。

株を売買するには、売買の相手が必要になります。つまり、自分がA社の株を1000円で1000株買いたいとします。その時に、世界中のどこかに、A社の株を1000円以下で計1000株以上売りたい人がいないと買うことはできません。逆に、株を売る時も同様で、A社の株を1100円で1000株売りたい時も、どこかに1100円以上で計1000株以上買いたい人がいない限り売ることができません。

さらに、どこかにA社の株を1000円で1000株売りたい人がいて、自分が1000円で1000株買いたいと思っていても、世界中のどこかにA社の株を1001円で買おうとする人がいれば、全部買うことはできません。買いたい人がたくさんいる場合、高値で買おうとしている人が優先されるためです。

市場の歪みを先読みする

このように世界中の人の買いたい・売りたいが集まって、株価が形成されます。そして、株価というものは、その値段以上で買いたい人とその値段以下で売りたい人の数が同じになるところに収斂します。株を売買する時の株価は、株を買いたい需要と、株を売りたい供給の両方(=需給)のバランスによって決まるということです。

こう考えてくると、株価が上がるということは、なんらかのきっかけでいままでよりも高値でも買いたい人(需要)が増えたということです。逆に言うと、株価が上がるためには高値でも買いたい人が増えるためのきっかけが必要であることになります。

先ほど、「株で儲ける人は株価の歪みに気づいている」と書きましたが、その人たちは、市場の歪みによりその株が上がることを事前に読んでいて、先にその株を買っている人たちです。そして、その後、なんらかのきっかけがあって、高値でも株を買いたい人が増えたために株価が上がり、儲けられるのです。

抽象的な話だとわかりにくいので、もう少し具体的な例で説明しましょう。

犯罪なので実際にはできませんが、インサイダー取引(業績の上方修正などの内部情報を事前に知って行う取引)の例がわかりやすいので、挙げておきます。ある会社のインサイダー情報を持っている人は、市場の評価と真の評価の歪み(違い) を知っていますので、事前にその株が上がる(あるいは下がる)ことを知っています。ですので、事前に情報に基づいてその株を買う(あるいは売る)ことができます。

この時点で、情報を知っているのは少数派です。しかし、その情報が公開されると情報を知っている人は多数派になります。そして、公開された情報により、その株を買いたい(あるいは売りたい)人が多くなり、株価は上がる(下がる)ことになります。もう1つ、はるか昔に通用した例ですが、日本経済新聞の朝刊に業績の先取り予想などのニュース(材料)が載ると株価が上がるというものがあります。

日本経済新聞で材料の出た銘柄を朝一番に買えば、昼には儲けて利益確定することができました。その当時は、日本経済新聞を読んで即投資する人が少なかったのですね。日本経済新聞の朝刊を見て投資する人は少数派だったため、朝一番の寄りつき(その日、最初についた価格)であれば、まだ上がっていない安値で株を買うことができました。

そして、午前中にニュースなど様々なメディアで日本経済新聞に掲載された材料が投資家に知れわたると、材料を見て買いたいという投資家が多数派になってきます。そして、買いたいと思う多数の投資家が一気に買って株価を押し上げることにより株価が上がるわけです。

いまでは、日本経済新聞の朝刊よりも早いメディア(有料)がありますので、この方法は通用しません。しかし、多数派よりも先に仕込み、その後多数派が株価を上げてくれることで自分が儲けることができるという構図はいまも昔も変わりません。要するに、この構図を想定して株の売買をすることが重要になります。

堀哲也
日本株式専門投資家。7年間で60万円の資産を3億円に増大させた日本株式専門の投資家。1971年生まれ。名古屋大学理学部数学科卒(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)