デイトレーダーなどではなく、中長期の投資の場合は、銘柄の業績を見る必要があります。業績の見方については前章で説明しましたので、ここでは需給を判断するにあたり、見ておいたほうがよいポイントについて説明します。

(本記事は、堀哲也氏著『日本株独学で60万円を7年で3億円にした実践投資法』日本実業出版社(2016/12/27)の中から一部を抜粋・編集しています)

チャート、出来高、信用残高をみる

株式投資,お金を増やす
(写真=PIXTA)

といっても、見るべきポイントは3つだけです。「チャート」と「出来高」と「信用残高」です。チャートと出来高については、本章の後半で具体的に説明しますので、ここでは信用残高の意味と考え方について説明しておきます。

信用買い残高は、借金をして株を買っている人の株数で、信用売り残高は、人から株を借りてその株を売って(空売り)いる人の株数です。この残高については、日証金(日本証券金融)分は毎日発表され、東証全体では1週間に1回残高が発表されます。わざわざ借金してまで株を買うわけですから、確実に永久保有ではない投資と言えます。

そのため、買い残であれば売り決済の、売り残であれば買い戻しの、反対決済がいずれ必ず行われることになります。そのため、日々の出来高に比べて極端に信用残高が多い銘柄は、今後反対売買の予約が入っていることを覚えておきましょう。

それ以外に、大口投資家等の空売り残高も発行株式数の0.5%を超えるとしばらくして公表されますので、 http://karauri.net/ などの空売り情報のサイトでチェックしておきましょう。とはいえ、大口の場合は空売りしながらも現物の株を同時に保有していることもありますので、その点は注意しておきましょう。

さて、信用残高についてわかりましたので、それ以外の中長期の需給を判断する方法を説明していきましょう。

考え方の根本の部分はデイトレーダーの時と同じです。それは、他の投資プレイヤーが何を考えているのだろう、と常に考えることです。

株の売りと買いの需給は、自分以外のプレイヤーの意志によって決まります。ですので、他のプレイヤーが、いまどういう状況で、何を思っていて、どうしたいのか、それが読めれば、自然と需給が読めるようになってきます。

とはいっても、比較的シンプルなデイトレーダーと比べ、もっと長期的な他のプレイヤーの考え方は複雑で、一律の説明で対応するのは難しくなります。

そこで、次の項からは、いくつかのパターンに分けて事例を説明します。ここで述べた以外のパターンについても、同じように他のプレイヤーの考えを読むようにしてみてください。そして、それが当たっていて自分がそれを踏まえて行動することができるようになれば、富を奪い合う株式投資の世界で勝ち残ることができるようになってきます。

『日本株 独学で60万円を7年で3億円にした実践投資法』日本実業出版社(2016/12/27)画像をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします
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「仕手株」における需給と株価の動き方

まずは、考えを読むべき対象が少ないため、比較的わかりやすい仕手株(複数の仕手筋のこともある)の需給と株価の動き方について考えてみましょう。特に、仕手株は危険な銘柄でもあるので、すべての投資家がその考え方と、株価の動きを知っていたほうがよいと思います。

最初に考えるべきことは、仕手筋が何を考えているかということです。「狙った株を安値で仕込んで、吊り上げて高く売りたい」──これが仕手筋の目的として考えていることでしょう。

次に、どうやって狙った株を安値で仕込みたいのかを考えてみます。株を集める時に困るのは、他の誰かが横から買いにやってくることです。そして、株価が目立って上がったり下がったりすると、値動きを嗅ぎつけてデイトレーダーが寄ってきます。仕手筋としては、仕込んでいるうちは彼らを避けたいところです。ですので、大きな値動きをしないようにしながら集めないといけません。

さらに言うと、株を安値で集めるためには、いま持っている株主に底値で株を売ってもらわなければなりません。どうしたら、その株を持っている個人投資家に株を売ってもらうことができるでしょうか。

例外もありますが、売ってもらうためにはこの株はもう上がらない、持っているともっと株価が落ちていくと思わせることです。そのため、株価を微妙に動かして株価を横ばいか少しずつ落としていきます(違法に近い行為も見かけますが、証拠をつかませるような仕手筋は滅多にいませんし、富を奪い合う戦争なのですから、これくらいは当然やってくることは想定しておくべきです)。

その結果、もう上がらないと思った個人投資家が、その株を売却していきます。1日に売られる株の量は少ないでしょうが、仕手筋は、時間をかけてその売りを丁寧に拾っていきます。あまり株価を下げすぎて割安株狙いの長期投資家に買われたりしても厄介ですので、株価を下げすぎるわけにはいきません。逆に言うと、優良割安株が仕手株になることはまずありません。

結果として、仕手株の仕込み時期の株価は低迷または緩やかに上昇、そして出来高は少ないという状態が一定期間続きます。この期間は仕手筋が株を集めるまでの時期だったり、仕手筋が株価を上げる名目に使う材料待ちだったりしますので、期間はケースバイケースでまちまちです。

ただし、出来高を完全にカモフラージュすることは困難で、仕手筋が仕込み始める前と仕込んでいる最中で比べると、出来高が少し増えている時もあります。出来高低迷でも以前よりも少し多めという場合は、仕手株の可能性は高まります。

そして、株の仕込みがおおむね完了し、残りわずかとなってくると、今度は持ち株を少しでも高く売ることを考えなければいけなくなります。この段階までくれば、株価を上げても問題なくなってきます。

むしろ、将来的にチャートで売買するテクニカル投資家を呼び込むために、株価上昇に都合がよい、いかにも株価が上がりそうなチャートを作りに来ます。仕手筋は、その頃には浮動株のかなりの部分を保有していますから、いくらでも株価に影響を与えることは可能です。

そして、仕手筋というのは、並行して株式の情報屋をやっているところも多いです。過去に推奨したこの株が何パーセント上がったとか、実績をたくさん出しているところ等ですね。情報屋も行っている仕手筋の場合、この段階で会員である顧客に自分が仕込んだ銘柄がもうすぐ上がると情報を出します。

情報を買っている会員は、この段階で仕込むことができます。それにより株価が上がり始めたりすることもありますが、上昇チャートを作るためには自分よりも高値で株を買ってくれる人が必要ですので、むしろ好都合です。

そして、銘柄に何か材料が出るなどした時に、株価上昇の合図とばかりに、株価を上げ始めます。とはいっても、そのためには、誰かに株を高値で買ってもらわなければなりません。どんな投資家がこの株を高値で買ってくれるでしょうか。

割安株狙いの長期投資家?
ありえませんね。持っていることは少ないでしょうが、むしろ持っていたらここぞとばかりに株を売ってきそうです。

デイトレーダー?
出来高があり、値動きが大きければ買ってくれそうです。

テクニカル投資家?
多くのタイプがいますが、一般的に上がると言われるチャートの初動だと思わせることができれば買ってくれる人はいそうです。そのためには出来高を増やし、上昇チャートを作る必要があるでしょう。

となると、値動きを大きくしていき、出来高をふやして株が上がっていく上昇チャートを作ればいいということになります。それにより、デイトレーダーやテクニカル投資家に自分の持ち株を売ることができるようになります。彼らはまだまだ上がると思えば、高値でも買ってくれるからです。

そして、デイトレーダーやテクニカル投資家は一斉にはやってきません。この銘柄に、というより、上昇チャートの初動に気づいた人から順々にやってきます。そして、株価を吊り上げてくれます。

この段階まで来たら、上昇のきっかけとなったIR等がいかにもすごい材料なのだぞと、ヤフー!ファイナンスの掲示板等に書き込みをすることもあります。また、あちこちにその銘柄はいいという書き込みをして、その銘柄について宣伝します。

そして、その銘柄を知らなかったデイトレーダーやテクニカル投資家に銘柄の存在と上昇の流れを知らせ、高値の株価を買いに来てもらうわけです。この段階になると、株価も出来高も急騰していますので、チャートを見れば誰でも上がっていると一目でわかるようになります。

しかし、新たにこの銘柄を知って買いに来てくれるデイトレーダーやテクニカル投資家は無限にいるわけではありません。誰もが情報を知ってしまえば、新たに買う人はいなくなりますので、買い手が減って需給のバランスは崩れます。

そして、もうこれ以上は上がらないと判断すると、デイトレーダーが一斉に利益確定ないしは損切りの売りに走ります。こうなると売り手が大きく増えて供給超過となり、株価は一気に急落します。そのため、仕手筋はそうなる前の多くの人が熱狂的に買っている段階で持ち株をどんどん売っていきます。

全株を売るのはなかなか難しいですが、株価が2?3倍にはなっているでしょうから、半分も売れれば十分で、投資額以上を回収しつつ、実質的にタダ券となった株が手元に残ります。残りの株は、また次回の急騰仕手相場のためにとっておけば、いずれ2匹目のドジョウが狙えます。

では、どうなったら注意かというと、株価が1日の間にいままでにも増して上下するようになったら天井が近い合図になります。仕手筋がデイトレーダーに動きが良いぞと言って高値の株を押しつけているのですね。この段階になるとテクニカル投資家は手を引き始めますから。

典型的な仕手株は、おおむねここで説明したような動きをしますので、チャート・出来高から一相場に参加する場合は、逃げ遅れないように注意しましょう。

堀哲也
日本株式専門投資家。7年間で60万円の資産を3億円に増大させた日本株式専門の投資家。1971年生まれ。名古屋大学理学部数学科卒(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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