イオングループの警備会社の男性(52)に、宿直の仮眠時間中の残業代の支払いを会社に命じる判決が出た。千葉地裁の小浜浩康裁判長が、原告の仮眠が「労働からの解放が保証されているとは言えない」として、請求をほぼ認めて未払い残業代と付加金の約180万円を支払うよう同社に命じた。

男性は残業代約100万円に、その後の配置転換を不当だとして慰謝料500万円を合わせた総額600万円余りの賠償を求めて訴えていた 。

「仮眠中も業務から解放されず」と認められる

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(写真=Stock-Asso/Shutterstock.com)

男性は2011年に「イオンディライトセキュリティ」に入社、都内や千葉市のイオン系列スーパーで警備の仕事についていた。特に千葉市内の店に働いていた13年1-8月は24時間勤務態勢で、30分の休憩時間と深夜4時間半の仮眠時間が与えられていた。原告側は「仮眠中も制服を脱がず、異常発生に際はすぐに対応できる状態の仮眠で、業務からの解放はなかった」と主張。裁判長はそれを認めた。

小浜裁判長は、配転の慰謝料については、「異動は業務上必要が合ったと認められる」として、請求を棄却した。

閉廷後会見した男性は「警備業界では同じ労働環境で働いている仲間が大勢いる。会社は判決に真摯に向き合ってほしい」と語った。一方会社側は「判決内容を精査して、適切に対応したい」とコメントしている 。

緊急事態に対応する警備員らは仮眠も労働時間内

今回の裁判で問われたのは、深夜勤務者について、労働時間の合間に取る仮眠時間が休憩時間になるかどうかである。雇い主は労働時間が6時間を超え8時間以内の場合は、少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与える義務を負っている(労働基準法34条1項)。

また仮眠時間が与えられても、その時間中に定期的な巡回が必要だったり、警報装置の作動や外部からの連絡への対応、 その他緊急事態などへの対応おしなければならない場合、「労働から解放されている」とは言えず、雇用者の指揮命令下にある時間すなわち労働時間となる。

過去に同様の判例も

2002年には「大星ビル管理事件」の最高裁第一小法廷で、労働時間と認める差し戻し判決があった。今回の判例と酷似しており求刑と仮眠を認める24時間勤務のビル管理会社の従業員の仮眠時間が問われたケース。外出は原則禁止され、仮眠室で待機するほか、電話応対や警報が鳴った際の対応が義務付けられていた 。労働からの解放が保障されておらず、休憩時間ではなく労働時間に当たると判断された。

一方で、ビル管理会社の警備員の仮眠時間について、実作業に従事する必要性が生じることが皆無に等しく、実質的に警備員として対応する義務がなかったとして、仮眠時間は休憩時間に当たると判断されたケースもある。東京高裁が2005年に判決したビル代行事件である。労働時間をどう判断するか、難しいところである。(長瀬雄壱 フリージャーナリスト、元大手通信社記者)