シンガポール・ダイヤモンド投資取引所(SDiX)が、ダイヤモンドのブロックチェーン取引の概念実証に向け、ブロックチェーン・スタートアップ、Kynetix と、ダイヤモンド取引のデジタル鑑定を行うEverledgerと提携関係を結んだことを明らかにした。

概念実証を通し、ブロックチェーンによる認証と安全な取引履歴サービスを確立することが目的だ。個人投資家など新たな顧客開拓も意識している。

世界初のダイヤモンド現物取引専用電子取引所、SDiX

SDiXは2015年、ベテラン起業家のアラン・ヴァンデンボーレ氏 や、ED&Fキャピタル・マーケットでエクゼクティブ・ディレクターを務めたレイ・ケイト氏などが立ち上げた、世界初のダイヤモンド現物取引を専門とする電子取引所だ。

品質や性質が個体ごとに異なるダイヤモンドは、一般的な商品取引には不向きとされており、価格は買い手・売り手の相対取引で決められることが多い。

閉鎖的な市場環境に加え、市場成長の頭打ちも懸念されていた。ダイヤモンドの需要は2015年を境に特に米国で伸びを見せているものの 、ドル高の影響で収益は落ち込んでいる。中国を含む新興経済の低迷も、価格を引き下げる要因となっている(ベイン・アンド・カンパニー調査)。

電子取引による透明性と利便性を前面に押しだしたSDiXの誕生は、伸び悩むダイヤモンド市場の拡大策として世界中の注目を集めた。金や原油といった一般的な現物取引と同様、個人投資家が気軽に投資できる環境が整ったわけだ。

英スタートアップ2社と提携 透明性・信頼性の高い取引システムを構築

この斬新な試みをさらに向上させる手段として生まれたのが、ブロックチェーン技術をダイヤモンド取引に用いるという発想だ。ブロックチェーンによって、取引の透明性を永久的なものに変化させる。

すでに同様の試みを成功させているEverledgerは、「ダイヤモンドの鑑定証や取引履歴をブロックチェーン化し、偽造や詐欺を防止する」というコンセプトに基づいて構築された、流通プラットフォームを提供している。

Kynetixはコモディティ市場向けソリューション・サービスで知られている。共に英国を拠点とするスタートアップだ。シンガポール政府と英国政府は2016年、国境を越えたFinTech促進を目指す意図で設立された国際プログラム「FinTech Bridge」を通し、提携関係を結んでいる。

概念実証では両社の技術やプラットフォームを用い、自動的にダイヤモンドの取引や所有者を更新する。

ダイヤモンド取引のデジタル化が主流となるか?

SDiXのリーナス・コーCEOは、今回の提携関係が「ダイヤモンド投資に信頼や透明性をもたらす」とし、大いに期待をよせている。

Kynetixのビジネス開発部門責任者、ギヨーム・ケンドール氏は、「こうした信頼を築くことが、コモディティ取引や融資に関連するリスクの軽減につながる」と、ブロックチェーン技術がもたらすとされる恩恵について述べた。

これまで個人投資家には手の出しにくかったダイヤモンド取引が、テクノロジーによって新たな局面を迎えそうだ。

ダイヤモンド取引所の中では、ベルギーのアントワープに取引が集中しているが、SDiXのようなテクノロジーを屈指しら取引所が登場したことで、今後老舗の取引所でもデジタル化の潮流が見られるかも知れない。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)

【編集部のオススメ FinTech online記事】
金融業界のビジネスパーソンはFinTechの進行に危機感を持たなければならない
最新の株価指数「FinTech指数」とは?
ロボアドサービスを公開したウェルスナビ「より使いやすい見た目や操作感を……」
CEATEC開催 MUFGが初出展、AIを活用したサービスを展示
「FinTech化が進む金融業界で活躍できる人材とは?」