仕事の「仕組み化」でミスはほぼなくせる!

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(写真=The 21 online)

ここまでの企業事例で、ミスを防ぐためにはマニュアルや、想定される状況に備えた仕組みが必要ということがわかってきたのではないか。そこで、ベストセラー『「仕組み」仕事術』の著者である泉正人氏に、仕組み化によってミスを防ぐ方法について詳しく教わった。

ミスが減らない理由は「メモ」にあった!?

仕事にミスはつきものです。「絶対にミスしないようにしよう」と意気込んでみても、うっかり、抜けモレ、勘違いといったミスが起こるものです。人がやることですから、ミスをゼロにすることはできません。

そこで私がお勧めしたいのは、人の能力に頼らない「仕組み」を作ることです。誰もが仕事ができる人と同じ手順で同じ成果を出せる仕組みを作り、組織内で共有すれば、ミスを最大限減らすことができます。

ここで改めて、「仕組み」とは何かを説明しましょう。仕組みとは、「誰が、いつ、何度やっても、同じ成果が出せるシステム」のことです。個人の「才能」「意志の力」「記憶力」に頼らず、誰でも再現できることが重要なポイントです。

代表的な仕組みの一つが、仕事の内容と手順を細かく書き出した「チェックシート」です。私が経営する会社では、あらゆる業務でチェックシートを活用していて、これがないと業務がたちどころに滞ってしまいます。

たとえば、私が代表を務めるファイナンシャルアカデミーでは、お金に関する正しい知識と教養を身につけるためのスクールを開校しています。教室を運営する際のチェックシートには、チェックすべき項目に加え、そのタスクについてすべきことを詳細に記しています。「電気をつける」「エアコンを適温に設定する」「マイクテストをする」などの項目に沿って進めていけば、誰でもミスなく運営できる仕組みです。

チェックシートを活用するメリットは、新人でも初日から経験者と同じレベルの仕事ができることです。作業手順を自分の頭で一から考えたり、記憶に頼ったりする必要がないからです。また、個人の経験値や判断が入り込む余地がないため、判断ミスも防ぐことができます。

先輩や上司の立場からすると、新人に仕事を教える手間と時間が省けるというメリットもあります。チェックシートを手渡し、その使い方を教えるだけで、OJT研修の代わりになります。

業務に関する必要事項はすべてチェックシートに書かれているので、新人がメモを取る必要もありません。この「メモを取らせる」という伝え方こそが、ミスを生む原因だと私は思います。なぜなら、理解力や解釈には個人差があり、メモに書かれる内容が人によってバラバラだからです。そのうえ、自分で書いたメモを見ても、教えられたように作業を再現できないことはよくあります。大事なことは、個人の才能に頼らなくても、ミスなく作業できるよう仕組み化することです。

「ミス撲滅委員会」で仕組みを進化させる

チェックリストどおりに作業を進めても、ミスが起きることはあります。そこで、仕組み自体を改善していくことが大切です。ミスが出たら、その原因と防止策を明らかにして、次からは同じミスが起きないようチェックリストに反映させます。それを繰り返しながら、業務をミスなく進めるためのノウハウを蓄積していくことで、仕組みの精度を高めていくのです。

そのためには、ミスを隠すのではなく、ミスを組織内で共有することが大切です。私の会社では、「ミス撲滅委員会」をつくってミスの報告を奨励するとともに、ミスの内容と防止策をオンラインの「ミス報告シート」で誰でも見ることができます。

仕組みがあれば、ミスを防止できるだけでなく、最小の労力で最大の効果を上げることができます。ぜひ日々の業務で活用してみてください。

泉 正人(いずみ・まさと)ファイナンシャルアカデミーグループ代表
一般社団法人金融学習協会理事長。日本初の商標登録サイトを立ち上げた後、自らの経験から金融経済教育の必要性を感じ、2002年にファイナンシャルアカデミーを創立、代表に就任。身近な生活のお金から、会計、経済、資産運用に至るまで、独自の体系的なカリキュラムを構築。東京・大阪・ニューヨークの3つの学校運営を行い、義務教育で終わらない「お金の教養」を伝えることを通じ、より多くの人に真に豊かでゆとりある人生を送ってもらうための金融経済教育の定着を目指している。(取材・構成:前田はるみ)(『 The 21 online 』2017年6月号より)

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