CEOは最高経営責任者ではない。当たり前のように使われる訳語に疑問の声が投じられた。声の主は経営競争基盤のCEOである冨山和彦氏だ。経営についての判断は取締役会で行われており、CEOは執行権を付託されているに過ぎないというのが、冨山氏の主張である。

CEOは最高執行責任者と訳すべき

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(写真=PIXTA)

CEOを最高経営責任者と訳するのは誤りであると、7月7日付毎日新聞の朝刊内コラムで冨山氏は語っている。憲法で国会が国権の最高機関であるのと同様に、会社における最高経営機関は取締役会である。CEOは取締役会から執行権を付託されているに過ぎず、最高経営責任者は取締役会であるというのが冨山氏の主張である。

CEOは最高執行責任者と訳すのが正しい語訳であると冨山氏は主張する。日本では最高執行責任者はナンバー2であるCOOに当てられているが、取締役会で決まった経営方針に基づき、執行についての最高責任を負うのはCEOであるという意見である。

冨山氏は日本でCEOが最高経営責任者と訳されている背景には、日本の企業で長い間、監督と執行が分けられていなかった事が原因にあるという。取締役会が経営者の部下で構成されている事が多かった日本企業では、CEOは経営方針まで全て独断で決める事ができるケースが多く、名実共に最高経営責任者であった。そうした企業統治に関する文化の違いが、誤訳を生んだというのが同氏の主張である。

米国との企業統治文化の違いが最高経営責任者という訳を生んだ