乃木坂46に『設定温度』というアルバム曲がある。一緒に暮らす男女のすれ違いや気づかいをエアコンの設定温度の差という視点から表した曲だ。この曲の歌詞のように、恋人や夫婦という関係性でさえ、設定温度がすれ違いの原因になり得る。これが他人の集まりである職場となれば、そこに問題が起こらないわけがない。
一般的に、男性は暑がりで女性は寒がりだと言われる。外回りから帰ってきた男性社員が勝手に室温の設定を下げてしまいデスクワークの女性社員たちから怒られる、という展開は、多くの職場で何度となく繰り広げられていることだろう。
ただし、男性にも冷え症の人はいるし、暑がりの女性だっている。ほぼ男性だけという職場に勤める知り合いに聞いたところ、男性だけでもやはり設定温度で揉めるのだそうだ。“男性vs女性”というよりも、“暑がりvs寒がり”“外回りvsデスクワーク”といった構図が正しいのかもしれない。
不毛な議論と設定変更の攻防
設定温度をめぐる議論は、毎年夏になると日本中の職場で繰り返されている。問題なのは、この議論のほとんどが不毛なことだ。「暑い」「寒い」と言い合っても、建設的な答えはなかなか生まれてこない。
昨年のデータではあるが「ビジネスパーソン1000名に聞く、夏のオフィスのエアコンに関する意識と実態調査」(三菱電機ビルテクノサービス、2016年6月調査)によると、こっそりと職場の設定温度を変更したことのある人が62.1%もいるという。
その中で、変更した温度が元に戻されていた経験がある人は73.7%、再び希望温度に設定変更をし直したことがある人が78.0%、という結果が出ている。
こっそり温度を変更したのに設定を戻されて、またこっそりと変更し、の繰り返し。これでは仕事も進まないだろう。議論を避けたとしても、結局、業務とは関係のないことに時間や労力を使ってしまっている。