会社が従業員に残業や休日労働を命じる際、事前に労働者の過半数を組織する労働組合(ない場合は代表者)との間で労使協定を締結することが労働基準法36条で定められている。この協定を「36(サブロク)協定」というのだが、4割を超えるサラリーマンがこのことを知らないというアンケート結果を、日本労働組合総連合会(連合)が2017年7月に発表し、話題となった。

長時間労働の是正などを目的とした「働き方改革」が政府主導で進められるなか、経営者にとっても社員にとっても、労働時間の適正管理は喫緊の課題だ。36協定を結ぶと残業時間はどこまで許容されるのか、また結ばないとどういうことになるのか、知らないではすまされない。いま一度、確認しておこう。

36協定とはこういう決まり!

労働事情,36協定
(写真=PIXTA)

労働基準法で、法定労働時間は1日8時間、1週40時間と決まっており、これを上回る労働(残業や休日出勤)をさせるときには「36協定」を結んで労働基準監督署に届けなければならない。

もし、36協定を結んでいない場合、この時間を1秒でも過ぎれば、即座に違法となる。36協定を結んだ場合でも、許容される時間外労働には限度があり、原則1カ月45時間、1年360時間を超えてはならない。

ここまでを普通に読めば、「これだとウチの会社はアウト」と感じる人も多いだろう。私も新聞記者時代は最低でも月に80時間は残業していたし、繁忙期には100時間を超えることも当たり前のようにあった。どんな抜け道が存在していたのだろうか。

それが「特別条項」と呼ばれるものだ。「顧客対応などでやむをえない場合は、100時間の残業をさせることがある」などと協定書に一定の付記をすれば、残業時間設定が可能になる。一応、「一時的または突発的であること」「全体として1年の半分を超えないこと」が歯止めとして設けられてはいるが、これは法律ではないため、違反しても罰則がない。残業時間が「青天井」になる魔法のような仕組みだ。

こんな抜け道があるなら、むしろ利用しない企業の方が珍しい。厚生労働省の平成25年度調査によると、36協定を結んでいるのは大企業94.0%、中小企業43.4%で、このうち特別条項付き協定は大企業の62.3%、中小企業の26.0%が結んでいる。しかも、延長時間数は実態よりも長めに設定することで違反にならないようにしている企業が多いようだ。

いずれにしても、これは厚労省の基準に過ぎないので労使ともに遵守意識が軽薄なのが実情だ。会社は社員に長時間労働を強いる一方、社員も保身と雇用維持のために唯々諾々としてきた。この積み重ねが、日本の経済成長を支えてきたと見ることもできるが、現代社会には合わなくなってきている。

処分はイエローカード何枚かの後に

こうした協定違反が発覚するとどんなペナルティがあるのだろうか。

処分としては、労働基準法第119条で「6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金」が適用されることになる。対象者は使用者のみで、労働者は当然、対象外だ。事業主のみならず、残業可否に関する権限を持っている上司などに当たる立場も、罰則が適用される。

ただ、違反行為が1回あったくらいでは、直ちに摘発されることはほとんどない。通常、労基署から是正勧告が出され、改善へ向けての措置を求められ、それでも改善されない場合に処分されることになる。

特別条項の上限時間、法制化。10年でガラリと変わる労働事情

政府の「働き方改革実現会議」の議論によって、36協定による時間外労働の限度を「月45時間、年360時間」とする原則を、大臣告示から格上げし、法律に明記することになった。特例を除けば罰則が科される。さらに、特例条項で定めることができる延長残業時間は、年間720時間、繁忙期は月100時間とする。これは労働基準法70年の歴史の中で画期的な改革だ。

政府は関連法改正案を一括で2017年の国会に提出し、2019年度の施行を目指す。2026年度までの10年で、制度導入の周知や改革内容の点検を進めるので、この10年は働き方に対する意識と実態はガラリと変わるだろう。入社したてのサラリーマンも10年後には部下を持つ立場になる。36協定をはじめとするルールワークについて、もはや無防備ではいられない。(フリーライター 飛鳥一咲)

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