厚生労働省の賃金構造基本統計調査によれば、2016年の一般労働者の所定内給与(残業手当など超過労働給与を除いた給与)は前年比横ばいにとどまった。
実は増えてなかった2016年の一般労働者の所定内給与
これを性・年齢階級別にみると、45~54歳男性と60代女性の賃金が下落していることがわかる。労働者数を勘案すれば、40代後半~50代前半の男性が最大の賃金押し下げ要因となっていることが推察される。背景には、バブル期前後の売り手市場で大量採用された世代であるがゆえに、昇進率の低下等により平均賃金が下がっている可能性が高い。
また、学歴別にみると、中高学歴(大学・大学院卒や高専・短大卒)の中高年男性の賃金が押下げに効いていることがわかる。こうしたことから、学歴による賃金格差が縮小する傾向にあることが読み取れるが、相対的に人手不足感が低いホワイトカラーの賃金が上がりにくくなっていることを示唆している。
一方、企業規模別にみると、大企業の男性賃金が全体を押し下げていることがわかる。これは、企業規模による賃金格差が縮小傾向にあることを意味し、相対的に人手不足感が強い中小企業の賃金が上がりやすくなっている可能性が高い。
さらに雇用形態別にみると、45~54歳男性、60代前半男性、60代女性それぞれの正社員の賃金が全体を押し下げていることがわかる。これも、正社員と非正社員の賃金格差が縮小傾向にあることを意味するが、60代正社員については定年延長等による賃金低下が響いていることが示唆される。