リクルート出身で現在LIFULL HOME'S総研所長である著者の島原万丈氏は都市の魅力を「官能」で評価すべきだと主張する。「官能都市」は住む人の幸福度を高めるだけでなく、イノベーションを生み出すインフラとしての可能性を秘めている。
『本当に住んで幸せな街 全国「官能都市」ランキング』
著者:島原万丈、HOME'S総研(※2017年4月よりLIFULL HOME'S総研へ組織名称変更)
出版社:光文社
発売日:2016年11月17日
都市の魅力度を測る新しい指標「官能都市(センシュアス・シティ)」
一般的に知られている都市の魅力度ランキングといえば、医療や教育などのインフラ環境の充実度が高ければ住みよいと判断したり、住みたい街のアンケートを取り投票数で決めるといったものだろう。しかし、これらの指標で実際に住んでみて良い街かどうかを判断するのは難しい。
本書が提唱する「官能都市」という考え方はこの欠点を補い、人間が肌で感じる住みよさで都市を評価する試みだ。なお、官能というと卑猥なイメージが浮かぶのだが、そうではなく「感覚器官の動き」という本来の意味から派生して「人間の五感に訴えかけるような」というニュアンスで使っている。
「官能都市」の詳細な判断基準は本書に譲るとして、調査の結果ランキングベスト3は、1位が東京都文京区608.0ポイント、2位が大阪市北区566.5ポイント、3位が東京都武蔵野市550.4ポイントで直感的に意外な都市が上位に入っている。
文京区は「共同体に属している」「歩ける」の項目で1位となり、ほかの指標も上位に入り総合評価で他を圧倒している。理由は、谷根千エリアが歴史と情緒を残しつつ、とにかく歩いて楽しい街だからだという。大阪市北区は「匿名性がある」「ロマンスがある」「機会がある」の項目で1位になっている。繁華街の梅田のほか、天神橋筋商店街や天満という良い意味で猥雑な場所が「官能」度を高めているのだろう。吉祥寺のある武蔵野市は「街を感じる」の項目で1位のほかバランスよくポイントを獲得している。
また、「官能都市」ランキングの調査対象都市全134都市の上位25%、下位25%、中間50%の3つの区分で居住の満足度や幸福実感度を調査すると、「官能」度が高い都市ほどそれらの値も高くなる結果となった。