NISAとは、日本在住の20歳以上であれば利用できる、2014年1月から開始した個人投資家向けの「少額投資非課税制度」だ。

通常、投資から得た利益には20.315%の税金がかかる。しかしNISAを利用すれば税金はゼロとなり利用価値のある制度といえる。

2018年1月からは、これまでのNISAに加え、「つみたてNISA」が新設されるが、違いがよく分からないという人もいるだろう。

現行NISAと「つみたてNISA」は選択制で併用はできない

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(写真=PIXTA)

新設される「つみたてNISA」の受付開始は2017年10月1日、運用商品も買付開始は2018年1月1日である。

日本証券業協会が参加するNISA推進・連絡協議会では、これまでの現行NISAも積立が可能だったため、混同を避けるため、新設される積立型のNISAは「つみたてNISA」と表記することにしたようだ。

NISA口座は1人1口座までの制限があり、現行NISAと「つみたてNISA」は選択制となり併用はできない。

特徴1 非課税となる期間は20年間

現行NISAの非課税期間は最長5年、「つみたてNISA」は最長20年間と異なる。

日々の値動きに一喜一憂せずに長期で資産を積み上げ、育てるための期間としては現行NISAの5年という期間は、長期投資の観点からは物足りなかったともいえる。

長期投資の期間としては10年以上を考えておくことが基本。その点では「つみたてNISA」は20年間という長期間、積立でコツコツと育てられる制度であり、今から将来のために資産を増やしていきたい若い世代には有効に使っていただきたい。

特徴2 年間投資上限額は40万円

現行NISAの年間投資上限額は120万円であるが、「つみたてNISA」では40万円となる。
月額でいえば「つみたてNISA」では約3.3万円までの積立が可能となる計算で、毎月の積立可能額に物足りなさを感じる人もいるかもしれない。しかし20年間というコツコツ積み立ての威力はあなどれない。

例えば、月3万円を「つみたてNISA」で20年間、積立投資を行ったとする。20年間の投資元本は720万円である。仮にこの20年間で2%の複利運用が達成できたとしよう。その場合、元本720万円に、約160万円の利益が上乗せされ20年後の受取額は約880万円だ。当然、約160万円の利益はNISA口座内での利益であるため税金はかからない。通常であれば利益に対して20.315%課税されるため約32.5万円が税金として差し引かれることになる。同じ運用成果でありながら最終受取金額に約32.5万円の差がでるのは大きい。

NISAでは、利益がでなければこの節税効果は享受できないが20年という長期投資期間があれば十分に期待して良い成果だろう。せっかく将来のための積立を始めるなら「つみたてNISA」は選択肢として第一候補にしていただきたい。

特徴3 買付方法は定期的でかつ継続的な方法による積立のみ

現行NISAは一括投資、積立の併用が可能であるが、「つみたてNISA」は積立のみとなる。

積立投資のいいところは、時間分散を可能にすることだ。時間を分けて、毎月定期的に運用商品を買い付けることで、安い時には多くの量を、高い時には買い付け量が少なくなるため、平均購入単価を下げる効果が期待できる。つまり、積立投資を継続することで高値掴みをしてしまうリスクを軽減する効果が期待できるということだ。

投資では、安い時に買い高い時に売れれば、勝つことができるということは誰もが考えることだろう。

しかし、安い時、高い時の判断が難しい。筆者も同様で、そのようないつが安いのか、高いのかの判断は難しい。投資の初心者は特にどうしても気持ちに左右されてしまうため、高い時に買って、安い時に売ってしまうという悪循環を繰り返してしまいがちだ。

そのような悪循環に陥らないように、「つみたてNISA」では積立のみの扱いとなっている。

特徴4 投資対象商品は長期積立、分散投資に適した一定の条件を満たす投資信託

現行NISAは国内株式、海外株式、投資信託等と購入対象商品は幅広い。

一方「つみたてNISA」は、運用方針や、手数料、分配金の頻度等に一定の基準を設けて、その基準をクリアした投資信託、ETFのみから選ぶことになる。これは一見、選択肢が狭く「つみたてNISA」のデメリットではないかと思われるかもしれないが、あえて選択肢を絞り込むことで、「決定麻痺」という心の罠への対処方法をとっているのだろう。

「決定麻痺」とは、選択肢が増えれば増えるほど何を選ぶべきか悩み、最終的には何も選ばない決定をする傾向になる心理のことを指す。金融庁によると現行NISAでの積立による利用者は総口座数の1割以下、また全体の口座の半数以上が非稼働口座の状態であるらしい。現行NISAの利用状況は選択肢が多いための決定麻痺による心の罠にかかってしまっている表れなのかもしれない。

今回の「つみたてNISA」の制度設計では決定麻痺による心の罠にかからないよう、投資初心者でもあまり迷わずに長期分散投資が可能になるような商品ラインナップとし、運用リスクの引き下げ効果も狙いながら、長期での収益が期待できるように商品を絞り込んでいるのだろう。

そのため、例えば一部のみの抜粋ですが投資対象商品には以下のような要件を設けている。

  • 信託契約期間が無期限または20年以上であること
  • 分配頻度が毎月でないこと
  • 指定されたインデックス(TOPIX、日経225等)に連動していること
  • 販売手数料は無料であること
  • 信託報酬は一定額以下であること

(出所:つみたてNISAについて、金融庁 平成29年6月)
前述のとおり現行NISAでの積立による利用者は総口座数の1割以下ということだ。筆者自身は今回の「つみたてNISA」には、特に運用期間が20年という部分にかなりの魅力を感じているのだが、かなり投資初心者を意識した制度設計となっているためこの1割以下というデータは改善されるのではないかと期待している。

寺野 裕子
てらの・ファイナンシャルプランニングオフィス代表 CFP ・1級FP技能士、投資助言業
2008年FP相談業務開始。2014年事務所運営スタイルを金融機関等からの紹介手数料等は一切得ず、報酬は顧客からの相談料のみとするフィーオンリーへ移行。「ファイナンシャルプランニングは100人100様」をモットーにライフプランの実行支援を行っている。 FP Cafe 登録パートナー