家の墓を引っ越しすることにしたら、寺から法外な費用を請求された――。こんな相談が国民生活センターに寄せられている。そもそも、葬儀や法事の際に僧侶に手渡す「お布施」自体、なんとなく包んでいるのがふつうで、根拠に乏しいものだ。そのあたりの事情を知っておくことで、お墓をめぐる金銭トラブルを回避できるかもしれない。

墓の移転で「寺に250万円、払ってください」?

お墓のお引っ越し
(写真=PIXTA)

「遠方の寺の檀家となっており、亡くなった両親の遺骨や先祖の位牌がある。高齢で、遠くまで墓参りに行けないので、遺骨等を家の近くの合同納骨堂に移したい。寺に問い合わせると『250万円支払うように』と言われた。支払うべきなのか」

消費者庁管轄で、消費者紛争について法による解決のための手続を支援する国民生活センターは2017年7月26日、70代女性からのこんな相談をウェブサイトに掲載した。相談者は高齢者で、なかなか長距離の移動も、多額の出費も厳しいそうだ。ただ、高齢者でなくても、都会に出てきた人はみなこのように、ふるさとに残してきた先祖のお墓についての問題からは逃れられないことだろう。

まず、「墓地、埋葬等に関する法律」で墓の移転に関するルールが定められており、許可なくやれば、罰則の対象にもなる。手続きとしては、古い墓の管理者である寺から「埋蔵証明書」をもらったうえで、新しい墓をつくる自治体に申請して「改葬許可証」を受け取ることが必要となる。この際、古い墓は撤去し、墓地は更地にしなければならない。

一方、遺骨は墓に入れなくてはならないという法律もない。このため一般に高価になる墓石への出費や墓の管理にかかる手間を嫌がる人たちには、墓をつくらない永代供養や海洋散骨、樹木葬のほか、遺骨の一部を自宅に置いたりアクセサリーに変形したりする手元供養などの手法が人気のようだ。

寺へのお布施に基準なし