税金、社会保険、高校授業料の無償化など、収入の額によって差異が生じるものがある。これら「年収の節目」は1円でもオーバーすれば適用外になることも多いため、知らないでいると損をする。そこで今回は、主要な「年収の節目」をまとめてみた。

所得税が発生するか(103万円)

所得制限,高校授業料無償化,配偶者控除
(写真=PIXTA)

パートやアルバイトなどで所得税が発生するか否かの基準となるのが「103万円の壁」である。給与所得者の場合、給与所得控除額が65万円、基礎控除額が38万円あるので合せて103万円までは所得税が掛からない。したがって、税金を払いたくないという場合、年収を103万円までに押さえるとよい。

なお、現行の配偶者控除を受けるための要件である「控除対象配偶者」になるためには、給与収入が103万円以下であることが必要なので、その基準でもある。

社会保険が発生するか(106万円、130万円)

パートやアルバイトなどで、年収が130万円以上の場合には扶養から外れ、自分自身で社会保険等に加入しなければならなくなる。これが「130万円の壁」だ。社会保険(厚生年金、健康保険)に加入できる要件は、正社員の3/4以上の勤務時間、勤務日数を働いている人なので、その要件を満たさない場合には「国民年金」と「国民健康保険」に加入しなくてはならない。いずれにせよ負担が増えるわけである。

また、2016年10月からは、(1)従業員が501人以上である「特定適用事業所」働いている、(2)週の所定労働時間が20時間以上で、(3)年収106万円以上の、(4)雇用期間が「1年」以上見込まれる、⑤「学生」でない短時間労働者についても社会保険に加入することができるようになった。さらに、2017年4月からは、従業員が500人以下でも労使で合意すれば社会保険に加入できるようになった。これが「106万円の壁」と言われるものだ。

控除配偶者となるか(150万円、201万円)

現行の38万円の「配偶者控除」の控除対象配偶者になるための収入基準は「103万円」であるが、平成30年1月1日からは、収入基準が「150万円」に引き上げられる。これが「150万円の壁」だ。なお、150万円を超えた場合には、201万円まで「配偶者特別控除」として逓減的に控除が受けられる。これが「201万円の壁」だ。厳密には、201万円6000円を超えた場合には、配偶者控除は一切受けられないことになる。

高校の授業料無償化(910万円)

高校の授業料無償化とは、授業料に充てるための「就学支援金」を支給するものである。国公私立問わず、高等学校等に通う一定の収入額未満の世帯が対象だ。一定の収入額とは、市町村民税所得割額が「30万4200円」未満をいう。市町村民税所得割額は、年収をベースに計算されるものだが「30万4200円」と言われてもわからないので、モデル世帯(両親のうちどちらか一方が働き、高校生一人(16歳以上)、中学生一人の子供がいる世帯)の年収額が例示されている。その金額が「910万円」だ。これが「910万円の壁」だ。

配偶者控除の対象となるか(1120万円、1220万円)

これまでは、配偶者控除を受ける者の年収に制限はなかった。つまり、どんなにお金持ちでも配偶者の収入が少なければ、配偶者控除として38万円の控除が受けられた。しかし、国が財政難であるところ、高額所得者にまで配偶者控除を認める必要はないのではないかとの意見があり、平成30年から配偶者控除を受ける者の所得制限が設けられることになった。

所得区分は、(1)900万円以下(年収1120万円以下)、(2)900万円超950万円以下(年収1120万円超、1170万円以下)、(3)950万円超1000万円以下(年収1170万円超、1220万円以下)、(4)1000万円超(年収1220万円超)、の4つである。所得だとわかりにくいので、以下では年収ベースで「配偶者控除」または「配偶者特別控除」がいくらもらえるのか見ていこう。

(1)年収1120万円以下の場合
配偶者の所得が150万円以下である場合、配偶者控除の額は「38万円」になる。配偶者の所得が150万円超201万6000円未満の場合、配偶者特別控除の額は、配偶者の所得に応じて「36万から3万円」の8段階に分けられている。

(2)年収1120万円超1170万円以下の場合
配偶者の所得が150万円以下である場合、配偶者控除の額は「26万円」になる。配偶者の所得が150万円超201万6000円未満の場合、配偶者特別控除の額は、配偶者の所得に応じて「24万から2万円」の8段階に分けられている。

(3)年収1170万円超1220万円以下の場合
配偶者の所得が150万円以下である場合、配偶者控除の額は「13万円」になる。配偶者の所得が150万円超201万6000円未満の場合、配偶者特別控除の額は、配偶者の所得に応じて「12万から1万円」の8段階に分けられている。

(4)年収1220万円超の場合
配偶者の所得にかかわらず、配偶者控除および配偶者特別控除の額は0円となる。

このように、年収にはいろいろな節目があるが、特に社会保険が発生するかの基準である「130万」と高校無償化の基準である「910万円」は、基準に達するかどうかで数十万円も変わってくるので注意が必要だ。

なお、これまで話してきた内容は、夫婦ともに会社に勤務していることが前提になっている。自営業の場合には、給与所得控除等はなく、社会保険の扶養とういうのもないので、その点は注意して欲しい。(ZUU online 編集部)