iDeCo(個人型確定拠出年金)は、さまざまな税制優遇措置があるのが大きな魅力だ。しかし、掛金の所得控除や運用収益の非課税措置はマネー雑誌等で良く取り上げられるものの、給付時の税制について語られることは少ない。今回は、iDeCoの年金資産の受け取り方と、税制優遇を受けるためには欠かせない確定申告のポイントについて紹介したい。

(写真=Mangostar/Shutterstock.com)
(写真=Mangostar/Shutterstock.com)

iDeCoと確定申告

iDeCoで積み立てた資産を受け取る方法は2パターンある。退職金のように一括で受け取る方法と、年金のように分割して受け取る方法である。一括(一時金)として受け取る場合は「退職所得控除」の対象となるほか、分割(年金)で受け取る場合は「公的年金等控除」の対象となるので、どちらの受け取り方を選んでも、何らかの税制優遇を受けられることになる。それでは、それぞれの受取方法でどのように確定申告をすればよいのだろうか。

一括(一時金)で受け取る場合の確定申告

一括(一時金)受け取りの場合は、受取時に「退職所得の受給に関する申告書(退職所得申告書)」を金融機関(記録関連運営管理機関)に提出する必要がある。この申告書を提出すれば、受取額から税金が源泉徴収されるため、確定申告は原則として必要ない。

しかし、当該申告書を提出しない場合は、受取額が退職所得控除額に満たない場合であっても、受取額の一律20%相当額が源泉徴収される。源泉徴収額が本来負担すべき税額よりも過大な場合は、確定申告を行うことにより精算する必要がある。

退職所得申告書は、国税庁のホームページからダウンロードできる。提出の際、その年中に他の退職手当等の支給を受けている場合は、その退職手当に係る「退職所得の源泉徴収票」も1部必要となるので注意したい。

退職所得申告書を記載するうえで重要なのが「勤続期間」だ。勤続期間とは、原則として該当企業(仮にA社とする)で引き続き勤務した期間を指すが、一時的に他の企業に出向していたなどの理由でA社での勤務が中断した場合でも、中断前のA社での勤務期間を合算することができる。ただし、A社での勤務が中断した際に、退職金を受け取っていないことが条件だ。

また、iDeCoを一括(一時金)で受け取る際、過去14年以内に他の退職金を受け取っていると、退職所得控除額の計算方法に関する特例が適用されるケースがあるので注意したい。分からない部分があれば、自分だけで判断せず、まずは会社の総務課や人事部に相談してみよう。

分割(年金)で受け取る場合の確定申告

一方、分割(年金)受け取りの場合は、公的年金など他の年金収入があるかどうかによって、確定申告が必要かどうか変わる。

まず重要なのが「年齢」だ。国税庁の公的年金等に係る雑所得の速算表によると、iDeCoや公的年金からの年金給付には公的年金等控除が適用されるが、同控除は、年金を受け取る人の年齢が65歳未満と65歳以上とで計算の方法が変わる。仮に、同じ金額を受給していたとしても、64歳と65歳では税制上の計算結果が変わるわけだ。

なお、2011(平成23)年分以後の収入においては、年金収入が400万円以下であり、かつ年金以外の収入が20万円以下である場合には「公的年金等に係る確定申告不要制度」が適用されるため、確定申告の必要はない。

ただし、医療費控除など所得税の還付を受けるためには確定申告が必要であったり、そもそも住民税の申告が必要であったりする場合もある。自分の場合はどうなのか、不透明なときは最寄りの市町村へ問い合わせるのもひとつの手だ。

適切な確定申告を

iDeCoの受取時の確定申告は、受取方法によって変わる。長年苦労して増やしてきた資産だからこそ、受け取り方もしっかり考えておきたい。税制上は確定申告を行って納税完了となる。確定申告の問題を適切に処理して初めて、iDeCoの受け取りが完了したと言えるだろう。

なお、確定申告が必要か否か、どの受取方法がベストなのかは、人によってそれぞれ異なる。判断に迷った際は、専門家に相談するのも一つの方法だ。

(提供: 確定拠出年金スタートクラブ

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