昨今、働き方改革が強く意識されるようになっている。戦後の高度経済成長期から日本のビジネスシーンを支えてきた団塊世代が定年退職で職場を離れる一方、少子化で若者の人数は減っている。

中小企業を中心に、人手不足が顕在しつつある職場も増えており、働き方の見直しとともに、福利厚生を充実させることで、人材確保を目指す企業も増えてきた。

今回は、企業の存続に向けて経営者が検討すべき、健康促進系の福利厚生制度について紹介しよう。

福利厚生制度の歴史は曲がり角

(写真=Mohd KhairilX/Shutterstock.com)
(写真=Mohd KhairilX/Shutterstock.com)

日本企業は歴史的に、賃金を低く抑えることで長期的な雇用を実現してきた。その低い賃金の代替として、従業員を定着させるために導入・拡充されてきたのが福利厚生制度だ。社宅や住宅補助のような住まいに関わるものや、保養所などのレクリエーション関係、人間ドックや予防接種費用の補助などの健康促進系のものまで、幅広く提供してきた。

バブル崩壊以降、長引く景気低迷の中で企業の業績が悪化すると、福利厚生はさまざまな余剰コストとともに削減の対象になった。なかでも保養所などを、閉鎖・縮小した企業は多い。また、正社員から非正規雇用に雇用形態が変わる中で、福利厚生制度の恩恵を受けられない従業員も増えている。

生活スタイルの多様化から生まれた「カフェテリアプラン」

また、生活スタイルの多様化も、福利厚生制度の見直しを促す一つの要因となった。結婚しない人や子どもを持たない人が増えるなど、人生の選択肢が多様化すると、画一的な福利厚生制度では満足できない人も増えてくる。そこで、昨今増えているのが外注業者を活用した「カフェテリアプラン」の導入だ。

カフェテリアプランは1980年代にアメリカで始まった制度で、企業は社員に福利厚生制度に使える所定のポイントを付与し、社員はカフェテリアで好きな食べ物を選ぶように、数ある選択肢の中から好みに合ったものを選択する。旅行の補助や託児所サービス、資格取得補助、人間ドック費用など、幅広い選択肢から選べる一方で、企業にとっては福利厚生制度の提供を外注化できるので、コスト削減につながる。

カフェテリアプランによる福利厚生制度の中で、最近人気を集めているのが「ライフサポート」と呼ばれる健康促進系の内容だ。人間ドックや予防接種費用の補助、スポーツジムの法人会員費用での利用補助などがある。

健康志向が高まる中で、こうしたライフサポート制度へのニーズは高い。また、昨今メンタルヘルスの不調を理由に休職する、職場を去る人が増える中で、心理カウンセラーによる相談サービスの利用も増えている。

福利厚生の拡充に補助金を活用すべき

福利厚生制度の重要性はわかったが、実際の導入は経営上難しいという企業は、政府や自治体の補助金を積極的に活用したい。

健康促進系の福利厚生を導入するなら、厚生労働省による「職場定着支援助成金」がある。これは、人材の定着・確保と魅力ある職場づくりのために雇用管理の改善に取り組んでいる事業者を助成する制度で、人間ドックや生活習慣病検診など、法定の健康診断以外の健康づくりにつながる新たな制度の導入を対象に、10万円が支給される。

助成金は年度単位で支給され、内容も見直しがかけられることもある。予算枠も限られているので、申請を目指す場合は年度当初に国や自治体のホームページなどを確認し、応募要項などを確認しておきたい。

福利厚生制度は社風のバロメーター

企業がどのような福利厚生制度を用意しているかは、その企業が社員をどれだけ大切に扱っているかのバロメーターでもある。福利厚生の充実は、経営方針や社風を的確に示し、企業ブランドの価値向上にも寄与するのだ。

社員のモチベーションを上げ、職場への定着を図るためにも福利厚生制度の見直しをするとよいだろう。

(提供: 百計オンライン

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