日本において公的な住宅手当というと、離職者などに対する住宅確保給付金や生活保護制度における住宅扶助などがあげられます。一方で、先進諸国においては住宅手当制度があり、低所得者層に対する公的家賃補助が行われている国や、賃貸のみでなく持ち家に対する補助がある国もあり、制度内容もさまざまです。

今回は、日本と他国における公的住宅手当について解説していきます。

世界の公的住宅手当制度の概要と比較

(写真=Africa Studio/Shutterstock.com)
(写真=Africa Studio/Shutterstock.com)

生活費の中でも大きなウエイトを占める住宅費ですが、多くの先進諸国では住宅手当制度により公的な補助が行われています。住宅手当というと住む人に対しての手当という印象が強いですが、先進国ではそもそも住宅問題への取り組みは社会住宅の建設に対する補助から始まりました。その後、貧困層に対する影響を緩和するために住宅手当が導入されました。

当初は公的住宅の直接供給や建設補助を行うことで低価格な住宅供給に注力していたものの、住宅不足が解消されるに伴い、低家賃の住宅を提供するよりも所得を補う形の金銭的な給付へと変化していったといえます。

住宅手当の基本要件は以下の三点です。

消費者に対して支払われること
住居費に関連して支払われること
所得に応じて支払われること

住宅手当は住宅政策上(最低基準に満たす住宅に居住できるようにする)の目的でもあり、社会保障上(低所得世帯の所得に対する住居費の割合を負担可能なレベルまで下げられるようにする)の目的でもあるといえます。

日本においては住宅政策上の目的での意味合いが強いといえますが、先進諸国においては双方の目的を受給者本人が選択できる、すなわち給付される金銭の使い方が選択できるという違いがあるといえます。

日本の公的住宅手当三つ

日本における公的住宅手当としては、広義でいえば主に三つ(住宅確保給付金・住宅扶助・公的賃貸住宅)があげられます。

住宅確保給付金
離職によって住まいを失った方などが安心して就職活動を行えるように家賃としての費用を支給するものです。就労のための活動を促進させ、生活保護に陥る前の第二のセーフティネットとしての意味合いが強いといえるでしょう。

住宅扶助
生活保護法第14条「住宅扶助は、困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者に対して、左に掲げる事項の範囲内において行われる。」と定められており、家賃・間代・地代等や補修費等住宅維持費として現金給付されます。基本的に基準額が設定されていますが、必要な場合に特別基準額を基に認定される場合もあります。

公的賃貸住宅
公的機関が公的資金を元に建設・購入し管理運営を行っている賃貸住宅のことで、一般的な家賃よりも安価で物件を借りることができますが、入居要件はさまざまです。公的賃貸住宅にはいくつか種類があり、主なものとして公営住宅・高齢者向け優良賃貸住宅・改良住宅・都市再生機構賃貸住宅・地方住宅供給公社賃貸住宅・特定優良賃貸住宅があります。

公的住宅手当制度(住宅確保給付金)の導入背景、目的

先にあげた住宅確保給付金は2015年4月に施工された生活困窮者自立支援法で定められていますが、そもそもは2009年10月より行われている住宅支援給付事業(住宅支援給付金)の制度化を図るものであり、当初は住宅手当緊急特別措置事業における「住宅手当」という名称でスタートしました。

住宅手当が創設された要因としては、2009年のリーマンショックによって離職・失業者が多数発生し、住宅を失う人が増大したことがあげられます。その後も離職者が安定した居住を持つことで就労自立を促すことを目的に、制度化の動きへとつながりました。

支給要件は以下の三点で、再就職に向けて原則3ヵ月支給されることになります。

申請月の世帯収入合計額が基準額(市町村民税均等割が非課税となる収入額の1/12)+家賃額(住宅扶助特別基準額が上限)以下であること
申請時の世帯の預貯金合計額が、基準額×6(ただし100万円を超えない額)以下であること
ハローワークでの月二回以上の職業相談、自治体での月4回以上の面接支援等の活動が必要

公的住宅手当について把握しておくべき

日本において公的な家賃補助は他国に比べて活発とはいえないものの、生活に困窮している人や離職者などに対して住宅費に対して補助が行われています。高齢者向けや中堅所得者向けなどにも、家賃補助ではないものの一般的な家賃よりも安く住める公的賃貸住宅があります。

制度内容が今後変化していく可能性も視野に入れながら、公的住宅手当についてしっかりと把握しておくといいでしょう。

(提供: フクリ!

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