タスクを3つに分け、「分解」しよう
同じ量の仕事をこなすにも、段取り次第でスピードは大きく変わる。そこで、個人の仕事の時短においてまず必要となるのが、スケジュールやタスク管理のスキルだ。段取りや仕事術の著書を多数執筆し、複数企業の代表やコンサルタントとして活躍する吉山勇樹氏にアドバイスをいただいた。《取材・構成=塚田有香》
真っ先に削減すべきは「連鎖するムダ」
スケジュールやタスク管理において、ムダな仕事を省くのは必須です。ただ、その前にやるべきことがあります。それは「ムダの定義」です。
同じ立ち話でも、ある人は「人間関係を円滑にするコミュニケーション」と定義し、ある人は「ムダ話」と定義する。この認識がズレていたら、組織内のムダはなくなりません。まずは自分のチームだけでもいいので、「ムダの定義」を明確にしましょう。立ち話でも「15分以上は『ムダ』」と決めれば、客観的な目安ができて、全員がそれを削減しようと意識します。
ムダを定義したうえで、優先的に排除すべきは、「複数に連鎖するムダ」です。たとえば、ムダな会議を開くと、その準備として行なう資料作成や根回しもムダになるし、会議後に行なう議事録作成や関係者との調整もムダになります。このようにムダがムダを呼んで連鎖するタスクは、組織への影響も大きいため、真っ先に削るべきなのです。
「やりたいこと」の間に「やりたくないこと」を挟む
次に、そうしてムダなタスクを極力排除したうえで、優先順位をつけることが必要となります。ここで、「重要度」と「緊急度」で判断する人は多いと思いますが、私は、「やりたいこと」と「やらねばならないこと」のマトリクスで考えるよう勧めています。
「やりたいことであり、やらねばならないこと」なら、誰もが積極的にやります。問題は「やりたいことではないが、やらねばならないこと」。どうしてもモチベーションが上がらず、片づけるのに時間がかかってしまう。しかし現実には、仕事を選り好みするわけにもいきません。
これを解決する方法は二つあります。一つは、「やらねばならないこと」の合間に、「やりたいこと」を挟んでスケジューリングすること。「これが終わればやりたいことができる」と思えば、今取り組んでいるのがやりたくないことでも、集中とスピードを維持できます。
もう一つは、「やらねばならないこと」の中から、「やりたいこと」に寄せられそうなタスクを見つけること。「この仕事は苦手だが、将来のキャリアには役立ちそうだ」などと、自分にとってプラスになるものが見つかれば、「やりたいこと」の領域へ移行できます。
外出の予定は1日にまとめてしまおう
スケジューリングのムダを省き、効率的に時間を使うには、タスクを3種類に分けて管理することをお勧めします。
一つめは、事務作業など自分だけで進められる「処理業務」。二つめは、企画書の作成や営業計画の策定など、じっくり考えて答えを出す「考察業務」。三つめは、会議や商談、移動時間などの「拘束業務」です。
拘束業務はクライアントや他部署が関わるタスクなので、自分一人ではコントロールできません。一方、処理業務と考察業務は自分でコントロールが可能です。よって時間管理をする上で重要なのは、拘束業務をブレイクダウンし、処理業務や考察業務に分解することです。
たとえば「商談」のアポイントが入ったら、それを分解してみます。すると、「プレゼン資料作り」などの考察業務や、「前日のリマインドメール」などの処理業務が含まれているとわかります。さらに「資料作り」を分解すると、「表紙と目次を作る」「図表を用意」などの細かいタスクに分けられます。
ここまで分解した上で、拘束業務の合間に処理業務や考察業務をスケジューリングすれば、時間をムダなく活用できます。一つの業務を小さく分ければ、「表紙と目次だけなら、15分でできる」などと所要時間を想定しやすくなり、スキマ時間で片づけられます。また、小さくて簡単なタスクなら、複数を同時に進めることも可能です。コントロール不可能な拘束業務も、処理業務や考察業務にブレイクダウンすれば、タイムマネジメントがしやすくなるのです。
なお、対外的なアポイントはなるべく同じ日にまとめて、「内勤日」と「外勤日」を明確に分けてメリハリをつけると効率的です。1日の中でタスクの性格がコロコロ変わるより、「今日は人と会う日」「今日はオフィスで事務処理の日」と決めて、ひたすらそれだけをこなすほうが目の前の仕事に集中できます。
「考える時間」はバッファとしても役立つ
また、考察業務の時間をあらかじめ確保しておくと、緊急時の代替としても役立ちます。私は一週間のうち数時間は、中長期の戦略を練ったり、計画を立てたりする時間を作っています。仕事が予定通りに進めばそのまま考察に使えるし、クライアントから急な依頼が飛び込んできた場合などは、考察の時間で代替えすれば対応できます。
あるいは、インプットの時間や、デスク周りを整理する時間など、いざという時のバッファになる時間をあらかじめスケジュールに入れておくのも有効です。予定を立てたのに、急なタスクが飛び込んできて残業に……という事態を回避するには、その時間をあらかじめ織り込んでおけばいいのです。
また、スケジュールをチームや会社で共有しているケースは多いと思いますが、ぜひ家族でも共有することをお勧めします。「木曜は息子が十九時まで塾だから、今日は自分が迎えに行けるな」などと瞬時に判断できて、退社後の時間も家族のために有効に使えます。また、「次の週末は家族で旅行する」などとプライベートでも「拘束業務」を入れてしまえば、残りの時間で仕事を片づけようという意識が高まるはずです。
吉山勇樹(よしやま・ゆうき)ハイブリッドコンサルティング代表取締役
大学時代にベンチャー企業の創業・運営に参画。その後、教育人材コンサルティング会社の代表取締役を経て、ハイブリッドコンサルティングを設立。管理職から経営層まで幅広い人材育成・行動変革プログラムを手掛ける。著書に、『残業ゼロ!チームの成果を3倍UPする 課長のダンドリ・リーダー術』(明日香出版社)などがある。(『
The 21 online
』2017年8月号より)
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