ジョン・コッターは、ハーバード大学ビジネススクールの名誉教授で、リーダーシップ論の世界的な権威です。著書に『企業変革力』『リーダーシップ論』などがあります。また、日本企業への見識も深く、松下幸之助の研究でも知られています。

今回は、ジョン・コッターが提唱した組織変革の「8段階のプロセス」について見ていきましょう。

(写真=Thinglass/Shutterstock.com)
(写真=Thinglass/Shutterstock.com)

8段階のプロセス

ジョン・コッターは、著書『企業変革力』の中で、企業が変革を推進していくために進んでいくべき「8段階のプロセス」を示しています。

企業を取り巻く環境が急激に変化している現代では、企業にとっては大規模な変革を成功させることが成長の重要なカギであると言われています。ところが、変革にチャレンジした企業の多くが変革による成果を享受できず、逆に企業にとってマイナスの状態を招いてしまうケースも少なくありません。

ジョン・コッターは、企業が変革に失敗した原因を分析して、その解決策として企業が変革を推進していくために進んでいくべき「8段階のプロセス」を整理しました。

・ 第1段階「企業内に十分な危機意識を生みだす」

変革のためにはまず現状を分析して問題点を見つけ出す必要があります。第1段階では、市場と競合の調査分析によって、企業の強み弱み、発展の機会と衰退の危機を洗い出して認識することで、企業内に十分な危機意識を生みだします。

・ 第2段階「変革を推進する連帯チームを形成する」

企業内に十分な危機意識が生まれた段階で、次に強力な変革推進チームを作ります。チームメンバーには優秀で力のある人物を集めます。チームは変革推進を目的に連帯していきます。

・ 第3段階「ビジョンと戦略を立てる」

優秀で力のあるメンバーで形成された変革推進チームができたら、チームで変革のビジョンと戦略を立てます。

・ 第4段階「変革のためのビジョンを周知徹底する」

変革のためのビジョンと戦略が決まったら、企業内に周知徹底していきます。従業員の心に響くようにチャネルを駆使して継続的に伝えます。変革推進チームのメンバーは率先してビジョン実現に向けた行動を行います。

・ 第5段階「変革に必要とされる広範な行動を喚起するために人材をエンパワーする」

変革のためのビジョンを周知徹底することで、従業員全員がビジョン達成に向けて行動していけるように、阻害要因の排除や制度や組織の変更を行います。

・ 第6段階「変革の勢いを維持するために短期的成果を挙げる」

変革の成果が目に見えて分かるように短期的な計画を設定して、成果を挙げていきます。成果を挙げた従業員には明確に報酬を与えます。成果が出ることで、変革の勢いが維持されていきます。

・ 第7段階「短期的成果を生かして、さらに数々の変革プロジェクトを成功させる」

短期的な成果によって勢いを維持し、さらにビジョンに合った変革プロジェクトを成功させます。

・ 第8段階「新しく形成された方法を企業文化に定着させ、より一層たしかなものにする」

変革ビジョンの達成によって実現された新しい方法と企業の発展を明確化して、企業文化として定着させます。また、新しいリーダーシップの育成を行い、変革をさらにたしかなものにしていきます。

変革を成功させるために

ジョン・コッターは、これらの8段階のプロセスを提唱した著書『企業変革力』の中で、変革を成功させるためには強いリーダーシップが必要だと主張しています。企業の現状を継続的に改善するには、マネジメントが必要ですが、急激に変化している現代ではよりスピード感のある変革が企業の発展には欠かせません。企業経営者は、強いリーダーシップをもって変革を推進する必要があります。

企業が変革を推進していくために進んでいくべき「8段階のプロセス」は、現代の企業経営者が変革を成功させるためのフレームワークとして活用できると言えるでしょう。

(提供= 識学マネジメントオンライン